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May 20, 2005

「ビジネス・サーベイによる景気予測の実証分析」

「ビジネス・サーベイによる景気予測の実証分析」

東京三菱銀行の2005年5月16日付レポートだ。一般公開のものではないのであしからず。予測市場そのものに関するレポートではない。しかし企業経営者へのアンケート調査が景気予測にどのくらい役立つかを検証したものなので、多数の意見を集約したものにどのくらいの予測力があるかという点で注目される。

最初にちょっと引用する。こういうレポートだ。

「本稿ではビジネス・サーベイが「最近の判断」・「実績値」に加え、「先行きの判断」・「予測値」を調査対象としている点に着目し、当該予測と予測期間における経済指標の実績値との整合性を検証することで、景気予測を行う上でのビジネス・サーベイの有用性について実証分析を行った。」

分析対象としたビジネス・サーベイは日銀短観(全国企業短期経済観測調査)と法人企業景気予測調査における大企業・製造業の先行き判断DI(次四半期分)。法人企業景気予測調査が始まる前、2004年4-6月期以前については法人企業動向調査。生産、在庫、設備投資、物価、雇用、景況感の6分野でマクロ経済指標とビジネス・サーベイの項目を組み合わせ、DIの動きが指標の動きを予測しているかどうかを調べる。たとえば生産関連では、鉱工業生産指数に対して、日銀短観の「貴業界の国内での製商品・サービス需給DI」「貴業界の海外での製商品需給DI」、法人企業動向調査や法人企業景気予測調査の「国内需要BSI」「海外需要BSI」、といった具合だ。

こまごまは省くとして、予測の的中率および有意性についての結果だが、以下のような感じだ。

・生産(鉱工業生産指数)は日銀短観や法人企業景気予測調査からよく予測できる。
・在庫(鉱工業在庫指数)もおおまかには同様。設備投資(機械受注)については日銀短観はだめだが法人企業景気予測調査はよく予測している。
・消費者物価の予測にはこれらのビジネス・サーベイはあまり適切でないが、企業物価については日銀短観がよく予測している。
・雇用のうち、完全失業率、有効求人倍率の予測には、日銀短観の雇用人員DIが有効である。
・景況感の予測においては、ビジネス・サーベイはいずれも後追いになっていて使えない。

要するに、企業がコントロールできない消費者物価や景況感については、ビジネス・サーベイは予測には役立た
ないということだ。ある意味穏当な結果、なのかもしれない。

予測市場の観点から指摘しておくべきなのは、これらのビジネス・サーベイにおいては、経営者が回答時に互いの情報を交換していない、ということだ。それぞれが自分の考えを答えているだけで、情報を集約するのは調査者の手元に来てからである。これだと「群衆の叡智」は利用できない。ここで予測市場のメカニズムを使っていたらどうなったろうか。互いの予測が市場という場で評価され、重み付けされる。その中から「市場の知恵」が抽出されてくる、かもしれない。

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