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May 18, 2005

コンテンツファンドのたどる道

コンテンツファイナンスにおいて、いわゆる「ファンド」、もう少していねいにいえば、幅広く資金を集めるタイプの集団投資スキーム、の役割が拡大している。これまで「プロ」だけのものだったこうした投資機会が、さまざまな投資ビークルと、コンテンツ産業自体の盛り上がり、さらに投資先を求めるリスク性資金の蓄積が、この動きを支えている。

この一連の動きについて、なんだか既視感があるとずっと考えていた。何だろう何だろうと考えて、最近ああと思い至った。不動産ファンドだ。

どちらもファンドにはちがいないわけで、当たり前といえばあまりに当たり前だ。だから別に新しい話ではないわけだが、要するに、発展の過程が似ているのではないか、ということだ。個体発生は系統発生を、と畑ちがいの薀蓄を持ち出すまでもないが、おおまかにいえば、なんだか似た道を進んできていると思う。

不動産も、ファンド化が始まるまでは、資本市場からは遠いものと思われていた。不動産投資は、基本的には一部のプロのものであり、資金調達の手法も銀行借入か株式発行ぐらいしかなかった。それがファンドというスキームを得て、より大きな資本市場へのアクセスが可能となり、逆に投資家サイドからみれば新しい投資商品として受け入れられるようになったというわけだ。

そういえば、と思い出したのがバブル期のころ。当時は今あるようなファンドはなかった(おそらく不動産証券化協会のサイトあたりに資料があるだろう)。似たものとして覚えているのが、「不動産小口化商品」といわれるジャンルだ。典型的なものは、今だと似たタイムシェアリゾートによくあるように、マンションだとかホテルだとかの不動産自体を区分所有とか共有とかで「切り分け」てしまうものだ。あのころこうした小口化不動産はどちらかというと「キワモノ」に近い存在だった記憶がある。いくつかが威勢よく売り出されて、その後どうなったのかよく知らないが、きっと死屍累々なのだろう。現在の不動産証券化商品は、もちろんそうしたものとはちがう。ちがうのだが、今ある不動産証券化商品の市場が、そうした「死屍累々」を乗り越えて形成されてきたことだけはいえる。

現在の不動産証券化市場は、95年の「不動産特定共同事業法」(だっけ?)施行以降法令が整備されてきてから本格的な発展を始めた。対象不動産も当初は賃貸オフィスが主だったが、どんどん多様化して、住宅とか店舗とか倉庫とか、いろいろ出てくるようになった。完成済みの物件だけではなく、開発中の物件を対象とした、開発型証券化も盛んに行われている。

で、それをふまえて。

コンテンツファンドも、最近だいぶ増えてきた。この世界も資本市場とは遠い。むしろ不動産よりも状況は悪いだろう。資金調達というと、そもそも金融機関にすらアクセスできずに、取引先からの企業間信用みたいなかたちでの資金調達に頼る企業も多いだろう。何せ、つい最近まで、コンテンツは担保力がほとんど認められていなかったのだし、そもそも権利を持っていない企業のほうが多かったりする。

しかし最近は、直接企業や個人から資金調達をするケースがみられるようになった。典型的には匿名組合契約みたいなものだが、投資商品としてのペイオフ構造の設計にはさまざまあるし、倒産隔離やその他の投資家保護策についても、よく練られたスキームのものもあれば、必ずしもそうでもないものもある。パフォーマンス面でも、それほど長くはない歴史の中で、芳しくない結果に終わったものもあるようだ。で、最近は「コンテンツ立国」の掛け声もよろしく投資スキームに関する法制が着々と整備され、いよいよ本格浮上、といったところだろうか。

こうしてみると、ここまでの流れは、やはり不動産証券化市場の発展と似たところがあるようにみえる。いやもちろんいろいろ差はあるので、なんでも似ているぞと強弁するつもりはないので念のため。あくまで「おおまかにいって」の話だ。

ということからして。

コンテンツファンドが今後どうなっていくかを考えるうえでも、不動産証券化市場で起きていることは、参考になるのではないだろうか、というのが本題だ。前置きが長いね。

少なくとも日本でのコンテンツファンドには、「金融商品」の仲間とみるべき類のものと、「作り手を応援するため」のものとがある。ここで注目しているのは前者のほうだ。当然ながら、大半の不動産証券化商品も前者のほうだが、後者のタイプを考えられなくもないだろう。それは本題からそれるのでまた別途。

なんだか前置きを書いている間に時間切れっぽくなってきたので思いつきだけ。キーワードとして、「ファンドバブル」「開発型」「ポートフォリオ型」なんていうあたりをぱっと思いつく。

(1)「ファンドバブル」
今は不動産市場の現場にいないので「空気」を肌で感じているわけではないが、ファンド対象物件やファンド対象になりそうな物件の値上がり幅が大きいという状況はみられるようだ。つまりある程度規模があって、キャッシュフローが堅くてといった、ファンド的に手頃な規模・内容の物件に人気が集まる構造といっていい。これに似たことがコンテンツファンドにも起こるとしたらどうなるだろう?ファンド化に適した規模や内容の作品は資金が集まりやすいので多く作られる、といった流れがおきるかもしれない。それってどういう作品だ?とつらつら考えてみる。人気マンガ原作つきのアニメなんていうのは、キャッシュフローも比較的堅いし一見向いていそうだが、こういうあたりはまずまちがいなく「つば」がついている。今のところ日本のコンテンツは「安上がり」だから、5億円~10億円もあればテレビアニメ1年分とか劇場用映画1本とかができてしまうだろう。不動産証券化商品なんかと比べると、1桁ないし2桁小さい。目端のきくプロたちは資金力もあるから、わざわざこの程度の資金を市場から調達しようなどとは考えないだろう。とすると、そういうあたりから考えると、ファンド対象になるのは、アニメでいえば地上波ゴールデンタイムには向かないもっとカッティングエッジ系のやつ、ゴンゾあたりの得意そうな作品など、映画だとプロデューサー主導の職人気質系ちょっと渋め作品、なんてあたりになるだろうか。「バブル」というほどの動きにはならなそうな感じだな、どうも。日本映画が世界市場を席巻!なんてことになって、製作費もうなぎのぼりで1桁アップ!なんてことがおきたとしたら、変わってくるかもしれないが。

(2)開発型
不動産証券化商品の中で、「開発型」と呼ばれるジャンルがある。すでに完成した物件を証券化して売るのではなく、計画段階で、まだ物件がない状態で証券化するタイプのものだ。今あるコンテンツファンドの多くは開発型のjカテゴリーに属するだろう。開発型の不動産証券化商品をつらつら見ていると、多くの場合、投資家は開発に伴うキャッシュフローのリスクをそのまま負うのではなく、ミドルリスク、ミドルリターンに調整されたいわゆる「メザニン」的なものになっているような気がする。開発リスクをそのまま投資家に負わせるスキームでは資金が集まりにくいのかもしれないし、「バブル後の悪夢」ではないが、いろいろ問題が起きてレピュテーションが下がるのを嫌っているのかもしれない。こうしたキャッシュフローの切り分けは、現在のコンテンツファンドにもみられるが、それがより精妙になっていくのではないか。ゴンゾとJDCがやった「バジリスク」ファンドでも、ミドルリスクのある種メザニン的な設計になっていたと思う。コンテンツファンドの場合、投資家を過度のリスクにさらさないということもさることながら、アップサイドをあまり渡したくない、という要素もあるはずだ。キャッシュフローのアップサイドをとれるまでに時間がかかるケースも多いし、作り手の成功報酬を確保するという理由もある。現在のコンテンツファンドにはコールオプション型(ロングね)のペイオフ構造のものが少なくないようだが、ブルスプレッド型みたいに、ダウンサイド、アップサイド双方を限定する方式が多くなるのではないか。

(3)ポートフォリオ型
要するに、金融商品としてみた場合、コンテンツ開発という投資対象はかなりハイリスクで、しかもダウンサイドのリスクが大きい。投資家にそれをそのまま転嫁するとリスクが大きすぎるとして、ひとつの方法は(2)のようにキャッシュフローを切り分けることだが、もうひとつ、ポートフォリオにしてしまう方法がある。複数のコンテンツ投資を束ねて売るということだ。もちろん映画を対象にした商品ファンドはすでにたくさんあるのだが、テレビアニメやゲーム、その他のコンテンツに関してもありうるし、何よりこれまでのものはどちらかといえば一般投資家からは遠いプロ向けの商品だった。個人で投資できる小口のファンドにおいても、ポートフォリオ化はリスク分散につながり、また投資機会が継続的に提供できるなど、メリットがある。スキーム自体をどうするかという問題もあるが、実務的な意味での問題はおそらくコストだ。コンテンツは「単価」が低いから、事務コストが割高につくおそれがある。このあたり、今より効率的なプロセスを開発しないと、現実的に魅力のあるものにはなりにくいかもしれない。

その他「既存コンテンツの流動化」とか「国際化」とか、いろいろ考えられることはあるが、時間切れ。またの機会に。

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