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June 05, 2005

雑誌目次をみる:「THE BIG ISSUE」

一部に好評の「雑誌目次をみる」シリーズ。今回は「THE BIG ISSUE」。

駅などで、雑誌を手に持って販売している人を見かけるが、あれだ。「ホームレスの仕事を作り自立を応援する」というふれこみ。販売しているのは、登録したホームレスの人々。1冊200円だが、うち110円が販売者の収入になる。1991年にロンドンで始まったものらしい。月2回発行で、日本版は2005年6月1日号で第29号になる。

発行しているのは㈲ビッグイシュー日本。「企業の戦略と手法を使い社会問題の解決にチャレンジする」のだそうだ。こういう発想、悪くない。単に「かわいそうな人を援助」とやるだけでは、援助される側にインセンティブが生まれないし、援助する方ももたない。もちろんただの金儲け商売ではないし、きれいごとは通じない面もあるのだが、こういう企業が今後の企業の1つのあり方となったらいいな、と思う。

2005年6月1日号(第29号)の目次は以下の通り。

最初は「International」のコーナー。ロンドン版からの翻訳、ということでもないらしいが。

・スペシャルインタビュー:マライア・キャリー―本当の栄光の瞬間。私の歌が大変な時を乗りこえさせてくれた、と言われたとき
・リシャール・コラスさん(シャネル社長):夢を持ち、夢を生かす、それが若者の永遠の役割
・世界の子供シリーズ:空港に置き去りにされた子供難民たちは?―イギリスだけで年間1万人以上、うち3000人以上が天涯孤独

リシャール・コラスさんは正確には日本法人であるシャネル㈱の社長だ。日本の若者へのメッセージということで、「若者が夢を持たなすぎます」と語っている。「子供難民」の話は初めて知った。紛争国から「子供だけは」と親や親族によって先進国へ送り出される子供の難民がいるらしい。イギリスには年間1万人以上がやってくるらしい。対する日本の情報も出ている。1981年に国連難民条約を批准して以来、2004年末までに認定された難民の数は全部で330人。24年間で「さんびゃくさんじゅうにん」だ。

次に「Real Life」コーナー。

特集:若者は没落するか―検証!ヤングライフ・クライシス
・誰も経験したことのない 若者の危機―20~30代に、今何が起こっているのか?
・追い込まれる若者たち―渦中の20代女性、30代男性のユーウツ
・助けを乞うことできますか?―必要な"HELP-SEEKING BEHAVIOR" 島悟さんに聞く

この号の特集は若年層の問題だ。就職難や劣悪な労働条件。20~30代の人々から「希望」が失われているという話。男性はキャリアの転機となる30代、女性では結婚、出産などの決断に迫られる20代後半にあらわれやすい由。さまざまなところで取り上げられている話だが、この雑誌だとひときわ切迫感がある。これまで「思秋期(ミッドライフ・クライシス)」として中年世代にみられた現象が若年化しているのではないかという指摘は、私にとっては新鮮な視点だ。一般的な論調では、今の世の中に特徴的な現象で若年層だけがしわ寄せを受けて、という取り上げ方が多いようだが、これまでもあったものが対象年齢層が変わってきた、というわけだ。

・Quarter Life Crisis(英国からのレポート)
・クォーターライフ・クライシス接近中!―苦悩する20代。英国全土で20代の3人に1人がうつ病

で、現象は日本だけではなくて、イギリスでもみられるという話。「クォーター」は25歳を意味する。英国うつ病協会の発表によれば、英国の全人口の5人に1人がうつ病であるのに対し、20代では3人に1人がうつ病、とある。ホントか!?人口は約6千万人だから、1200万人ということになるぞ。日本のケースについては、グラクソスミスクラインの調査によれば、成人人口の約6.7%がうつ病に悩まされているとのことで、ここから日本のうつ病人口を650万人と推定している。人口の5%か。アメリカだと、人口の約10%の由(参考)。「大人の国イギリスと子どもの国日本」なんていう本があったが、悩み多き大人の国、というわけだ。子供でいることでいいこともあるもんだ。

・世界・アジア・日本:お守り
・アート・オブ・ライフ:一番恐かったのは、"もうだめじゃないか"と自分がくじけてしまうこと
・YOUR ISSUE:読者のオピニオン

「お守り」は、世界各国のお守りの紹介。トルコには「目玉オヤジ」に似た「ナザールボンジュウ」というお守りがある由。へえ、と思ったが、調べてみたらあんまり似てない。「アート・オブ・ライフ」は、㈱トレジャーファクトリー代表の野坂英吾氏のインタビュー。この人、社長blogも書いているらしい。

BACK BEAT
・FILM:「Little Birds―イラク戦火の家族たち―」
 ―音楽、語りも抜き、戦争を実感してほしい

Little Birds―イラク戦火の家族たち―」は、ジャーナリスト綿井健陽氏が自らの取材映像をもとに監督したドキュメンタリー映画だそうだ。6月4日から東京(渋谷UPLINK FACTORY)、大阪(シネ・ヌーヴォ)他で公開、他全国主要都市で順次公開とのこと。軽い気持ちで「自分探し」だのボランティアだののためにイラクに行きたいとかばかなことを考えてる人がいたら、まずこちらを見てもらいたい。で、イラクに行くより他に、自分にできることを探してほしい。

・MUSIC:スノウ・パトロール
 ―いつも音楽の力には驚かされる。それによっていつも起こるすべてのことにも

・BOOKS:時と時間
テーマは「時と時間」というわけで、紹介しているのは以下の4点。
 ロバート・A・ハインライン「夏への扉
 本多孝好「真夜中の五分前Side-A
 ミヒャエル・エンデ「モモ
 森絵都「永遠の出口

・STREET CULTURE:ありあまる情熱をストリートダンスに―煌くダンス魂

・テレビ時評:『A』久米宏が醸しだす「老い」の哀しみ

・FROM THE STREET 今月のひと:おにぎり屋さんをしながら、休みには油絵を描けるようになりたい

この雑誌の販売員である根岸博さん(54歳)のインタビューだ。販売員になってやっと生活が安定したという。将来おにぎり屋さんをやりたいという夢とか、最近始めた油絵の話とか。なんだかいいね。

・FROM EDITORIAL編集後記

全体として、「弱者」への視点が行き届いている感じだ。そういう類だとよく思想がかったりするものだが、この雑誌からはあまりそうした臭いは感じられない。最近ちょっと売れ行きが伸び悩んでいるそうだが、なんとかがんばってもらいたい。というわけで、街角で販売員の方を見つけたら、ぜひ一冊。

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Comments

つhttp://sinseihikikomori.bblog.jp/category/big/

Posted by: 匿名 | June 05, 2005 01:32 AM

こんにちは、はじめまして。私も先日ビッグイシューの事をブログに書きました。それでなんとなーく検索していたら山口さんの記事を拝見いたしまして、コメント送らせて頂いております次第であります。理路整然と詳しくわかりやすくてすごーいです。もっと詳しく知りたい(「キミの説明だとよくわかんないよ」)という友人知人にこのブログ教えちゃいました。勝手にすみません。

Posted by: fluteなお | June 17, 2005 12:02 PM

fluteなおさん、コメントありがとうございます。
これからも「すごーい」文章を書けるようがんばります。
今後ともよろしくお願いいたします。

Posted by: 山口 浩 | June 17, 2005 04:13 PM

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