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June 07, 2005

フラーの「ワールドゲーム」がMMOGに!

「座右の銘は」などと聞かれるほどえらい人間ではないが、もし聞かれることがあったとしたら「ピアノのふた」と答えるだろう。R. Buckminster Fullerの「宇宙船地球号操縦マニュアル」の冒頭部にある話だ。どんな話かはあえて書かない。要するにいいたいことは、「フラー的なるもの」は私の考え方の深いところにまで浸透している、ということだ。白状すると、心情的には「ファン」にきわめて近い。

だいぶ前に書いた「『シリアス・ゲーム』の時代」という文章で、フラーのワールドゲームをMMOG(Massively Multiplayer Online Game:多人数参加型オンラインゲーム)にしたらいいのに、と書いた。それが、実際に動き始めたのだ!

…1人で興奮してもしかたがない。ワールドゲームは、フラーのさまざまなアイデアの中でも世界的に大きな影響力をもっているものの1つだ。ごく簡単にいえば、地球をシミュレーションするゲーム、ということになろうか。広い会場で多人数が「世界」を構成し、力を合わせて「世界」を運営する。基本的な発想は「世界には世界の人々がきちんと暮らせるだけの資源がある」というものだ。うまく配分し、うまく使う方法を工夫することができれば、環境に配慮しながらも、皆がハッピーになれるはず。現実を今すぐ変えるものではもとよりないが、世界をよりよい方向に動かすために考えるきっかけになる。まさに「シリアス・ゲーム」の決定版、ではないか。

フラーがこのゲームを考案した当時は、オンラインネットワーク上にゲーム世界を構築することは技術的にできなかった。しかし今はちがう。多くのオンラインゲームが「世界」を構築し、そこに集まる人々が「社会」を形成している。今なら、ワールドゲームをオンラインで、場所にかかわりなくより大きな規模で実施できるのではないか。MMOGとしても「究極」といえるかもしれない。

ワールドゲームのMMOG化を構想しているのは、The Buckminster Fuller Instituteと、California Institute of Telecommunications and Information Technology (Calit2)のGame Culture and Technology Lab。先月Calit2でゲームの構想を議論するためのワークショップが開かれた(関連記事)。現実の地球の状態をシミュレートできるものとし、プレーヤーの行動が種々の法則にしたがって影響を与えていくしくみを構築する。近年の技術の発達は、こうした物理法則などのシミュレーションだけでなく、それらを楽しめるビジュアルによってプレーヤーに見せることを可能にした。

まだ構想段階だから、稼動がいつごろになるのかよくわからないが、楽しみだ。私たちが今暮らしている社会は、考えうるベストではない。もっといいやり方がきっとある。それを考えるために、ゲームをしよう。遊んで、楽しんで、考えよう。そういうゲームを、私たちは必要としている。そしてゲームは、私たちにとって、これまでより重要な、有益なものとなる。

※追記
書き忘れたが、ネタ元は「Terra Nova」の「Spaceship Earth Takes Off」。Castronova准教授はごく短く事実だけ書いてる。けっこう彼の構想とは関連のある話だと思うのだが。

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