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April 25, 2005

タイムシフト時代を生き抜く「サザエさん」

テレビ番組を録画し、CMをスキップして見ることができる技術の発達によって、テレビというものの広告媒体としての価値が下がっていくのではないかという懸念がよく語られる。この動きに対して、広告を出す側が対処する方法としては、たとえばプロダクトプレースメントのようなやり方がある。

業界の方には当たり前なのだろうが、その逆もあるのだなということをあらためて認識したのでメモのため書いておく。

そのことを改めて認識させたのは、アニメ「サザエさん」だった。「サザエさん」といえば、内容面でも偉大なるワンパターンだし、制作手法でも今や日本で唯一デジタル化されていないテレビアニメであるというわけで、半ば「伝統芸能」化したかのような印象があるが、一方で番組主題歌のバック映像で日本各地の風物を登場させ、それをビジネスにつなげるという「先進的」な手法をとっていることでも知られている。岐阜県が協力金として700万円払ったという記事をどこかで見た記憶があるが、あの映像は年4回ぐらい変わったろうか。つまり1クール分ということだ。今は愛知万博やら明治村やら、中部特集をやっている。

オープニングの話はいってみればプロダクトプレースメントの一種だ。番組と広告の関係として一般化すれば、プロダクトプレースメントは「番組を広告にする手法」といえる。番組を見ることがすなわち広告を見ることになる。しかも番組の中で、広告対象商品はいいイメージで扱われ、購買意欲をそそられるわけだ。「サザエさん」の例では、オープニング映像でサザエさんが例のサザエ気球に乗って愛知万博の会場の上空を飛べば、ああ愛知万博に行ってみようか、と思う人も出てくるかも、ということになる。

ここまでは前置き。私が「ああ」と再認識した「逆」とは、「広告を番組に近づける手法」のことだ。

「サザエさん」のスポンサーといえばまず東芝が思い出されるが、今は東芝だけでなく、JA、コカコーラなど複数のスポンサーが提供している。このうちJAバンクとコカコーラのCMでは、サザエさん一家を登場させている。波平とマスオが住宅ローンについて話し合ったり(「独立」するのか!?)、サザエ(だっけ?)がコーラを飲んだりするわけだ。アニメそのものの世界観とは微妙にずれているが、決定的にちがっているわけでもなく、むしろ地続きといっていい。

そもそもこういうやり方は、考えてみればキャラクターマーケティングの基本ではないか。子ども向けのアニメ番組で玩具メーカーがスポンサーとなれば、当然ながらそれらのキャラクターグッズがCMに登場する。これらはまさに番組の世界観とほぼ一体だ。夢中で番組を見る子どもたちは、CM中に席を立ったりしない。CMはむしろ見ていたい番組の一部なのだ。

だからすでに当たり前といわれればまさにその通りなのだが、私としては、ああこの路線があったな、と改めて気づかされたのだった。番組と関係ないCMが流れるからスキップしたりトイレに立ったりする。本編の世界観を引き継いだCMに、本編の登場人物やらキャラクターやらが出てきて宣伝をすればいい。CM臭があまりしないCMなら、番組とほとんど変わらずに見てもらうことが可能となる、かもしれない。たとえばイ・ビョンホンが出てくるドラマがあって、その間に流れるCMにも彼が出てくるとなれば、ファンは席を立とうとはしないはずだ。

もちろんすでにこういう方法をとっている番組はある。本編のドラマで主演している俳優や女優が出てくるCMを流すなどは日常茶飯事だろう。しかしCMの内容がまったくかけ離れた感じのものであれば、番組の世界観を破壊してしまうおそれもある。番組の内容とCMの内容との整合性が問題となるわけだ。それに、その番組でないところで同じCMがじゃんじゃん流されているのでは、わざわざその番組内のCMを見る必然性はない。

つまり、番組の内容に合わせてカスタマイズされたり、専用に制作されたCMのほうが、番組との相乗作用がより強く働くのではないか、といいたいわけだ。確か日曜夜に資生堂あたりが提供しているトーク番組(何だっけ?)で、司会役の女性タレントが資生堂化粧品のCMを生でやっていたのを見たような気がする。ちょっと前に日産が提供した「道路」をテーマにした番組でも、本編からシームレスにCMへと移行していく演出がなされていた。

この手法はもちろん手間がかかる。番組とCMを併せて企画、制作しなければならないし。しかしそうでなければ見てもらえないとなれば、やる価値は充分にあるのではないか。ひょっとしたら今後、番組本編と専用CMを一緒に制作するのが当たり前になっていくかもしれない。スポンサー企業としても、提供する番組を選ぶ際に、番組との相性をこれまでより強く意識するようになるのではないか。

というわけで、この面でも「サザエさん」はなかなかあなどれない。ああいうCMが可能だったのは、安定した人気と使いやすいキャラクターがあったからでもある。いわば幅広く親しまれる「大物タレント」だ。何しろ原作マンガは1946年スタート(こっちはもう連載終了している。長谷川町子さんはとうに亡くなったし)、アニメは1969年放送開始で現在まで続いているが、未だにサザエさんは20代の若妻のままでいられるのだ。この安定感は、実在の人物には望むべくもない。携帯電話もパソコンもない磯野家だが、どっこいメディアの最先端でしっかり生き抜いている。

※追記
「クレヨンしんちゃん」もキャラクターが提供のニッポンレンタカーのCMに出ていた。さすがに「ぞうさん」踊りはしていなかったが、しんちゃんの「攻撃」を軽くいなすあたり、ニッポンレンタカーのお姉さんもなかなかあなどれない。

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Comments

山口さん、こんにちは。
記事中にある「番組の内容に合わせてカスタマイズされたり、専用に制作されたCM」を作った番組ということで、 昨年日本テレビで放映された「東京ワンダーホテル」というものがありました。
この番組は主題歌「トーキョーシティ・セレナーデ」を佐藤竹善さんが歌っていたので、一度は見ようと思っていたのですが、4カ月に一回という超不定期放映(しかも深夜)だったため、つい録画を忘れてとうとう見れませんでした。
内容を知らずにご紹介していて申し訳ありませんが、少なくとも番組ホームページを見る限りはそういうシームレスな試みをしていたようです。
http://www.ntv.co.jp/TWH/story/index.html

Posted by: くりおね | April 25, 2005 10:01 AM

くりおねさん、コメントありがとうございます。
深夜番組には、けっこうこういうのがありますね。そういえば、ちょっとちがいますがフジテレビで深夜にやってた「東京ミチカ」(http://www.fujitv.co.jp/michika/index2.html)なんかはタイアップだらけで番組自体がCMみたいでした。

Posted by: 山口 浩 | April 25, 2005 08:16 PM

山口さん、こんにちわ、

随分昔のチャップリンの映画で、パーティーの中継の途中で、女優がスポンサーの商品をいきなりCMするという場面がありました。ああ、たしか「ニューヨークの王様」だったと思います。参考まで。

Posted by: ひでき | April 27, 2005 04:53 PM

ひできさん、コメントありがとうございます。
そんなころからあるんですか。一度見てみなくちゃ。

Posted by: 山口 浩 | April 29, 2005 12:52 AM

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