Fishing Quota Markets
Richard G. Newella, James N. Sanchiricoa, and Suzi Kerrb (2005). "Fishing quota markets." Journal of Environmental Economics and Management Volume 49, Issue 3 (May 2005): 437-462.
市場メカニズムを用いた資源配分の試みはあちこちにあるが、こういうのもあるんだな、というメモ。
そもそも市場というのは資源配分のためのメカニズムだ。だが、利益というよりは公共性の観点からよりよい(より効率的な)資源配分の方法を求めて、それまで市場取引されていなかったものを「市場化」する例は、近年どんどん増えてきている。電力やらCO2排出権だってそうだ。で、この論文がとりあげているのは漁獲割当の市場。
この市場はニュージーランドで1986年から実際に稼動している。「Individual Transferable Quota (ITQ) system」というそうな。この論文は、33種の魚に関する150の市場の15年間にわたるパネルデータを分析している。重要な市場では活発に取引が行われる。クォータの価格は魚の価格、生態系の状況、市場金利などによって影響を受ける。漁獲が少なくなれば、クォータの価格も上がるのだ。ここにケーススタディがある。こちらは同じ著者、同じテーマなのでひょっとすると元論文のワーキングペーパーだろうか。FAOのサイトにもこんな情報が。
で、結論としては、
Overall, this suggests that these markets are operating reasonably well, implying that ITQs can be effective instruments for efficient fisheries management.
とのこと。
この種の、通常であれば政治的なプロセスで決定されるべき内容を市場メカニズムを用いて調整していく手法は、今後さらに進展していくのではないかと思う(民間企業内でもこれに似た動きは始まっているがこれは別途)。これにより、一部の「専門家」たちはその価値を失う。したがってそれなりに大きな反発を伴うだろう。少数の「専門家」と多数の「素人」と。意思決定権限をめぐるパラダイムシフトがすぐそこに、とでもいおうか。
ちなみにNewellaとSanchiricoaはResources for the Futureの人。ワシントンにあるシンクタンク、らしい。こういう機関もあるのだな。
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