「パセリちゃんツアー」に行こう!
まさか防衛庁のサイト(しかもトップページの上のほうだ)で「ちゃん」づけのものに出会うとは思わなかった。しかも「ツアー」で「参加者募集」ときてる。
いったい何だ?と思ってリンク先を見ると、要は、女性のための自衛隊隊内生活体験ツアーだった。しかも対象は20歳代女性限定。「自衛隊での生活、隊員との交流などを通じて、ありのままの自衛隊を実感してみませんか」だそうだ。概要はこちら。
対象: 日本国籍を有する20歳代の女性(OL、学生等)×約30名
※ 平成16年4月1日現在で20歳代の女性
期間:平成17年8月4日(木)~5日(金)〔1泊2日〕
場所:海上自衛隊武山地区、横須賀地区(神奈川県横須賀市)
体験の概要:
・訓練体験(基本教練など【短艇漕法、手旗、結索など】)
・装備品などの見学
・基地施設見学
・自衛隊施設での宿泊、体験喫食
・隊員との懇談 など
※ 状況により、一部変更する場合があります。
費用:食事代、光熱費及び諸雑費を実費徴収(8,000円程度)
1泊2日とは気合が入っているではないか。しかも平日だ。学生は夏休みだろうが、OLは会社を休んで参加せい、ということか。20歳代、とあるが、「平成16年4月1日現在」でということなので、「平成16年4月2日に30歳の誕生日を迎え平成17年8月時点では31歳」の方も大丈夫なはずだ、たぶん。
こういうものに参加する人がいるんだろうか、と思ったら、昨年も同様のツアーをやっていたらしい。参加した女性マンガ家がマンガで書いた体験記がサイトに出ている(これとこれ。PDFファイル)。ちなみにこのマンガ家、金島佳代さんというのだが、財団法人防衛弘済会発行の雑誌「SECURITARIAN」にマンガ「HOP☆スコップ☆ガール!」を連載している。そのスジの方々には大人気!のマンガ家らしい。
で、そのマンガ体験記をみる。昨年のツアーは航空自衛隊入間基地だった。制服を交付され、まず基本教練を受ける。気をつけ!とか右向け右!とかそういうやつだ。指導にあたる女性の班長さんがかっこいい、とある。野外炊飯訓練では自分たちでカレーを作る。「野戦釜」というばかでかい釜をまぜまぜとやるわけだ。飛行場清掃(障害物が落ちていないか点検する)とか犬舎見学とかもある。消防小隊訓練では消防服を着て放水なんかもやるらしい。しかしやはり面白そうなのは乗り物系だ。CH-47輸送ヘリに体験搭乗したり、T-4練習機の操縦席で記念撮影したり。Gスーツなんかも着られるらしい。CH-47のパイロットは女性だったそうだ。T-4練習機といえばあのブルーインパルスも使用する純国産機だ。確か1機26億ぐらいしたと思う。
なかなか盛りだくさんではないか。
今年は海上自衛隊の横須賀基地だ。上記の予定をみる限り、昨年にはやや負けそう。手旗もいいのだが、「ローレライ」が興行収入20億円突破とヒットした昨今でもあるから、やはりここは潜水艦見学を入れていただきたいところだ。潜水艦で宿泊、なんてかなり面白いと思うのだが。料理はやはりカレーだろうか。なんといっても日本のカレー発祥の地だし。
しかしそもそも、防衛庁はこのツアーでいったい何を狙っているのだろうか。広報、というのがまっさきに思いつく。自衛隊に対する支持率みたいなものを世論調査で調べたら、おそらく若い女性層はあまり高い数字にはならないだろう。若い女性に自衛隊の活動をよりよく理解してもらうために、体験ツアーを実施しよう!という考え方はなくもない。しかしそれなら20歳代に限る必要はない。では女性自衛官を増やすため?確かに女性自衛官が現場できびきびと働いている姿は、就職先を考えている人には魅力的に映るだろう。しかしそれなら、対象を中学生や高校生に限ったほうが効率がいいではないか。
なぜ女性、なぜ20歳代なのか。
…思いつく答えは1つしかない。いわゆるアレだ。若い男性(確か現場の人たちは27歳ぐらいが定年だったかと)がほとんどを占めるはずの自衛官の多くは、職業柄出会いの機会が少ないし、仮に出会ったとしても、仕事の内容について理解が得られにくい。これでは自衛隊員がなかなか結婚できないではないか。ならば20歳代の女性に自衛隊の仕事を理解してもらおうではないか。ひょっとして海上自衛隊の潜水艦にも妻夫木クンのような隊員がいるのではと期待してくる女性がいるかもしれない。ある意味、防衛庁側にとってイベントの「目玉」はむしろ「隊員との懇談」だ。
…てなことを幹部の方々が考えたのだろうか。真相は知る由もないが、防衛庁の思惑(勝手に想像しているだけだが)が首尾よく運ぶかどうかはともかく、なかなか面白い経験にはなると思う。別に自衛隊員との「出会い」を求めていなくても、8,000円でこれだけいろいろできるのであれば、2日間のすごし方として悪くないではないか。自分が20歳代の女性でないことがくやしいが、もしあてはまる方がいたら、この夏は「パセリちゃんツアー」に行こう!と呼びかけたい。
応募期間は6月20日(月)(必着)まで。 募集要項はこちらをご参照。
ちなみに、上記では「ツアーに参加する20歳代の女性」を意味しているが、そもそも「パセリちゃん」は魚関係のイラストを主に手掛ける友永たろさんの作品で、相方の「ピクルス王子」とともに防衛庁のマスコットに採用されたキャラクターだ。防衛庁のサイトにイラストが公開されているので、掲載してみる。
これが「パセリちゃん」だ!
このイラストの画像著作権・版権は「(c)友永たろ」さんにあり、一般人がインターネットで公開されたサイトに掲載していいのは、防衛庁・自衛隊及び防衛庁関係機関サイトへのリンク先シンボルとして利用する場合のみ、とのこと。というわけで、防衛庁サイトへのリンクを張っておく。
ちなみに、このページにはほかのイラストもある。ピクルス王子の勇姿(!?)も拝める。利用したい方は注意書きをよく読んでご利用いただきたい。
設定によれば、ピクルス王子はパプリカ王国の王子、パセリちゃんはブロッコリ国の村長の娘となっているらしい。親しみやすい風貌のお2人だがいずれもやんごとなき身分の方、というわけだ。結婚を前提にお付き合いをしているとのこと。あくまで健全な関係なのは身分ゆえか。防衛庁のマスコットキャラクターにふさわしいというべきだろう。
…ちょっと待て。人事院規則および内閣法制局見解で、国家公務員には日本国籍が必要なのではなかったか。「パプリカ王国」と「ブロッコリ国」は例外なのだろうか。それとも彼らは公務員としてではなく別の身分で自衛隊の任務に服しているのだろうか。しかも2人して。何かの密命を帯びているのかもしれない。パプリカ王国とブロッコリ国を巻き込む国際的陰謀!迫る危機!!わが日本の自衛隊はいかにして立ち向かうのか!?そして2人の運命は!!!
…またしても妄想モードに入ってしまった。ともあれ「パセリちゃん」、国民に親しみをもってもらおうという防衛庁の努力のあらわれではある。ピクルス王子ともどもがんばっていただきたい。
※いうまでもないが、上記の記載は、憲法改正問題やら自衛隊の集団的自衛権の行使の可否やらについてなんらかの意見を表明するものではない。そっち方面のつっこみは的外れなのであらかじめおことわりしておく。
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