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May 02, 2005

自民党は「ヒトラーの政党」らしい

2005年5月1日のテレビ朝日「サンデープロジェクト」に自由民主党亀井静香氏が出演していて、自民党総裁でもある小泉首相について「ヒトラーよりひどい」と語っていた。

へえ、そんな人を総裁に選んだのか、自民党は。

こういう話はしばらくたつと何の話だかまったくわからなくなるので最低限の基礎情報を書いておく。現在議論されている郵政公社の民営化法案について、その内容についてとか国会に提出するかどうかとか、自民党内の賛成派と反対派が激しく対立している(様子見の人たちはじっとなりをひそめているらしいがよく知らない)。小泉首相は賛成派、というより長年の構想を実現しようという「言いだしっぺ」であり、亀井氏は反対派の有力者だ。で、上記の発言が出てきたわけだ。「ヒトラーよりひどい」というのは、ヒトラーは法律に基づいて全権を握ったのに対し、小泉首相は首相になったというだけで法の根拠なく独裁的にふるまっている、という意味らしい。

以下は、政治的な主張ではない。どちらかの政治的立場について支持したり批判したりするものでもない。ただ一国民としての素直な感想だ。

記憶が正しければ、「ヒトラー」は亀井氏が前から言っていることだから、今回の発言が「衝撃的」というほどではない。しかし亀井氏は、こういう発言をすると国民が小泉首相について悪い印象(正しい認識、と言いたいのだろうな)を持つようになると考えているのだろうか。他の人がどう考えるかよくわからないが、私には「だったら辞めさせればいいじゃん」としか思えない。

こんな言わずもがなのことを書くのも気が引けるほどだが、小泉首相は自民党(と公明党)の議員たちによって選出された。日本国憲法第67条は「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。」と規定しているし、第69条では「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。」としている。亀井氏を含む自民党の衆議院議員たちが本当に「ヒトラー」を辞めさせたいと思うなら、内閣不信任案を出せばいいのだ。野党が反対することはなかろう。それだけで終わる。確かに自民党の党則をみると、総裁を罷免するための規定はないようだが、内閣総辞職となれば、総裁だって辞めざるを得ないだろう。

もちろん不信任となれば衆議院解散とか政界再編とかそういう方向へ続くなどという話があるのはわかるが、国民の立場からいわせてもらうと、それは国民にとって不利益でも避けるべきことでもない。何しろ政権与党の代表で内閣総理大臣が「ヒトラーよりひどい」かどうかについての問題で、しかも政権を支える与党内の有力者からの発言だ。単に郵政民営化法案の可否の問題ではない。何をおいても今議論してもらわなければならないではないか。

議員内閣制という制度は、本来、議会における与党の支持する者が内閣総理大臣になることを想定している。もしそれがゆらいでいるなら、そっちを先にやってもらいたい。自民党の議員諸氏は、ご自分が「ヒトラー」率いる党(つまり自民党はナチス党ということになるんだよ?いいの?)に所属していることをよしとするのかどうか、はっきりされてはいかがか。もし万が一、反対派議員や支持者の「ガス抜き」のためのポーズだとしたら、国民を愚弄するもので許容しがたいが、そんなことはないよね?

それから、公の場で「ヒトラー」というたとえを使うのはどうかと思う。アドルフ・ヒトラーという人物についての「正しい」認識がどうなのかはともかく、少なくとも日常的な意味において、それが誰であれ政治家を「ヒトラー」と形容することは激烈な非難であり、その人自身だけでなく、その人を支持した人々に対しても強い批判になるといわざるを得ない。しかもそれが内閣総理大臣となれば、その人を選んだ国会議員、ひいては日本国および日本国民全体に対する罵倒といっていい。少なくとも私は、そうした批判を甘んじて受けたいとは思わないし、黙殺するほど「大人」でもない。

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Comments

亀井氏の出演シーン、私も見ていました。「気が狂って」発言も否定はしていませんでしたね。まあ、発言の揚げ足取りはともかく、郵政の経営に関しては自分がトップならば地方は維持できない、と亀井氏は判断をしている、というように読めるのは間違いでしょうか。(公営ならば税金投入しないと維持できない、という意味にもとれますし)

Posted by: skywolf | May 01, 2005 06:36 PM

skywolfさん、コメントありがとうございます。
私も揚げ足とりをするつもりはありません。あの様子からみて、ご本人は「失言ではない」とはっきり言い切ると思います。他の党の人なら告訴ものの発言ですが、同じ党ですからね。
邪推かもしれませんが、反対論が思ったほど盛り上がらないのにいらだちを覚えているようにも見えます。一種のアジテーションなのではないかと。
おっしゃるとおり、亀井氏の発言は、基本的に郵便局は損を覚悟で税金を投入して(税を取らないで)維持すべきものであるとの趣旨に受け取りました。国鉄の民営化のときも似た議論があったよなぁ、と思い出したりしました。今、地方の鉄道はかなりバスなどに変わってきています。同じ構図を見たくないんでしょうね。

Posted by: 山口 浩 | May 02, 2005 06:25 PM

初めまして。
勉強がてらちょくちょく見させてもらってます。私もあのときのテレビをたまたま見てました。
米国に住んでいたことがありますが、日本人はああいう議論ですぐ激烈な言葉を使って相手を罵りますよね。普段、内輪では大人しいのに。たぶん議論に慣れていないのでしょう。
非常に同感しました。仮にも一国の首相をヒトラー呼ばわりするのは国民を馬鹿にしている気がします。もっと中身を冷静に話せばいいのに。
このブログもたまに批判がちょっと執拗だったり言葉が強すぎる気がしていたのでコメントをするのをためらっていたのですが、勘違いだったみたい。また来てみます。いつも有益な情報をありがとうございます。

Posted by: 舞妓 | May 17, 2005 11:20 AM

舞妓さん、コメントありがとうございます。
亀井氏は警察官僚出身の政治家ですから、議論に関しては「プロ」であるべき人ですよね。私は、「どのくらい『計算』してるんだろう」と思いながら見ていました。ひょっとしたら高度な計算をしてるのかも、と。でも、おっしゃるとおり、慣れていないのかもしれませんね。
それから、私の文章で気分を害されたようで失礼いたしました。本人としては、「面と向かっていえないことは書かない」というポリシーの下、暴言書きなぐる系の方々とは一線を画していたつもりだったのですが、どうもうまくいっていないようですね。反省します。「執拗」と思われたくはないので、どのへんでそう思われたのか、ぜひ教えてください。あ、コメントに書きにくかったらメールでもけっこうです。

Posted by: 山口 浩 | May 17, 2005 12:17 PM

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