財務省サイトのゲームが笑える
財務省のサイトに、小学生向けのコーナーがある。「ゴーゴー!ふぁいなんす☆タウン」という。ゲームを中心としたアミューズメントコンテンツで、税の大切さを教えようというものだ。
一度のぞいてみてほしい。けっこう笑えるのだ、これが。
「ふぁいなんす」というのはいうまでもないが「finance」のことで、財務省、つまりMinistry of Financeからきている。このコーナーは、ふぁいなんす☆タウンという架空の町を舞台にしたゲームを提供しているのだ。
この種のコンテンツというのは、ゲーム研究の分野では「シリアスゲーム」というのだが、まあ、お堅いサイトにはよくある。控えめな「☆」がいい。いっしょうけんめい子どもに受けようと努力しているさまが伝わってくるではないか。この「☆」をつけるかどうかについて、きっと東大法学部卒の官僚たちが侃々諤々の議論をしたにちがいない、などと妄想モードに陥る。
「…この『☆』はいったい何だ?」
「はい課長。これは小学生の児童をひきつけるために楽しい雰囲気をかもし出すものです」
「しかしこれで楽しくなるのか?だいたいこれでは読めないじゃないか」
「いやこれは読まないんです。『ふぁいなんす』と『タウン』の区切りと思っていただければ」
「甘いぞ。万が一読まれた場合に誤解を招かないかどうか確認しなさい。たとえば『ふぁいなんすほしたうん』と読まれた場合『ファイナンス欲し』と誤解されて国債の消化状況への懸念と受け取られかねないか?」
「・・・それはないと思いますが」
「それより、常用漢字でない文字を使った前例はあるのか?」
「はい。昭和56年の小学生向けパンフレットに使用例があります」
「本当に大丈夫か。確かあのときは国語審議会からクレームがついたはずだ」
「内諾は得ています。前回は『★』(黒星)で負けを連想させるとのクレームでしたが、今回は「☆」(白星)なので問題ないそうです」
「念のため、内閣法制局に確認しろ。それから財政審議会委員への根回しも忘れるな」
…ありえないか。
さて。
このサイトで笑えるのは、「税を納めることの大切さ」を子どもにわからせるために、ゲームを用いていることだ。まずはキャラクター紹介のところ。数人のキャラクターが出ている。まあよくある設定だが、次の3人がちょっとすごい。
ラオくん
仕事: 税務署で税金を集める仕事
好きなこと: まじめに働くこと、ボランティア活動
きらいなこと:弱いものイジメ
ネズミのキャラクターだ。税務署の職員、だろうか。まじめに働くのが好きとは見上げた性格ではないか。まさに税務署に「ふさわしい」職員像だ。
どらニャーゴ
仕事: ?
好きなこと: なまけること
きらいなこと:税金を納めること、まじめに働くこと
ネコだが名前も顔つきも悪者キャラだ。仕事は「?」とあるが、黒装束にマントといえば、アレしかないよねアレ。で、きらいなことが「税金を納めること」というのはかなりマニアックな答えではないか。
ノボル
仕事: ファイナンス★小学校6年生
趣味: 予算についての勉強、盆踊り
好きなことば:伝統、納税
将来の夢: 総理大臣
きわめつけがこのノボルだ。これは人間。趣味の「予算についての勉強」ってお前なあ。なんつう渋い趣味だ。好きなことばは「伝統」と「納税」。座右の銘、なのだろうか。きっと親譲りにちかいない。ノボル家に行くと、床の間の掛け軸に「納税」と書いてあるにちがいないのだ。で、将来の夢が総理大臣。「好きなことばは?」と聞かれて「納税」と答える人に総理大臣になって欲しいか?私は欲しくないぞ。全然関係ないがここでは「★」だ。いったいどっちなんだはっきりせい!それともまさか「★」は「☆」の活用形だとか?
で、本題のゲームだ。「ふぁいなんす☆ドッジボール」では、税金の名前のついたボールを逃げ回るどらニャーゴに向かって投げる(実際にはどらニャーゴをマウスでクリックする)。税金はたくさんあるが、一定時間内にそれらを全部当てたら勝ち。誰がどうみたって脱税者を追い詰める「マルサ」ゲームではないか。残念なのは、ボールが当るとその税金の解説が出てくるにもかかわらず(それを読んでもらうことがゲームの目的のはずだ)、ゲームは続いているので解説など読んでいるひまがないということだ。
「ふぁいなんす☆フィッシング」では、税務署員ラオが池の魚を釣り上げるのだが、それぞれの魚には税金の名前が書いてある。つまり、税務署員がいかに国民からたくさん税金を集めるかという徴税ゲームになっているのだ。てことは何か?この魚たちは国民つうことか?
「ふぁいなんす☆サーカス」では、税務署員ラオともう1人が空中ブランコ上でボールの受け渡しをする。で、そのボールに「予算」「国税」などと書いてあるわけだ。受け渡しはマウスのクリックでするのだが、タイミングをまちがえるとボールが落ちてしまう。税務署員ラオの手から「予算」がすべり落ちるさまは、なんだか日本の財政破綻を象徴しているようでこわい。あまりにこわいではないか。失敗すると「ざ~んねん!」というかけ声がかかるのだが、いや「ざ~んねん!」じゃすまんよ君ィ!!
さらに、「ふぁいなんす???クイズ」では、税金を払ってくれないどらニャーゴに税務署員ラオが困り果てているのを仲間たちが助ける。税金を払うよう説得するため、税金クイズで対決するのだ。ラオの悩みは全税務署員、というか日本全体の悩みだ。税金を払うのがきらいなはずのどらニャーゴだが、税金には詳しいらしい。これまたなんとも示唆にあふれた設定。
というわけで、なんとも奥深いのだこの「ふぁいなんす☆タウン」。いちいちいろいろ連想させてくれるのあたり、さすが日本で一番頭のいい方々のいるところではないか。皆さまもぜひ。
※追記
あとで読み返したら文章がなんだか酔っ払っているようだ。実際には眠気で半分意識が飛んでいたのだが、どうも眠いときと酔っ払ったときは似た考え方になるらしい、という新しい発見をした。それからこの「ふぁいなんす☆タウン」、開くと声がするのであらかじめご注意されたい。
The comments to this entry are closed.
Comments