親と関係のよい子は
通信教育大手「ベネッセ」の調査研究機関「ベネッセ教育研究開発センター」が5月10日に発表した調査結果に関して、「親と関係の良い子は勉強が得意」と報じられた。
まさかと思うけど、アレじゃないだろうね?
問題の調査は2004年11~12月に行われた「第1回子ども生活実態基本調査」で、公立校に通う小4から高2の約15,000人が対象だ。親との会話の頻度やかかわり方を尋ね、「いいことをした時にほめてくれる」など肯定的な会話やかかわりが多い子供を「肯定型」、「いつも『勉強しなさい』と言う」など否定的なかかわりが多い子供を「否定型」、どちらも多い子を「密着型」、どちらも少ない子を「希薄型」と分類した。すると、「希薄型」の小学生の52.2%が「ものを覚えること」を「得意」と答えたのに対し、「肯定型」では65.9%と高くなっている。また、「熟考力」や「創造力」「文章力」など10項目中9項目で、「肯定型」の小学生が「得意」と答えた割合が一番多かったとのこと。
はっきり書いているわけではないが、どうもこの記事は、「親がほめれば勉強が得意になる」という結果が出たとの印象を与える。ちゃんとした調査だろうからまさかそんなことはないだろうが、もし万が一「肯定型」と「勉強が得意」で簡単に回帰分析を行うようなやり方だったとすると、ちょっと待て、ということになる。
どう考えたって、これは因果関係を逆にしたほうがしっくりくる。親がほめるから勉強が得意になるというより、勉強が得意な子はほめられる、というほうが仮説としてはずっと自然だ。「ほめると勉強が得意になる」という仮説の検証なら、ほめたグループとそうでないグループに分けて時系列的な変化を追ったり、他のタイプから「肯定型」に変えた後の成績の変化を追ったりするぐらいのことは必要だろう。そういう調査が可能ならば、だが。逆の因果関係である可能性をどのように排除したのか、興味がある。
ベネッセ教育研究開発センターのサイトから調査の速報がpdfファイルでダウンロードできるが、ざっと見たところそのあたりの記載はないようだ。マスコミ向けに別途情報が提供されたのだろうか。フルバージョンの報告書には記載されているのだろうか。事情はよくわからないのでもちろん断言はできないが、ちゃんとした研究機関ならそのあたりはしっかりしているはずだから、あるいはマスコミが「思い込み」で独走したのかもしれない。とすればベネッセというよりマスコミの責任ということになる。微妙な表現だから、もしちがうとわかっても言い逃れが可能だろうが、もし意識的にそうしているならさらにたちが悪い。
世間的にも関心の高いであろうテーマだ。ぜひ詳しい情報を出していただければ。
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Comments
初めまして。
私は独身の学生なので、本当にそうなのかはわからないのですが。
親が褒めることによって、子どもの学習意欲を向上させて、結果的に「勉強が得意」になる、ということも考えられると思います。
まぁ、鶏と卵の話になってしまいそうですが。
どちらにしろ、本文で書かれているような実験などが必要なんでしょうけどね。
Posted by: GRAY | May 13, 2005 06:17 PM
GRAYさん、コメントありがとうございます。
いや確かにそういうこともあるんだろうと思いますし、実際にあります。
ただここでは一般的な傾向についてのことですので、どちらの因果関係のほうがよりprobableかと考えると、どうも「頭のいい子はほめられる」のほうではないかという気がする、ということです。
Posted by: 山口 浩 | May 13, 2005 09:06 PM
たとえが適切かどうか自信がないのですが、飼い犬と同じではないでしょうか。
芸を覚える(;・∀・)=3
↓
芸をしろと指示される
↓
芸をする
↓
誉められる
↓
嬉しい(*・∀・)☆
↓
また芸をする、もしくは新たな芸を覚える
てなかんじだとおもいます。しかし、これじゃあどっちが先かはわからんですね。(笑
Posted by: ペ | May 14, 2005 11:11 PM
ぺさん、コメントありがとうございます。
そういう連鎖もあり、逆の連鎖もあり。実際にどちらが多いかは、調べてみないとわかりませんね。半分だけ調べて「全部わかった」というわけにはいきませんよね。もし全部調べたなら、そこらへんをぜひ知りたいです。
Posted by: 山口 浩 | May 15, 2005 12:28 AM