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July 26, 2005

MMORPGは計画経済へ進むのか?

MMORPGの課金モデルといえば、少し前までは月額制が当たり前だった。しかし最近、アイテム課金を導入するゲームがふえてきている。いくつか拾っただけでも「フリフオンライン」「トリックスター」「アルテイル」「巨商伝」「スカッとゴルフ パンヤ」といろいろ。ポータルサイトからダウンロードできる類のものだと、むしろアイテム課金のほうが主流になりつつあるのかもしれない。

アイテム課金方式導入の動機は、事業上のものだろう。ひとつはエントリーバリアを引き下げること。月額課金制のゲームに登録するのはなかなか抵抗感が強い。月額料金を無料にしてまずはゲームに引き入れることは有効な戦略だ。もうひとつは客単価の増大。月額課金制ではなかなか高い金額をチャージできない。日本の場合、大半が1,000~1,500円前後ではなかったか。しかしアイテム課金の場合、それがゲームプレイにおける有利さや優越感に直結するから、プレイヤーは平気で3,000~5,000円も出したりする。非合理的なのかもしれないが、それが人情というものだ。これまで月額課金制で収入を確保しようとした各社も、アイテム課金のほうが高くチャージできる実例を見せられては、そちらになびくのも自然かもしれない。

ここで考えるのは、そうしたビジネス面の話ではない。「ゲーム内経済」に与える影響についてだ。

アイテム課金方式は、RMTの需要を一部代替する可能性がある。これまで月額課金制のゲームでは、プレイヤーを長くとどめるためにレベルの上昇がきわめて遅いペースとなっており、プレイヤーは長い時間をかけて自らのキャラクターを育成しなければ、ゲーム内における優位を享受することができなかった。それをバイパスする手段がRMTによるアイテムやキャラクターの購入だったわけだ。つまりRMTとは本質的には「時間を金で買う」ものであった。アイテム課金制になり、いいアイテムが始めから金で買えるものとなっていれば、RMTを利用して時間を節約しようとしていたプレイヤーを「合法的」(ゲーム世界における「法」であるゲームのルールとの関係において)な世界に取り込むことができる。プレイヤー同士で現金を使って行っていたアイテム取引を、ゲーム会社相手に(一方向だけだが)行うことができる。いらないアイテムやキャラクターを換金することはできないからRMTにおける「売り手」は救われないが(不正な売り手もいるだろうし)、「買い手」側は救われるわけだ。

ではこれで万事めでたしかというと、ゲーム内経済の健全性という観点からみると、必ずしもそうではないと思う。アイテム課金では、アイテムの価格は決まっている。アイテムの「生産量」は事実上プレイヤー側の需要に基づいているのだろうが、少なくとも価格は統制されている。いわば計画経済だ。計画経済がいちがいにいかんというわけではないが、一般的には、需要が多数人によって決定されるタイプの経済においては、価格を統制することは資源の有効配分につながらない可能性が高い。むろんゲーム内経済はすべてがバーチャルだが、このバーチャルな経済が現実の人間の満足、つまり効用に影響を与えるとすれば、プレイヤーの満足度に影響を与えるものとなるであろうことは予想できる。アイテムの価格付けに失敗すればゲームの人気に影響する、ということになろうか。やはり、なんらかのかたちで市場、ないし市場の機能を取り入れたほうがいいように思う。

経済活動がゲームの楽しみのひとつであるなら、それなりの「インフラ」があってもいいかもしれない。もしアイテム課金制をとるなら、アイテムの販売価格を需要に応じて変えていくしくみがとれないものか。市場が果たす役割のせめて一部でも、「政府」の役割を果たすゲーム会社が「代行」するわけだ。ローテクにやるなら、GMが販売者になるという方向もあるだろうし、システムに多少投資してNPCにその役を担わせるやり方もあろう。そこまでする必要があるのか、という声が聞こえてきそうだが、だめかなぁ。けっこう面白いと思うのだが。商売を主要な要素とするMMORPGだってあるんだし、「ゲームの面白さ」としてのゲーム内経済をもうちょっとまじめに考えてもいいのではないか、と思う。

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