韓国女性の労働参加率が干支に関係しているという話
Jungmin Lee (2005). "Marriage, female labor supply, and Asian zodiacs." Economics Letters Volume 87, Issue 3 (June 2005): 427-432.
これは「ネタ系経済分析」ではない。
「Economic Letters」誌は、経済学の学術誌の中でも権威のあるものだ。実は要約しか読んでいないので、内容をきちんと把握しているわけではないが、専門家のレビューを受けているものだし、変なものでは決してないので念のため。著者はアーカンソー大学の人だが、名前からみて韓国系の女性らしい。
要約は短いのでまるごと載せてしまおう。
Marital status and labor supply decisions could be correlated on the unobservable. Using South Korean data, this paper exploits exogenous selection into marriage caused by an eccentric cultural phenomenon—preferences for wives' zodiacal signs—to estimate the causal effect of marital status on female labor force participation.
干支による嫁の選別を「eccentric」と言い切っている。まあそりゃそうだ。ちょっと検索してみたが、韓国での結婚においては、日本におけるよりはるかに占いに頼るケースが多いらしい。韓流ドラマにもそんなシーンがあるとか。で、干支もポピュラーである由。
韓国の干支に関する解説ページはこちらにある。ざっとみた限りでは、干支の動物自体はほぼ同じだ。「イノシシ」が「ブタ」になっているという指摘がいくつかのサイトにあったが、考えてみればイノシシはブタのご先祖だし、まあ同じと考えていいのではないか。で、基本的には相性で考えるらしいことも、まあ日本とほぼ同じだろう。相性のいい男女の組み合わせがちがうかどうかは、日本のほうをよく知らないのでわからなかった。基本的には同じものが伝わっていったのだろうから、似ているのは当たり前と言えば当たり前だ。
本論文では、男女の干支の組み合わせでなく、干支自体が問題になっているようだ。特定の干支の女性は結婚しにくい、ということだろう。日本だと丙午(ひのえうま)の話がある。韓国の場合はと思って韓国人の同僚に聞いたら、「午年と寅年の女性は気性が強いとされていて、嫁として歓迎されないことがある」とのこと。特に男性側の親がいやがるらしい。「うま」という点は日本と共通か。日本だと丙午の年には出産自体が減ってしまうが、韓国にもそうした傾向はあるようなことを言っていた。
で、論文はというと、そうした干支による結婚「差別」を受けている女性の労働参加率が高くなっている、ということをデータで検証したものらしい。結婚したら仕事を辞める人が多いのだろう。
日本の場合も、データがあれば似たような検証が可能だろう。どこかでなされているのだろうか。
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