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July 11, 2005

雑誌目次をみる:「月刊ナース専科」

一部に好評の「雑誌目次をみる」シリーズ。今回は「月刊ナース専科」。

誰もが必ずお世話になるナース。一部の方々に特殊な人気を博しているナースの皆さんだが、最近は女性だけでなく、男性も少なくない。この雑誌は当然ながらまじめな雑誌なので、その種の方々の興味を引く内容は、おそらくない。したがってこの記事にもそういう記載は、ない。そこんとこよろしく。

全体として、どうも女性看護士にターゲットを絞っているようにみえる。表紙も女性誌ふうだし、記事も「働く女性を応援」色が鮮明だ。これを男性看護士が書店で買うのはけっこう勇気がいるだろう(「特殊な興味」と疑われかねないし)。念のためだが、私もこの雑誌を買っていない(だって恥ずかしいじゃん)。見たのは目次のみなので、そこんとこよろしく。

ちなみに、「ナース専科」サイトのコンテンツもいろいろ充実している。大学やら病院やらの募集やら求人やらの広告も満載。9月発行の「ナース専科学生版2006秋号」の就職活動特集企画「誌上模擬面接」「誌上小論文添削」に登場してくれる方を募集中、なんていうのもある。締切は7月11日、と今日ではないか!2006年3月に看護大学・看護短大・看護学校を卒業予定の方、急げ! …とここで騒いでもしかたないか。

さて、2005年7月号の目次は次の通り。

巻頭特集 キホンから学ぶ 消毒・滅菌とケア別感染予防

・Part1 Q&Aでわかる滅菌・消毒の基礎知識
  滅菌・消毒に関する基本的な疑問を解消
・Part2  感染防止のための環境整備
  病棟での手指消毒/医療器具/病室環境/洗面台・浴室などの共有スペース/リネン/医療廃棄物
・Part3 感染防止のためのケア別ポイント
  術創ケア/口腔ケア/血管内カテーテル管理/呼吸ケア/ドレーン管理/排泄ケア

看護のキホン、なのだろう。ふっと疑問に思ったのだが、こういうことは看護学校できちんと習うものではないのだろうか?わざわざ巻頭特集に「キホンから」として載せるのはなぜ?こういう細かいところまではカリキュラムに入っていないのだろうか?基本だが実際にはなかなか覚えきれないから復習する必要があるのかも?

いや別にナースの皆さんが信用できないとかいっているのではない。むしろ逆だ。消毒・滅菌がキホン中のキホンだとして、それを繰り返し学んでいく姿勢というのは、なかなかに信頼できるではないか。ひるがえって他の分野の専門家の皆さんだが、こうやって基本的な事項を繰り返すようなことをやっているのだろうか。たとえば弁護士が民法の基本をもう一度復習する、みたいな。基本を大事にする姿勢は、どんな分野でも忘れてはならないものだと思う。

特集  メカニズムから最新治療法まで
・褥瘡ケア最前線 最新!グッズカタログつき
 [解説]褥瘡ケアの歩みと最新の治療動向

編集部セレクト 褥瘡ケアグッズ大集合 
・体圧分散グッズ 
・マットレス・クッション/ベッド/椅子・椅子用クッション/体圧測定器
・スキンケアグッズ
・皮膚保護用品/排泄用品/皮膚洗浄・清拭用品/シーツ
・食事関連グッズ
・食品/食事介助用品

「素人さん」の中で、「褥瘡」が何だかわかる人がどのくらいいるだろうか。私は読み方すら知らなかったが、「じょくそう」と読む。「kaigo-club.com」をみたら、「身体の一部分が長時間にわたり圧迫を受け、皮膚組織の循環障害が起こり、発赤、腫脹、びらん、潰瘍の形成を経て、ついには壊死に陥る状態」との解説があった。要するに、床ずれのようなものだ。床ずれケアに食品?と思ったのはまさに素人。どうも栄養不足は褥瘡の原因の1つらしい。ふうんいろいろあるものだ。

ON THE NURSING SPOT ナースの現場
・時代のニーズに応えた「日帰り手術」を支える看護
・患者さんのQOLを重視した継続ケアを目指す 患者会&セルフヘルプ・グループ探訪記
・RFM21会(脳卒中後遺症を抱える患者友の会)

シリーズ
・がん看護─患者・家族の理解と看護の役割 再発・転移
・検査値読み方トレーニング 血清尿酸値が高いとき
・患者さんの性への気遣い Part3 性的問題への理解とケア 高齢者の性的言動の理解と対応
・食看護実践法 痙性麻痺がある経管栄養ケースの摂食への取り組み
・フィジカル・アセスメント基礎レッスン 心停止リスクがある高カリウム状態のアセスメント
・病気を識る メタボリックシンドローム─生活習慣病予防の新指標
・クリニカルパス作成講座 パスの基準を院内で統一するには

これまたよくわからないのだが、現場におけるナースの皆さんは、どの程度意思決定権限があるものなのだろうか。医師との役割分担のことだ。たとえば「食看護実践法」とか「クリニカルパス作成」とかいう記事があるが、こういう内容は、ナースが決定できる内容なのか?医師が決めるべき内容なら、ナースの中だけで考えていても始まらないだろうから、こういう記事が出ているということは、けっこう自律性があるということなのだろうな。

「高齢者の性的言動」は、冗談めいた話で聞くことはあるが、実際にあるのだな。「気は心」だし、心のケアも看護の一部なわけで、突っぱねるだけでもいけないだろう。なかなか大変だと思う。

キャリアアップインタビュー
(4)目標を見つけた私の「資格・学び・出会い」

看護士の方にインタビューする記事だ。女性誌ならでは的企画。女性が資格の助けを得て、自己実現のためにより制約の少ない状況で働けるのが看護士、なのだろう。そういう観点からすると、男性看護士の増加は、必ずしも好ましいものではないのかもしれない。聞いたことがないのでわからないが。

コラム
・医療ニュースを斬る 開くか、小児心移植の道 小児救急、私たちが考えよう
・今月のPICK UP 介護保険法改正案可決へ─福祉も医療も予防の時代に
・grow up!ナース
・ただいまアメリカ留学中! 1学期(前編)
・ニイハオ! 日本で働いてます 軽トラックで登校? ……王麗華 リポート
・メディカルリポート(医療福祉チャンネル774 連動企画)
  筋肉や細胞が骨化して体が動かせなくなるFOPを難病指定に

「王麗華 リポート」が気になる。中国人看護士が日本で働いている、ということなのだろうか。看護士については、フィリピンとのFTAで、フィリピン人看護士の受け入れが昨年決まった(参考記事)。日本での資格取得が前提とはいえ、外国人看護士にどんな可能性とリスクがあるのか、関心がある。

面白そうなので、バックナンバーもひと通りみてみる。巻頭特集のみ載せる。

2005年
・6月号 チャートでみる看護トラブル解決法
・5月号 基本を知って観察力アップ!バイタルサインのここを読む
・4月号 ケアの疑問を徹底解消!ベッドサイド手技Q&A
・3月号 読める、わかるモニター心電図
・2月号 ターミナルケアQ&A
・1月号 内服与約薬のエラー防止と服薬ポイント

2004年
・12月号 回復を早めるベッドサイドアプローチ 急性期リハビリ看護
・11月号 こうして解決! 人工呼吸ケア
・10月号 今スグ使える!看護の工夫大集合
・9月号 基礎から応用までの“実践”を紹介 今すぐ役立つ褥瘡ケア
・8月号 リスクを把握し、個別対応を実践 転倒・転落を防ぐ
・7月号 最新救命法ACLSで救う! 急変対応ABCD
・6月号 手技の基本からトラブル防止まで 輸液管理のコツとワザ
・5月号 わかる、できる、呼吸ケア
・4月号 だれにも聞けない手技スタンダード&臨床の疑問50
・3月号 資格取得でステップアップ!
・2月号 臨床ナースの悩みを解消! 排泄ケアQ&A
・1月号 事故を未然に防ぐ体質をつくる 「安全な看護」実践法

2003年
・12月号 選ばれる時代に生き残る!! 患者満足度アップ大計画
・11月号 高齢者のからだ、こころ、くらし
・10月号 慢性痛のペインマネジメント
・9月号 スクイージングを完全マスターしよう!効果的に実践する呼吸理学療法
・8月号 ナースが防ぐ院内感染
・7月号 状態アセスメントから最新救命法ACLSまで もう迷わない! 急変対応A TO Z
・6月号 注射・点滴の基本完全マニュアル
・5月号 看護トラブル解決法
・4月号 写真で見る 誤投薬防止のポイント 間違いやすい薬45
・3月号 だれにも聞けない ベッドサイド手技の疑問
・2月号 ホスピスに学ぶ 心の看護
・1月号 危ないバイタルサインの読み方

2002年
・12月号 判例で学ぶ法的知識とケース別防止策 医療事故とナースの責任
・11月号 ADL向上で早期退院へ導く 看護の視点が活きる 回復期のリハビリケア
・10月号 外来を変える看護のチカラ
・9月号 院内感染対策
・8月号 患者さんとともにある看護
・7月号 看護という感情労働 ~揺さぶられる気持ち、どうしますか?
・6月号 エイジングを踏まえた高齢者ケア、してますか?
・5月号 看護の禁忌
・4月号 発展中ナースのいま、悩み、夢
・3月号 教えて! 訪問ナースの仕事
・2月号 ターミナル期の家族看護
・1月号 こうして見つける スペシャリストへの道

2001年
・12月号 だれにも聞けない ベッドサイド手技の疑問?
・11月号 高齢患者さんの排便コントロール
・10月号 キホンから教えて! 人工呼吸器ケア
・9月号 3年目から挑戦する プラスαの資格
・8月号 みんなの意見を聞いてみよう! 私って「いいナース」? 「だめナース」?
・7月号 取得の秘訣を教えます 私たちお休みとりたーい!
・6月号 なぜ迷ってしまうの? ナースの判断
・5月号 新人教育の悩みは、こうして解決 プリセプターなんて怖くない!
・4月号 「はじめての不安」解消します 配置転換はサクセスチャンス!
・3月号 実力アップの年間プランづくり 12ヵ月で差をつける!「できるナース」実現計画
・2月号 わたし、「ナースに向いてない症候群」?  
・1月号 自分にぴったりの職場を探せ! あなたと職場は相思相愛?

2000年
・12月号 21世紀へつなぐ命への挑戦 先端医療をささえる看護
・11月号 動き出している「インフォームドコンセント」に基づく医療」 記録開示で看護はどう変わる?
・10月号 介護保険開始から半年、その現状と課題 ケアマネジャーたちの現場から
・9月号 不規則勤務、重労働、対人ストレスによる影響は… 働く私たちの「体」と「心」を知りたい!
・8月号 実践から学ぶ導入・作成法とその効果  徹底活用! クリニカル・パス
・7月号 誤薬、誤注、確認もれ…原因は単純ミス もう起こさない看護事故!

「ベッドサイド手技」ということばがあちこちに出てくる。なんだかあらぬ想像をしてしまいそうだが、もちろんそういう類ではない。「誰にも聞けない」とかあるのでますます誤解しそうだが、要するに「キホン中のキホン」ということだろう。ぜひ基本を大事にしていただきたいものだ。

上にも書いたが、どうも女性専用ぽい感じが気になる。労務安全情報センターのサイトに出ている1997年当時のデータだと、女性看護婦・看護士は28,921人、女性准看護婦・准看護士は20,646人で計約4万9千人、これに対し男性看護婦・看護士は1,360人、男性准看護婦・准看護士は1,551人で計約2900人しかいない。今はもう少し増えたのかもしれないが、97年当時だと10人に1人もいないわけだ。 これでは雑誌としても男性ナースをターゲットにはしにくいだろうが、ナースとしての悩みなんかの中には、男女共通のものが多くあると思う。男性にも手にとりやすい編成を少しでもご検討いただければ。

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