雑誌目次をみる:「METROPOLIS」
一部に好評の「雑誌目次をみる」シリーズ。今回は「METROPOLIS」(メトロポリス)。
トーキョー在住の「ガイジン」の皆さん御用達のフリー情報誌だ。レストランなんかによくおいてある。「R25」などとはちがってメジャーな広告はあまり出ていないからあまりいい紙を使っているわけではないが、けっこう写真がきれいだなと思うことがよくある。
手元にあるのは2005年4月29日号だ。表紙はスリランカの赤ちゃんの写真で、たいへんかわいいのだが、ひょっとしてあの津波の被災者なのだろうか。
ということで目次。全62ページ。
THE SMALL PRINT
今週のちょっとしたニュースなんかをコンパクトに並べたコーナーだ。3月はビールの消費量が対前年比8%ダウンだったとか高島屋が東京と大阪に新規出店するとかそういった記事はまあいいのだが、気になったのは「社会党本部がハチミツで資金作り」という記事。ハチミツを250kgほど生産、とある。いや確かに千代田区永田町の社会党本部ビル屋上で養蜂が行われているのは知る人ぞ知る事実だが、それを運営しているのは別のところのはず。社会党自体が養蜂に乗り出した?しかも資金作り?記事はごていねいに「異なる政治的主張の人にも販売する」とある。いわゆる左派は環境保護と親和性が高いのはわかるが、そこまでするか?いやそれよりも、資金作りのためにそこまでしなければならないほどなのか?などと妙にかんぐりたくなる。
FACES & PLACES
インタビューコーナーだ。1人めは日本人のベリーダンサー、Hiromi Kuroyamaさん。日本人のベリーダンスチーム「Samanyolu Ensemble」のメンバーだ。日本人のベリーダンスは中東のものとちがうオリジナルのスタイルなのだそうな。もう1人はニュースキャスターの安藤優子さん。テレビ出演時の服や化粧品などについてよく視聴者から問い合わせが来るとのこと。まあそりゃそうだろうこんなページまであるぐらいだから。「Sometimes I think I am a panda.」と語っておられる。
THE GOODS
母の日のプレゼントにAnniversaire。それにSWATCHの2005年Sport Collection。それとFour Seasons Hotel Tokyo at Chinzan-so。
TECH KNOW
日本のガジェットを紹介するコーナー。タカラの「キグミー」の紹介が面白い。日本語だとこんな感じになるだろうか。
「玩具老舗のタカラが2005年大ヒットまちがいなしと太鼓判のまったく新しいバーチャルペット「キグミー」をご紹介。たまごっちとはまったく異なり、『キグミー』はなんと数種類の着ぐるみに身を包んで登場(いや申し訳ないがもうちょっとだけお付き合いいただきたい)。お値段はなんと2,500円。スタイラスで操作すればもう気分はミニPDA。ゲームもでき、カバンにも簡単につけられ(はいはい)、ケータイ着信にも反応する。――信じないかもしれないが、あなたが10歳ならこれらはパラダイスみたいに思えるのだ。」
…いや確かに。
Holiday of Hopes and Dreams
昨年の津波で大きな被害を受けたスリランカを支援するために、ボランティアツアーを企画した人たちの話が特集されている。1週間のツアーで、半分は観光、半分はボランティアというものだ。こういうのを「humanitarian tourism」というらしい。「遊び半分なんて」という方もいるかもしれないが、私は悪くない発想だと思う。何もしないよりはるかにましだし、スリランカの観光産業にとってはとにかく客足が戻ることが先決だ。「善意を娯楽にする」発想、とでもいおうか。
ARTS & ENTERTAINMENT
音楽はMAXIMO PARK、絵画は佐野繁次郎。スポーツでは朝青龍について、日本人横綱を望む日本人が抱くアンビバレントな感情をレポートしている。このあたり「ガイジン」の皆さんにとって関心の高いテーマなのだろう。
THE AGENDA
今週の予定に関する情報コーナー。コンサート、演劇、舞踏、イベント、蚤の市、展覧会、スポーツ、クラブ、映画、テレビの各カテゴリーで全12ページにわたって詳細に伝えている。ある種「生命線」なんだろうなきっと。映画のところでは「ドッジボール」を特集。ベン・スティラーが「ふんぬ」とばかりにボールをまさに投げんとするシーンがでかでかと。驚くべきことにラストシーンが感動的、とある。
DINING OUT
ワインコーナーはピノ・ノワールの話。アカデミー賞をとった映画「Sideways」の公開以降、その中でほめられたピノ・ノワールの売上が30%アップし、反対にけなされたメルローの売上は落ちたとか。
"Only somebody who really takes the time to understand Pinot's potential can then coax it into fullest expression."――Miles Raymond, Sideways
私は好きなのだがな、メルロー。
レストランは西荻窪の「NORABO」。バーは西麻布の「Cafe Baraka」。
CLASSIFIEDS
この雑誌の中で私が最も楽しみにしているのがこのコーナーだ。さまざまな情報があり、いつもじっくり読み込んでしまう。たとえばこんなの。当然だが、電話番号やe-mailアドレスは消してある。
日本人OK GUESTHOUSE. Female only house. Convenient location, 4min to Shinjuku, 17 min to Roppongi, Oedo line. Beautifully furnished. Bed, fridge, TV, etc. Share kitchen & shower room.¥68,000-/m. Utilities included. No deposit! Call, check our website, 03-5XXX-XXXX/090-XXXX-XXXX. WWW.XXXX.XXX
その部分だけ日本語で書いてあるところがごていねいだ。こういうコミュニティがあるんだろうなぁ。No deposit!の「!」は、やはり敷金という制度が不評ということらいい。
Austrarian businessman, setting up an office in Japan, seeks room with Japanese family or person. Prefer Shibuya area, in exchange for English lessons or other work. XXXX@hotmail.com
ビジネスマンなんだからちゃんと家を借りろよ、という気もするが、何か理由があるのだろうか。日本市場攻略のカギは日本人の生活様式の理解からだ!というマーケティング目的。これをきっかけに日本女性と結婚したい。単なる日本好き。自分で会社を立ち上げたばかりで実は金がない。なんだか最後のやつみたいな気がするが。金がないから、という理由で下宿したがる「ビジネスマン」てのはいかがなものか的感想がやはりある。
Oxfam Japan seeks a volunteer graphic designer to help ease the workload. If you can spare your time and skills, please contact us. XXXX@oxfam.jp
Oxfamに日本支部があったのか。と思ったら確かにあった。技術と意志のある方、ぜひ。
Seeking information. ココロ/精神の治療と称して、薬害、虐待行為、セクシャルハラスメント等の被害に遭われた事実を知りたいと思っています。文字化けの為、最初の連絡のみ英語にて。XXXX@XXX.jp
いったいこれは誰に向けたどんな呼びかけなのだろうか。日本のこうしたものを調査している外国のジャーナリスト、とか?しかしこの情報誌、日本人はあまり読んでないぞ。
Volunteers needed. Anti-human trafficking NPO needs on-call volunteers for victim hotline. Languages such as Korean, Spanish, Chinese, Thai, Tagalog, etc. are needed. XXXX.XXX.jp
うーむ。こういう世界があるんだよなぁ日本にも。なんとも申し訳ない感じがする。ロシア語とか東欧系のことばとかはないが、すでにスタッフがいるのだろうか。
INTIMATE TIME. Banker, single, forties, well-to-do, seeking girlfriend, university student or mid-20s, for evening dates and weekend travel. Must speak English. Email me w/photo and tell me something fun about yourself. XXXXX@yahoo.com
なんだかずいぶん高飛車だ。しかも自分が40代で相手は大学生か20代半ばまでだとぉ?鬼畜だねまったく。だいたいこの種のものにはある法則があって、イギリスとかアメリカとかそういうところの人は自分の国を書くが、そうでない国の人はCaucasianとかEuropeanとかLatinとか漠然と書いたりする。こういうヒエラルヒー感がどうにもいやだ。
Cheerful in Tokyo. SJF, 165cm, slim, enjoys parks, walking, museums, music and more, seeks nonsmoking, warmhearted and honest SWM, 33-43, from the US or Canada, for sincere relationship. Friendship first. XXXX@yahoo.com
ほらこういうやつがいるからつけあがるんだまったく。いわずもがなだが「SJF」は「Single Japanese Female」、「SWM」は「Single White Male」だ。「まずはお友だちから」なんていわれたって信じないぞ。
Brazilian-Japanese Guy. We met at Shinjuku station and went to my place on a Sunday night. You're Brazilian Japanese, 23, and I'm Japanese, 28. I want to see you again. XXXX@hotmail.com
「君の名は」(古いね)といった趣だが、これは「同性」のコーナー。つまりそういうことだ。
Male sissy maid. White male, 30, not gay, wants to dress up prettily, be a woman's maid. I like cleaning, cooking, spankings, etc. 日本語もokです。XXXX@XXXX.jp
なんだかとても「複雑」なご要望だ。日本人の「ご主人様」をお求めなのだろうか。
HOROSCOPE
まあふつうの星占いだ。
MAILBOX
投書欄だ。
CARTOON
4コママンガ。
THE LAST WORD
編集後記、かと思ったらちがった。読者からの投稿を載せる欄だ。
目次とは関係ないが、これに載っている広告には、なかなか興味深いものが多い。たとえばLloyds TSB Bankの海外送金サービス。やはり送金ニーズが多いのだろう。今や「出稼ぎ」は国境をまたぐ時代だ。それから写真スタジオ「四季」。「The Geisha make-over photo studio "Shiki" from Kyoto is now open in Tokyo, Kojimachi!」だとか。いや別に芸者に興味はないが、男は紋付はかまに日本刀で写真を撮ってもらえるらしい。なんだか「ラストサムライ」ふうの写真が載っている。しかし、せっかくサムライになりたいなら、やはりここはバカ殿のカツラもかぶってほしいところだ。裏表紙のアイリッシュパブ「The Dubliners' Irish Pub」もなかなかそそる。
トーキョーのガイジンライフを垣間見ることのできる「METROPOLITAN」。「R25」よりじっくり楽しめるのもいい。
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