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June 28, 2005

Dr. Lauraにぶった斬られよう

昔、「ながら族」といういい方があった。音楽を聞きながら勉強、みたいに複数のことをいっしょにやる人のことをいう。そういうのはよくないという意味合いで使われていたが、今やそういうことをいう人はいなくなった。まあ、そうやって育った私がともあれ道を(それほど)踏み外さずにいるということは、たいして悪い影響はないのだろう。

で、今もしばしばやる。今のところ一番多いのはラジオだ。テレビの音声だけ聞く、ということもある。狙って聞くものもあれば、たまたま聞いてはまってしまうものもある。

今回は後者の話。

告白するが、人生相談番組とか、素人インタビュー番組みたいなものは昔からけっこう好きだ。趣味が悪いのかもしれないが、他人の会話を横から聞くのはけっこう楽しい。日曜日は、その種の番組がけっこうある。「新婚さんいらっしゃい」などは、小学生のころからのお気に入りだ。若い人だと「キスだけじゃイヤッ!」あたりのほうがいいのかもしれないが、なんだかギラギラした感じがしていまいち性に合わない。他にも名は挙げないが性根が曲がった感じがしてきらいな番組もある。その点桂三枝のイジリ方がギスギスしていないあたりがいいのかもしれない。「ヘイワナニッポン」を感じるひとときだ。最近は全国津々から出場者が集まるが、やはり出色は関西の人々だ。素人がただ話しているだけなのにどうして漫才になってしまうのだろうか。

インタビューなら誰がやっても面白ければいい。しかし人生相談番組は、そうではない気がする。その点、日本の番組はあまり好きではない。むやみに態度の大きいテレビ司会者やら、なんだかわからないタレントやらが深刻な相談者に対して何の根拠もなくああだこうだ言い放つのを見ているとむしょうに腹が立ってくる。人の悩みをネタにしやがって、という感じだ。まあそういう人に相談してくるほうもくるほうなのだろうが。

人生相談番組で気に入っているのは、AFNでやってる「Dr. Laura」のコーナーだ(この人)。Laura Schlessinger博士という。すごい。とにかくすごい。この人の何がすごいって、経歴もさることながら、なんといっても相談者を一刀両断、ぶった斬りにしてしまうやり方がすごい。日本の某番組のように、素人がよってたかって相談者をいじくり回す番組は、いってみれば飛行機の中で出てくるプラスチックのナイフのようなものだ。切れ味が悪いものだから力任せに斬りつけることになり、相談者をずたずたの血まみれにしてしまう。Dr. Lauraは、いわば日本刀だ。質問一発で真っ二つ。核心をつく質問で文字通り絶句させてしまう。ラジオでは1人2~3分しかかけていないと思うが、その間に相談者はあるいは泣きじゃくり、あるいは激昂し、あるいは放心状態となる。Dr. Lauraは質問を最後まで聞かない。一を聞いて十を悟るのだ。そのあまりにも自信たっぷりな態度には、誰だって「参りました」といってしまうだろう。で、問い詰める。容赦なく。相談というよりは尋問なのだ。で、あっという間に「判決」を下す。なんというか、最初から印籠出してる水戸黄門、みたいな感じだ。

こんな雰囲気。内容は架空。あくまでイメージ。

Dr.ローラ「ハーイ、ジェシカ!番組にようこそ」
ジェシカ:「こんにちはドクター。私が聞きたいのは、私の夫のことなんです。彼が私の子にやたらにさわりたがって…」
Dr.ローラ「子供は旦那さんとの子?いくつ?」
ジェシカ:「前の夫との子です。13歳で…」
Dr.ローラ「彼はどんなさわり方を?性的な感じ?」
ジェシカ:「性的な感じではないです。ただ抱きしめたり、キスしたり。子供はいやがっていて…」
Dr.ローラ:「ジェシカ、あなたはそれをずっと黙って見ていたの?」
ジェシカ:「アタシは彼を信じています。彼もアタシの子を愛してくれていて、でもきっと愛情表現のしかたが…」
Dr.ローラ「ちがうのジェシカ聞いて。あなたは新しい夫が、あなたと前夫との子を抱きしめたりキスしたりして子供がいやがっているのを黙ってみていたの?」
ジェシカ:「彼はそういう趣味はないんです。ただ…」
Dr.ローラ:「聞いて!よけいなことはしゃべらないで聞いて!答えはyes、noでいいの。いい?あなたは黙ってみていたの?」
ジェシカ:「はい」
Dr.ローラ:「ジェシカ。13歳のいやがってる女の子に対して抱きしめたりキスしたりすることは性的虐待なの。見過ごしてはいけないの。必要なら専門家の手を借りなさい。あなただけが子供を守れるのよ。そのことを自覚しないと。わかった?」
ジェシカ:「…はい」
Dr.ローラ:「ハーイ、パム!番組にようこそ」

この番組のもうひとつの魅力は、現代のアメリカの家族の問題が生のかたちであらわれてくることだ。上記の「Dr. Laura」のサイトには、過去の相談が出ている(オーディオファイルで聞けるのでぜひお試しを)。ちょっと拾ってみるが、こんな感じだ。

・Kiko has three children. She divorced her husband after 11 years. He is now getting out of jail abusing his current girlfriend. He is set for deportation. Kiko is getting pressure from her family to allow the children to see him...

・Tonya is getting married to a man much older than her. Her mother has asked when her fiance will ask her father for her hand in marriage. Neither Tonya or her fiance believe in that tradition. And her father has stopped talking to her...

・Bill finally found a job that paid well, but he was never home. He quit, but took grief from his boss. He's looking for work, but is thinking about being Mr. Mom. Is that the right thing to do?

・Sylvia finally divorced her abusive husband. But during their relationship, she got pregnant and he made her have an abortion. If she ever finds a good man, should she tell him?

・Jason's wife had an affair, broke up his marriage and family and finds her evil. He needs to sit in a room with her, a mediator, counselor, etc... regarding where his troubled son will now be living. How can he stay calm?

なんだかけっこう壮絶だが、これが現代のアメリカだ。もちろんこういうのばかりではなくて、夏休みに親からアルバイトでもしたらどうだといわれた高校生が、どうしたらいいでしょう?なんてかわいいのもある。Dr. Lauraの答えは?当然、「やりなさい。あなたができる仕事はたくさんあるわ。以上」だ。

もし自分がDr. Lauraに相談するとしたら何を相談するだろう、と考えてみる。たとえどんな相談をしても、3分間でぶった斬られるというのがなんだかくやしい気がする。全力を挙げて、難しい問題を考えてしまうかもしれない。

…それじゃ相談じゃないって。

しかしまあ、3分間でぶった斬られる程度の悩みで何年も悩むよりは、さっさとDr. Lauraにぶった斬られて解決したほうがいいのかも。お悩みの方、M.M.にいじくられるよりも、Dr. Lauraにご相談を。

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