雑誌目次をみる:「AIR STAGE」
一部に好評の「雑誌目次をみる」シリーズ。今回は「AIR STAGE」。
以下、スチュワーデスに関して批判的と受け取られる表現があるかもしれないが、そういう意図はないので念のため。
スチュワーデスというのは、今でも女性の間で非常に人気のある職業だ。男性の間でも、というとちょっと意味はちがうが、まあ人気であることにはちがいない。「AIR STAGE」は、スチュワーデスになりたい女性のための雑誌らしい。ふれこみには「スチュワーデス&スチュワード、グランドホステス、一般地上職、航空管制官など、航空業界で働くためのあらゆる情報を網羅した月刊誌。本誌巻末には求人募集広告の専用ページを設けています。」とある。一応男性も対象にしているようだが、表紙はほとんどスチュワーデス姿の女性だし、書店ではまずまちがいなく女性誌の売り場にある。
出版元はイカロス出版。ここが出している雑誌をちょっとみてみると、こんな感じ。
「エアライン」
「Jウィング」
「通訳翻訳ジャーナル」
「パラワールド」
「スカイスポーツ」
「J-SHIPS」
「J-Ground」
「MILITARY CLASSICS」
「Jトレイン」
「N(エヌ)」
「のりもの倶楽部」
「鉄道浪漫」
「Jレスキュー」
「素敵なフラ・スタイル」
「rasin」
空関係が多い。とすると「イカロス」はちょっと物騒じゃないのと思ったりもするが、まあ空つながりにはちがいないのだし。で、空関係以外はというと、通訳とか船とか鉄道とか軍事とかハワイとか、微妙な連関性をもったなんとも味わい深いプロダクトポートフォリオを形成している。
ちなみにこの会社、スチュワーデスその他航空関係の仕事に就きたい人のための学校「イカロス・アカデミー」も経営している。「新卒JAL 一次面接対策講座」の場合、1回2時間の3回で受講料 35,000円。そんなもんかね。
ともあれ、「AIR STAGE」2005年7月号の目次は次の通り。
特集 Bonjour! 愛しのエールフランス航空
・新ユニフォーム発表会
・歴代の制服でみるヒストリー
・新エスパス パリ/関西フライトレポート
・CA INTERVIEW オテスに学ぶフレンチエレガンスの秘密
・採用担当官に訊く オテスに求めること&オテスになるには
今月の特集はエールフランスだ。最初の記事は制服。次の記事も制服。なんといってもこの雑誌、最大の関心事は制服にある。スチュワーデスを志す女性にとってあの制服はあこがれの象徴的存在なのだろう。このあたり、私立の女子校が制服に凝るのとおそらく根はいっしょなのかもしれない。制服がない都立高校で、女子生徒たちが思い思いの「なんちゃって制服」を着たりすることがあるようだが、もし航空会社がスチュワーデスの制服を廃止したら、受験者が減ったりするのだろうか。
いちいちフランス語で書いているのがなんとも。エールフランスではフランス語で表現するからなんだろうが、私はフランス語をほとんど知らないので、ちょっとやっかみが入る。「エスパス」は、ファーストクラス・ビジネスクラスのことを指すらしい。関空―パリ路線に乗ってみました、というレポートだろうか。「オテス」は「Hôtesse」、正式には「Hôtesse de l'air」、要はスチュワーデスのことだ。英語でいえば「air hostess」だが、この雑誌の読者はこの呼び方を嫌うだろう。そこまでフランス語にこだわるなら、ぜひ「ユニフォーム」も「ヒストリー」も「フライトレポート」もフランス語でいってもらいたいね。「フレンチエレガンス」だが、正直なところ、サービス業であるスチュワーデス(でも「オテス」でも何でもいいが)に対して、ホスピタリティならともかく、エレガンスは期待しない。万が一のときに「助けなきゃ」と思わせるようでは困るのだ。
あなたにぴったりの外資系エアラインを探せ!
・Part1 外資系エアライン人気ランキング
・Part2 外資系エアライン受験のナゾを解く
・Part3 このエアラインに注目! 採用試験のステップを知る
「あなたにぴったり」なのが見つかるといいね。向こうも「ぴったり」と思ってくれるともっといいけど。
[エアステージ]読者モデル募集
読者モデルが制服とか着たりするんだろうか。以前、航空大学校の受験申込書の写真欄にパイロット制服姿の写真をつけてくる人がいるという話を聞いたが、なんだか似たところがあるようにも思える。スチュワーデスっていったって別に大スターじゃないんだから、本物をつれてくればいいじゃん、などと考えたりもするが、会社がうるさいのだろうか。宣伝になると思うんだけど。目立ちたがり屋はダメってことなのかも。
カタール航空フライトレポート
日本路線第1号 関西/ドーハ
ほほお。4月1日に就航した新しい路線だ。カタール航空も日本人スチュワーデスを募集しているのだろうか。と思ってサイトをみたら、確かに日本語ページにも採用情報があった!へえ。
面接直前対策 「面接で合否は決まる」
・講座(1) 面接ファッション
・講座(2) グループ面接
・講座(3) グループディスカッション
・講座(4) 英会話面接
・講座(5) 個人面接
・講座(6) マナー
・面接の悩み、全て解決します
・面接の質問ランキング20
・履歴書クリニック
・今、客室乗務員経験者が求められている
・北海道国際航空 受験対策
・これから募集が出る会社リスト
なんだかものすごい力の入れようだが、まあこの雑誌のレゾンデートルみたいなものだろうからしかたがない。「面接で合否は決まる」ってまあそりゃそうだろうな。面接試験はたいてい最後にあるわけだし。でも、大半の人にとってはいかにして面接にこぎつけるか、では?
<連載>ワールド・エアライン・グラフティ 「ユナイテッド航空」
おおユナイテッド、ではないか。経営危機はどうなったのだろうか。マイレージプラス会員である私としても気になるところだ。労働組合が会社の大株主になるということで、労働者と経営者の利害が一致すると新しい経営スタイルと注目していた時期もあったのだが、どうもそうでもないようだ。経営者に株を持たせると当面の利益追求に邁進し、労働者に株を持たせると労働者に甘い経営になる、といことだろうか。うーん。ぜひがんばってもらいたい。いろいろな意味で。
その他の項目はこんなところ。
・受験セミナー
・[エアステージ] を初めて買うひとへ
・バックナンバー
・(AIRSTAGE CLUB)
・NOKOの笑う受験者
・Airlines News
・航空業界キーワード
・空港の仕事人「出雲空港」
・闘うスチュワーデス 旬子参上!
・READER’S STAGE
・航空業界人の英語勉強法「スカイマークエアラインズ」
ふうん。
ちょっと物足りないので、バックナンバーの目次も見てみる。面白そうなのは以下の通り。
2005年6月号
・特集「いまこそ決めた!グランドスタッフ主義」
・主要6空港GS INT、人事担当者INT
・「JAL」CA受験対策
スチュワーデスがだめなら地上勤務でも、ということか。そこまで志望者をひきつける魅力とはいったい何なのだろう。「GS」はグランドスタッフだろうが、「INT」って?まさか、「インタビュー」のことか?よく出てくることばは省略しようということか。そこまで略すなら、他もやったらいい。「空港」は「KK」とか「AP」。「受験」は「JK」、「対策」は「TS」。上記を書き直すとこんな感じ。
・TS「いまこそ決めた!GS主義」
・SY6KKGS INT、JJ TTS INT
・「JL」CA JKTS
…なんのこっちゃ。
2005年5月号
・特集「国内エアラインCA合格の法則」
・就活ファッション着まわし術
・国内エアライン22社CA採用傾向
国内エアラインって22社もあったのか。やはり「国内」がいいのだろうか。「就活ファッション」を「着回す」ってことは、かけもち受験するってことだよね。よく知らないのだが、航空会社の人事担当者の皆さん、受験者に「ファッション」を期待しているのか?私もいわゆる「リクルーター」として新卒者の面接というのをやったことがあるが、ファッションでどうこうしたことはない。人物より服装の印象のほうが強い人ではむしろ困る。まさか航空業界はちがうのか?
2005年4月号
・CA&GS受験スクールに通うべき?
これは読むまでもないだろう。スクールをやってる会社なんだから。
2005年3月号
・JAL CAマナー講座
マナー講座ね。元スチュワーデス、みたいな人がやってるマナー講座などをよくみかける。たくさんの人が通ってるんだろう。その割に、飛行機の中以外でああいう立居振舞いをしている人を見たことがないのはなぜだろうか?
2005年2月号
・特集「本命はJAL・ANA」
・空港の仕事人「コウノトリ但馬空港」
やはり本命はここか。この業界どうもヒエラルヒー意識があちこちに顔を出しているようにみえるのは色眼鏡だろうか。で、「コウノトリ但馬空港」って何じゃ!?と思ったら、本当にこういう名前の空港があるのだ。コウノトリ最後の生息地であることから名づけられたそうで、「但馬空港をより親しみやすい空港にし、全国的な知名度向上を図るため、愛称名を「コウノトリ但馬空港」としています。」という趣旨らしい。うーんもうちょっと努力がほしいところだ。「全国的な知名度」なんだよねぇ目的は。だったらせめてコウノトリのキャラクターを作るぐらいはやってほしいぞ。いかにも手作り感の漂うサイトからみて、あまり予算がないのかもしれないが、こういうときこそオープンソースだ。全国のクリエーターに呼びかけたらいい。
「コウノトリ但馬空港のキャラクターを募集します!」
とか。「採用の方には地元特産の何とか」みたいにすれば安上がりだ。我こそはと思う方、ぜひ但馬空港ターミナル㈱に売り込んではいかが。
2005年1月号
・重大発表!ANACA応募資格が変わる!
・ANAグループCA新ユニフォーム
・注目すべきはANA特定地上職
おおたいへんだ!重大だ!応募資格が変わるのだ!でももっと気になるのはユニフォーム、というわけだな。
2004年12月号
・失敗しないスーツ選び、パターンオーダーで勝負!
就職活動用のスーツ、のことだろうか。「パターンオーダーで勝負!」って、まさかタイアップ企画だったりして?
2004年11月号
・日本で勉強する? 留学する?
・ヘアスタイルアレンジ図鑑(プロセス付き)
スチュワーデスになるのに留学、するのだろうか?なんとまあご苦労な。ヘアスタイルのほうは、あのスチュワーデス特有の髪型のやり方を教えてくれたりするのだろうか。
2004年10月号
・CA気分の機内用語集
よくすし屋で得意気に符丁を使ってばかにされる客がいる、なんていう話を聞く。これを読んで機内用語ばっちりの受験生の皆さんも気をつけられたし。
2004年9月号
・付録「機内アナウンス練習帳」
あのー、こういうの練習して、何かいいことがあるんでしょうかー?
2004年8月号
・「ANA」新ユニフォーム発表
とことんユニフォーム、だな。
2004年7月号
読者モデルCA模擬面接に挑戦
おお。読者モデルの役得。読者モデルが実際に合格したりすることもあるらしい。よく私立の学校で授業料免除の「特待生」なんていうのがあるが、そういう存在なのかも。
いやまあなかなかに熱い雑誌のようではある。うらやましがられるのと同じくらい、やっかみやら中傷やらを受ける職業だ。昔ホイチョイプロダクションのマンガで、「なぜスチュワーデスとつきあうといいのか」を力説したものがあったな。私としては特段思い入れはないのだが、なんであの人たちの機内でのお辞儀はわざとらしいんだろう、笑顔が表面的なものに見えるのだろう、といった疑問はある。個人的な経験だけでいうと、同じホスピタリティ関連でも宿泊系、たとえばシティホテルのフロントや旅館のおかみなんていう人たちの笑顔は、もっと自然に受け止めることができる場合が多いように思う。それに比べて、スチュワーデスの作りものっぽい対応はどこからくるのだろう。危険と隣り合わせの緊張感がそうさせるのだろうか。機内に乗り込むたび、「そんなにいやなら別に挨拶してくれなくていいよ」といいたくなるのは私だけだろうか。
…それとも、上のクラスを担当するスチュワーデスの皆さんはちがうとか、あったりするのだろうか。うーん。払った金なりに、ということなら、まあ納得せんでもないか。
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Comments
何をおっしゃいますか山口さん!スチュワーデスのサービスはとっても良いと思いますよ。特に国内線。やっぱり日本のスッチーはよいわーって思います。外国のフライトアテンダントはサービスはてきぱきやって誇りと言うかそういうのがある感じでそれはそれで良いですが、なんとなく日本人のは柔和な感じがします。
スチュワーデスのマナーは結構企業研修とかで使われるらしいですよ。JALとかもそれ系に特化した子会社があるはず。振る舞いもそうですが、心構えも含めて研修しているはずです。
お空で気流に巻き込まれてガタガタガタって揺れている時に余裕で飲み物をついでこぼさずにサービスしているあの方々のテクニックはすごい!と毎回感動しています。
Posted by: Hiroette | May 29, 2005 07:45 PM
Hiroetteさん、コメントありがとうございます。
いやそうですか。私の気のせいなんですかね。というよりも、私の中になんらかの引け目を感じる部分があるのでしょうか。
「揺れているときに飲み物のサービス」については、私としてはどうにも気になってしかたがないので、できればやめてもらいたいと思ったりします。隣の人が熱いコーヒーとか飲みかけで置いておかれるともうこわくて。
Posted by: 山口 浩 | May 29, 2005 08:44 PM