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July 18, 2005

雑誌目次をみる:「医療マネジメント学会雑誌」

一部に好評の「雑誌目次をみる」シリーズ。今回は「医療マネジメント学会雑誌」。

前回の「月刊ナース専科」に引き続いて医療関係から。医療マネジメント学会なるものがあるとは今日まで知らなかった。医療もマネジメントを要する時代。「医は仁術」であるのは確かだろうが、仁術だけではだめなのだ、今は。

というわけで最新刊、第5巻第4号(2005年3月号)の目次から。…あれ?3ヶ月おきに発行だから、6月号があるはずなのに。サイトの更新が遅れているのだろうか。ここの情報はサイトからなので、ここに出ている最新号、ということでご勘弁。

会 告
・第7回医療マネジメント学会学術総会開催のお知らせ(第3報)
・医療マネジメント学会年会費改定について

まずは学会のお知らせ。といっても6月24、25日だから、もう終わっている。ついでだから、プログラムの概要も書いておく。
・基調講演「医療の質の向上を求めて-医療マネジメント学会の活動から-」
・会長講演「最良最適な医療の提供を目指して」
・特別講演I「医療制度の課題と展望」
・特別講演II(市民公開講座) 「少子高齢社会における年金と医療」
・招待講演 「心の神秘(ミステリー)」
・シンポジウムI「新人看護師の1年目の看護実践能力」
・シンポジウムII 「個人情報としての診療情報-医療の現場で、診療記録、看護記録等の問題は?」
・シンポジウムIII 「効率的な医療安全管理へのストラテジー」
・シンポジウムIV「DPC時代における医療材料マネジメント」
・特別パネルディスカッション 「わかりやすい人事が病院を変える」
・パネルディスカッションI 「新しいチーム医療:院内感染対策におけるICTの役割-アウトブレイク時の院内感染対策」
・パネルディスカッションII 「新しいチーム医療:NSTに期待される役割と実践」
・クリティカルパス総合講座I~IV
・教育講演(ランチョンセミナー)1~9

「わかりやすい人事」が目を引く。病院の人事はわかりにくいのだろうか。いやそれだったら当社の人事だって、という会社員の方、多いにちがいない。いやいや当省の人事だって、という公務員の方、多いにちがいない。いやいや本学だって、という学校教職員の方、多いにちがいない。いやいや当法人だって、という住職の方、は多いかどうか知らないが、ともあれ、人事はどこだってたいていわかりにくいのだ。いや別にそれがいいといっているのではないが、理由があいまいであるがゆえに「うちの人事はだめだ」と飲み屋でくだを巻く余地があり、それで救われている人は少なくないはずだ。

巻頭言
保険制度改訂期を迎えて

<教育講座>クリティカルパス最近の進歩(3)
・電子化クリティカルパスの記録と誤解を解く
・退院時バリアンス分析によるクリティカルパスの改訂

なんだか「クリティカルパス」が大はやりだ。それってあの「クリティカルパス」か?と思ったら、その通りだった。ここに出ているが、医療関係でもあるから、クリニカルパスともいうらしい。そもそもこの学会、クリティカルパスの研究会が発端となって生まれたようだ。上記の学会の大会でもクリティカルパスのセミナーがあったし。私はこのことばだとついフラーを思い出してしまうが、今や医療の分野でも、というわけだ。

<原 著>
・週末3泊4日糖尿病教育入院クリティカルパスと2週間入院クリティカルパスの教育、治療効果の比較検討
・WHOラダーによるがん性疼痛緩和クリティカルパス:コンピュータ上で自動展開する疼痛緩和法
・軽症脳梗塞に対するクリティカルパスの経済効果
・医育機関における医療安全管理の意識に関する検討
・医療機関におけるマーケティング活動に関するアンケート
・当院における薬剤耐性化阻止への取り組みと成果

「軽症脳梗塞に対するクリティカルパスの経済効果」かぁ。どうやって測るんだろう。そもそも「クリティカルパス」の「経済効果」って何だ?と思って要旨を見たら、同等の治療効果があって、しかも「在院日数はコントロール群で19.9日、クリティカルパス群で15.1日とクリティカルパス群で有意に短縮した。在院日数の分散もクリティカルパス群で有意に減少した。保険請求点数ではクリティカルパス群でリハビリ、入院費が減少し、注射が増加し、総点数では差が無かった。クリティカルパスの導入は有用な経済効果を示し、クリティカルパスの改善により更なる効果が期待できる」とあった。つまり何だな、保険請求点数が変わらずに在院期間が減少したわけだから、より短期間で同じ収益が挙げられるという意味で「生産性」が向上したわけだ。

あと「医療機関におけるマーケティング活動」も面白そうだな。広告はたまに見かけるが、他にどんなのがあるんだろうか。やはりここで要旨をみてみる。ちょっと長いが一部を引用すると、「調査対象は病院団体では最大である日本病院会の会員病院(2,621施設)事務長および院長とし,調査方法は無記名式郵送質問紙調査,送付は平成13年10月18日,対象は2,621(ただし各病院2通)病院,回収:1,090通であった.回収率は21%であった.マーケティング専門部署をおきたいという意図がある病院が165病院あった.投書箱については,本調査では利用に関してはさほど積極的ではない.患者のデータベース管理についても現状でも行っている病院は100病院にとどまった.マーケティング専門の部署をおきたいという変数を被説明変数,病院の基本属性を説明変数として判別分析を行ったところ,標準化された正準判別関数係数は,許可病床,一般病床でそれぞれ,1.77,-2.13であった.したがって,許可病床数が多いほどマーケティングへの関心が高いが,一般病床数が多いほど関心が低いという結果が得られ,ニーズに基づいたサービスが中心の急性期病床である一般病床は,慢性期の病床よりもマーケティングに対する関心が少ないことを示す結果が得られた.」とのこと。投書箱っていういい方がいいねなんだかのどかで。工夫の余地は大きいだろう。他産業で行われてるやり方を取り入れるだけでそうとう面白いことができそうだが。

<事例報告>
・急性骨髄性白血病のクリティカルパス導入―患者参加によるクリティカルパス作成とその効果―
・乳がん外来化学療法におけるクリティカルパス
・クリティカルパスを用いた回復期リハビリテーション病棟におけるチームアプローチ
・ファイルメーカーProによる新生児管理
・重症心身障害児(者)病棟における2003/04シーズンのインフルエンザの流行とその対応
・スポーツ医学用動画像コラボレーションシステムの開発
・「入院中心」から「外来中心」の医療へ

ここでもクリティカルパスだ。「入院中心」から「外来中心」というのもさっきのと整合的だな。スタバでもテイクアウト中心のほうが効率がいいし。

<紹   介>
・救急医療における医師勤務体制の改善と安全管理

うむこれは重要な問題だ。命に関わりそう。

お知らせ
・標準クリティカルパス作成ソフト(Ms-Excelテンプレート)のご案内
・全国医療機関からのクリティカルパスの登録と公開について-クリティカルパス・ライブラリー-
・医療マネジメント学会雑誌バックナンバー頒布のご案内

おおテンプレートがあるのか。そいつは安心だ。「クリティカルパス・ライブラリー」は、いろいろな機関がそれぞれ登録するいわばオープンソースプロジェクトだ。登録すれば一般市民でも閲覧できるようなので、ご関心の方はぜひ。

・セミナー報告
 (第3回電子カルテセミナー、第18回クリティカルパス実践セミナーin熊本)
・学会会則
・学会雑誌投稿規程
・学会雑誌投稿規程に付随する各種料金規定
・学会雑誌投稿規程チェックリスト

なんだかとってもまともで妙に安心できる。病院もいろいろがんばってるのね。つい悪徳医師とか思い浮かべがちだけど、基本的にほとんどが中小企業とか小規模自営業者だったりするわけだし。クリティカルパスは医療保険財政の健全化のためにも有益のようだし、ぜひがんばっていただきたい。

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