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July 03, 2005

「ケチャップゲート」っていうんだけど

英国で「ケチャップゲート」と呼ばれる事件が話題になっている件は、すでにいくつかのblogにもあらわれているが、6月27日のFinancial Times紙でLucy Kellawayのコラムが情報管理の観点から取り上げていた。

一応記録のために「ケチャップゲート」事件についてひとくさり。ロンドンはシティの大手法律事務所「Baker & McKenzie」の弁護士(solicitorのほう)の弁護士、Richard Phillips氏にまつわるスキャンダルだ。秘書のJennyさんがケチャップをズボンにこぼしてしまった後、Phillips氏がその弁償を求めて送ったEメールと、Jennyさんの返信がネットを駆け巡って話題となり、そのせいかどうかわからないがPhillips氏はその後ほどなくして辞任したらしい。

Eメールの文面が出ている。ホントかどうか知らないが、とりあえず面白いのやや長めながら引用。まずはPhillips氏のメール。

"Hi Jenny, I went to a dry cleaners at lunch and they said it would cost £4 to remove the ketchup stains. If you cd let me have the cash today, that wd be much appreciated."

で、Jennyさんの返信。

"I must apologise for not getting back to you straight away but due to my mother's sudden illness, death and funeral I have had more pressing issues than your £4. I apologise again for accidentally getting a few splashes of ketchup on your trousers. Obviously your financial need as a senior associate is greater than mine as a mere secretary. Having already spoken to and shown your e-mail to xxx they kindly offered to do a collection to raise the £4. I however declined their kind offer but should you feel the urgent need for the £4, it will be on my desk this afternoon. Jenny."

Jennyさんの返信は、私にはちょっときつい冗談(皮肉としてなら、なかなかいいセンスだとも思う)程度にしかみえない。辞めなきゃいけないほどのものとは思えないのだが、何か事情があるのだろうか。Lucy Kellawayも「情景を想像しにくい」といぶかっている。何か伝えられていない事情があるのかも、と。秘書がズボンにケチャップをこぼしてなどというと、何かあらぬ想像をする人もいるかもしれない。そういう雰囲気があるような論調ではなかったが、まあ、出回ったEメールだけで事情を判断するのは早計だ、というのは適切だろう。

で、Lucy Kellawayのコラムは、ちょっとした情報の漏洩がもたらす重大な結果について、驚きを隠さない。たった4ポンドを請求するメールでこんな目にあうリスクがあるなら、Eメールという手段そのものが危険ではないか、これではEメールで意味のある内容を送信することはできないというわけだ。実はこのコラムには、ここでは挙げなかったがもう1つのEメール漏洩スキャンダルが例示されている。そちらのほうはあまりにベタなケースなので、ここではあえて触れない。まあ「あの種」のやつだ。

しかしこうしたものは、Eメールそのものに起因する問題ではない。Eメールは確かに2人のやりとりや、それが世間に広まっていく際のメディアとして機能したが、それはEメールに限るわけではない。紙のメモでも、電話でも、あるいは証拠が何ひとつなくても、同じような問題は起こりうる。問題は「秘書」、というか、身近な人からの情報漏えいリスクだ。Jennyさんが悪意をもって情報を流したかどうかはわからないが、いったん外に出てしまえば、もはや当人の善意・悪意は関係ない。

私たちの国でも、そういう例は少なくない。そういえば最近も、有名人一家で家政婦が内情を暴露して、といったテレビドラマも真っ青の話があった。もっと昔には「蜂の一刺し」とかいった人がいたと思うが、権力者の権力濫用の告発みたいな公益性を帯びたものでない限り、あまりほめられたものではない。それから最近は、それほど有名でなくても、ネットでプライバシーを勝手に暴かれるケースがまま見られる。「素人さん」の場合は、被害は金銭面というよりは心理面のほうが大きいだろう。影響がより小さいといえば小さいが、より深刻といえば深刻だ。こういうのはリスク管理の問題でもあり、またリテラシーの問題でもある。誰かに責任を押し付ければすむという解決は難しいだろう。

関係ないが、「ケチャップをこぼした」という話だとすると、もしこれがアメリカなら、ケチャップ製造会社が訴えられる確率が高いだろうな、とは思う。こぼしやすい設計になっていたからだ、というかたちで。4ポンドの賠償案件で、腕利きの弁護士ならいくらとれるだろう。

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