「総選挙はてな」の市場設計について(一部改訂)
おそらく日本初の予測市場であろう「総選挙はてな」が注目を集めている。が、現時点では、主要政党の時価総額が上限にはりついており、あまりinformativeな状況とはいえない。
以前から予測市場についていろいろ考えてきた私としても、遅ればせながら、この状況について、私なりに少し考えてみた。
※2005/8/19追記
以下の文章を一部改訂した。誤解と誤りが散見されたためだ。当初版はこの記事の末尾に残しておいたので、比較したいという奇特な方、「こいつこんなにばかなこと書いてる」と笑いたい方は参照されたい。
※以下の改訂版において、8月18日に行われた価格上限の変更や政党の追加は反映されていない。特段断らない限り、「現在」という表現は当初記事の書かれた8月16日時点を意味する。
「総選挙はてな」自体の解説は、はてなによる解説ページをご覧いただくとして、8月15日午後1時時点で、各党の仮想株式の時価総額は次のようになっている。
自由民主党 | 50,000pt |
民主党 | 50,000pt |
公明党 | 48,500pt |
無所属 | 45,000pt |
日本共産党 | 34,800pt |
社会民主党 | 26,000pt |
自由連合 | 15,900pt |
平和党 | 14,900pt |
説明を読むと、各党の仮想株式はそれぞれ10,000株まで価格1ptで発行されるが、すべての党が10,000株の発行を終えており、自由価格による取引が始まっている(つまり現在の価格は時価総額÷10,000株だ)。価格の上限が5ptであることから、自民、民主の両党はすでに時価総額が上限に達しており、公明、無所属もほぼ上限近くとなっている。しかし、少なくとも自民、民主の両党に関しては、取引開始直後から、ほとんど価格が変わっていない。
最終的に仮想株式の配当は獲得議席によって決まるわけなので、今後選挙戦の進展によって価格が上下していく可能性は残っている。しかし少なくとも現時点では、この価格から有益な情報を抽出することは正直なところ難しい。やはり、現状にはなんらかの問題があることは否めない。
「総選挙はてな」の市場設計について、何かいえることはないか、考えてみた。
現在の価格は、明らかに仮想株式の供給が需要に対して少なすぎることを示している。時価総額の「理論的」な上限は、当初参加者が投資した80,000pt(1pt×10,000株×8銘柄)にはてなから与えられる加算配当100,000ptを加えた総額180,000ptであるが、現在の状況では全政党の時価総額を足し上げると285,100ptとなっており、明らかに超過需要によるバブルが生じているといわざるを得ない。一時的に価格が理論的な上限を超えることは、他の予測市場でもありうることだが、それが継続的に続くようであれば、市場メカニズムがうまく機能しているとはいえない。
バブルの原因は、供給が少ないために、各政党の支持層が株式を買い持ちしているからと思われる。そうすれば、時価総額を上限に保っておくことができるからだ。別に予測結果を操作しようという意図がなかったとしても、自らが信じる価格で仮想株式を買い、それを維持していれば、同じ結果になる。予測市場の分野では、このような参加者を「市場操縦者」(manipulator)と呼ぶが、流動性が確保されないと、そうした参加者が市場に与える影響力は大きくなる。
では、どうすればいいか。最低限必要なのは、仮想株式の供給量の増加であろう。これにはいくつかの方法が考えられる。
(1)バンドル販売する方法
「Iowa Electronic Markets」で行われているように、各政党の仮想株式を1単位ずつセットにした「バンドル」を制限なしに市場に提供することである。ではいったいいくらで販売すればいいのか。ここでは、はてなから与えられる加算配当100,000ptを除く、参加者の投資額80,000ptをベースに考える。加算配当分は、「利潤」動機により取引を活性化させるためのインセンティブであるからだ。市場に流入した80,000ptは、各党の獲得議席数に応じて配分される。まず、仮に1つの政党が衆議院480議席のすべてを獲得した場合を考えてみる。すると、投資された総額80,000ptは、その党の株式10,000株に配当されるから、配当額は1株あたり8ptだ(はてなからの加算配当は含まれていないことに注意)。1議席あたり375pt(180,000÷480)という計算になる。当然ながら、獲得議席数240議席(50%)なら1株あたり4pt。要するに、バンドルをもてば、各党の獲得議席がどうであっても、必ず1バンドルあたり8ptを獲得できる(ファイナンス専攻の方ならArrow-Debreu証券を想起いただきたい)。ここで、全銘柄について発行済株式総数が10,000株であることをふまえると、もし現在の状況をバンドル10,000単位に組成しなおせば、1バンドルあたりの価値は必ず8ptになる。これがバンドル1単位の適正な販売価格だ。参加者は、市場で売り手から仮想株式を買うほか、この「バンドル」を買うことで市場に参加することができるようにすればよい。このようにすると、価格はより自由に動くことができるようになるとともに、常に「適正価格」で株式が入手できるため、市場全体としてのバブルが生じにくくなる。このことは、どの時点においても、市場全体としてゼロバランス(正確にははてなからのポイント付与があるからその分プラスだが)を保つことができるということを意味する。また、勝者の「取り分」は、はてなからの100,000ptのほか、敗者からも得られるから、はてなの「財政」負担を増やさずに市場規模を拡大することができる。ちなみに、ある党が480議席獲得すれば1株あたり18ptを獲得できるから、獲得議席数が1議席増えるごとに、1株あたりの獲得額は0.0375pt(18÷480)ずつ増える。よって、当初の投資額(1株あたり1pt)を回収できるのは、獲得議席数が27(1÷0.0375)以上の場合だ。
(2)空売りを許容する方法
現在のシステムでは、空売りが許容されていないため、発行株式数すべてが売る気のない者に保有されている場合、価格を動かすことができなくなる。ここで空売りが許容されれば、5.00ptにはりついている価格を市場予測に基づいて動かすことができる。流動性の確保は市場操縦者対策として必須だ。実際、「Iowa Electronic Markets」でも、ある候補の支持者が価格をつり上げようと試みた際、他の参加者の売り浴びせにあって失敗したケースがある。ただし空売りを許容する場合には、一方で「破産」ないし「決済不可能」のリスクが発生する。はてなポイントにマイナス勘定はないだろうから実際のところは難しいかもしれないが、価格上限や保有ポイント数との兼ね合いで限度額を決めて許容することは技術的には可能だろう。ただし実際の予測市場では、空売りを許容しているところは少ない。それよりは、バンドル販売などの方法で新規参入を促し、それによって流動性を保つほうが弊害が少ないと思われるからだ。
(3)マーケットメーカーを使う方法
「総選挙はてな」のしくみでは、新規発行株はすべて1ptで固定され、すべてが参加者に販売される。場合によっては、「Hollywood Stcock Exchange」のように、マーケットメーカーを導入することも検討していいかもしれない。マーケットメーカーは、新規発行株の一部を購入しておき、市場の流動性を保つように自らのポジションをもって市場で売買を行う。需給を反映した売買双方の価格を提示し、売買を希望する参加者の注文を受け付けるのである。この場合、一般参加者が売買できる相手をマーケットメーカーだけとするしくみか、あるいは一般参加者同士の売買も許容するしくみかを選ぶことができる。マーケットメーカーは、ポジションをとる以上「財政」的なリスクを負う。はてながこれを行うのであれば、それははてながポイント経済の中でリスクを負うことを意味する。マーケットメーカーは生身の人間であってもよいが、コスト的にはプログラムで対応するほうが現実的だろう。このアルゴリズムをどうするか、それが予測結果にどのような影響を及ぼすかは未知数だが、「Hollywood Stock Exchange」ではそれなりにうまくいっているから、なんらか方法はあるはずだ。また、米Yahoo!の「Tech Buzz Game」でも、プログラムでマーケットメーカーを提供している。
このほか、以下の点も改善を要する点と思われる。
(4)価格上限の引き上げ
価格についても、上限の引き上げが必要と思われる。各銘柄への投資額が8銘柄合計で80,000pt、加算配当総額100,000pt、合計で180,000ptだから、価格の理論的上限は、各党10,000株ずつとして、ひとつの政党がすべての議席を獲得したときの場合の1株あたり18ptとするほうが適切であろう。価格の上限を低く抑えておくことは、大規模なバブルの発生を抑えるために有益かもしれないが、一方で価格による情報の伝播を一部阻害する効果もある。これまでの予測市場では、投機的な動きがあったとしても、市場の流動性が確保されている限りは大きな影響は与えないとする分析がみられる。市場運営者としては、制限を加えてバブルの発生そのものを抑えるよりも、市場メカニズムによってバブルが崩壊するように仕向けたほうが健全だ。正しく予測する者にとっては、別の意図をもって市場を操縦しようとする参加者やバブルに踊る参加者は「カモ」なのだ。逆に上限をあまりに高くすることも、必ずしも望ましくない。バブルを許容しやすいからだ。こうしたバブルはやがてはじけることになるので、別に当該参加者が損をするだけだが、市場から有益な情報を読み取るためには、バブルはあまりあってもらっては困る。
※2005//8/16追記
上記を若干修正。予測証券の価格がとりうる数値については、この種のものの場合、わかりやすさの点からすれば、0~100のほうがよい。議席の占有割合のパーセンテージがそのまま価格になるという設定だ。で、それを価格1単位あたり何はてなポイントといったかたちで換算するスコアリングルールを導入すればいい。いずれにせよ、現在のしくみだと、事実上議席の28%(5pt÷18pt)以上を予測できないことになってしまう。
※2005/8/19追記
補足。8月16日の修正で、価格のとりうる範囲が0~100としたのは、価格がそのまま確率をあらわすよう設計された予測市場における場合だ。現状の場合、上限は18ptが適切だと思う。
(5)時価総額ではなく価格による予測であることの明示
現在のところ、「総選挙はてな」のトップ画面には各政党の時価総額、つまり価格×株式数が表示されているが、実際には、ここでの予測は時価総額ではなく価格によって行われている。つまり、すべての銘柄が10,000株ずつ販売されたのであるから、発行株式総数は予測に影響を及ぼさず、最終配当額を決める各党の獲得議席数の全議席数に対する割合は、最終時点の1株あたりの価格と直接比例する。したがって、各党の獲得議席数の予測は各銘柄の価格で行われることを明示すべきである。(もちろん、現在のしくみでは10,000株販売されない可能性もあるしくみであるから、この表示のしかたでいいのかもしれないが、その場合、時価総額が何を示しているのかはわからなくなる。)時価総額で表示するのは、「総選挙はてな」のもととなっている「はてなアイデア」からきている。「はてなアイデア」の場合、それ自体があやふやな存在であるアイデアに対して支持者が集まるかどうかがカギとなっている。だから発行済株式数が問題となるのだ。いってみれば、これはベンチャー株のようなものであるが、「総選挙はてな」における各政党はちがう。政党はそれぞれ確立した存在であり、いってみれば基盤の安定した企業だ。その場合、支持者が集まるかどうかはあまりinformativeな情報ではない。何を予測し、それによって何を取引しているのかをできるだけ明確にしておくことが予測市場においては必要だ。
(6)ルールの明確化
一般的な予測市場では、市場運営に関するルールがもっと細かく示されている。特に問題となりうるのが、配当決定のルールであろう。コメント等でも指摘があるようだが、選挙結果である各党の獲得議席数なるものは、選挙違反による当選無効やら党のくら換えやらのため、開票結果の確定後にも変動しうる。しかし予測市場の配当額決定をいたずらに遅らせるべきではないし、また不明確なルールでは紛争の火種にもなる。したがって、「いつ時点の議席数をどの方法によって誰が判断するのか」を事前に明確にしておくことが必要である。たとえば、「9月12日日本経済新聞朝刊に記載された開票結果をもとにはてなが決定」といった具合である。こうしたルールの明示は、市場に対する参加者の信頼を得る上できわめて重要である。また、市場運営途中でルールを変更することは、一般的にはあまり好ましくない。
いずれも、今回すぐに対応、とはいかないかもしれない。ともあれ、日本で予測市場が実施されることの意義は大きい。この予測結果がどうなるかまだわからないが、世界的にもまだ揺籃期にある手法だ。今回うまくいかなかったとしても落胆する必要はない。次の機会もきっとあるものと信じる。また、今回の予測結果も最後までみてみないと判断することはできない。現状でも有益な情報を抽出できるかもしれない。
いずれにせよ、今後とも注目していきたい。
以下、当初版
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おそらく日本初の予測市場であろう「総選挙はてな」が注目を集めている。が、現時点では、主要政党の時価総額が上限にはりついており、あまりinformativeな状況とはいえない。
以前から予測市場についていろいろ考えてきた私としても、遅ればせながら、この状況について、私なりに少し考えてみた。
「総選挙はてな」自体の解説は、はてなによる解説ページをご覧いただくとして、8月15日午後1時時点で、各党の仮想株式の時価総額は次のようになっている。
自由民主党 | 50,000pt |
民主党 | 50,000pt |
公明党 | 48,500pt |
無所属 | 45,000pt |
日本共産党 | 34,800pt |
社会民主党 | 26,000pt |
自由連合 | 15,900pt |
平和党 | 14,900pt |
説明を読むと、各党の仮想株式はそれぞれ10,000株まで価格1ptで発行され、清算時の配当は最高1株あたり5ptであることから、自民、民主の両党はすでに時価総額が上限に達しており、公明、無所属もほぼ上限近くとなっている。すべての党が10,000株の発行を終えており、自由価格による取引が始まっている(つまり現在の価格は時価総額÷10,000だ)。しかし、少なくとも自民、民主の両党に関しては、取引開始直後から、ほとんど価格が変わっていない。
最終的に仮想株式の配当は獲得議席によって決まるわけなので、今後選挙戦の進展によって価格が上下していく可能性は残っている。しかし少なくとも現時点では、この価格から有益な情報を抽出することは正直なところ難しい。やはり、現状にはなんらかの問題があることは否めない。
「総選挙はてな」の市場設計について、何かいえることはないか、考えてみた。
現在の価格は、明らかに仮想株式の供給が需要に対して少なすぎることを示している。時価総額の「理論的」な上限は、配当の総額である100,000ptであるが、現在の状況では全政党の時価総額を足し上げると285,100ptとなっており、明らかに超過需要によるバブルが生じているといわざるを得ない。一時的に価格が理論的な上限を超えることは、他の予測市場でもありうることだが、それが継続的に続くようであれば、市場メカニズムがうまく機能しているとはいえない。
バブルの原因は、供給が少ないために、各政党の支持層が株式を買い持ちしているからと思われる。そうすれば、時価総額を上限に保っておくことができるからだ。別に予測結果を操作しようという意図がなかったとしても、自らが信じる価格で仮想株式を買い、それを維持していれば、同じ結果になる。予測市場の分野では、このような参加者を「市場操縦者」(manipulator)と呼ぶが、流動性が確保されないと、そうした参加者が市場に与える影響力は大きくなる。
では、どうすればいいか。最低限必要なのは、仮想株式の供給量の増加であろう。これにはいくつかの方法が考えられる。
(1)バンドル販売する方法
「Iowa Electronic Markets」で行われているように、各政党の仮想株式を1単位ずつセットにした「バンドル」を制限なしに市場に提供することである。衆議院480議席に対して総額100,000ptが与えられるのであれば、1議席あたり約2ptだ。各議席は、上記の8つの選択肢のいずれか1つによって必ず占められるから、それらを「バンドル」とすれば、必ず2ptを得ることができる。つまりこの「バンドル」の適正な価格は2ptということになる。参加者は、市場での売り手から仮想株式を買うほか、この「バンドル」を買って市場に参加することができるようにすればよい。このようにすると、価格はより自由に動くことができるようになるとともに、市場全体としてのバブルが生じにくくなる。このことは、どの時点においても、市場全体としてゼロバランス(正確にははてなからのポイント付与があるからその分プラスだが)を保つことができるということを意味する。また、勝者の「取り分」は、はてなからの100,000ptのほか、敗者からも得られるから、はてなの「財政」負担を増やさずに市場規模を拡大することができる。
(2)空売りを許容する方法
現在のシステムでは、空売りが許容されていないため、発行株式数すべてが売る気のない者に保有されている場合、価格を動かすことができなくなる。ここで空売りが許容されれば、5.00ptにはりついている価格を市場予測に基づいて動かすことができる。流動性の確保は市場操縦者対策として必須だ。実際、「Iowa Electronic Markets」でも、ある候補の支持者が価格をつり上げようと試みた際、他の参加者の売り浴びせにあって失敗したケースがある。ただし空売りを許容する場合には、一方で「破産」ないし「決済不可能」のリスクが発生する。はてなポイントにマイナス勘定はないだろうから実際のところは難しいかもしれないが、価格上限や保有ポイント数との兼ね合いで限度額を決めて許容することは技術的には可能だろう。
(3)マーケットメーカーを使う方法
「総選挙はてな」のしくみでは、新規発行株はすべて1ptで固定され、すべてが参加者に販売される。場合によっては、「Hollywood Stcock Exchange」のように、マーケットメーカーを導入することも検討していいかもしれない。マーケットメーカーは、新規発行株の一部を購入しておき、市場の流動性を保つように自らのポジションをもって市場で売買を行う。需給を反映した売買双方の価格を提示し、売買を希望する参加者の注文を受け付けるのである。この場合、一般参加者が売買できる相手をマーケットメーカーだけとするしくみか、あるいは一般参加者同士の売買も許容するしくみかを選ぶことができる。マーケットメーカーは、ポジションをとる以上「財政」的なリスクを負う。はてながこれを行うのであれば、それははてながポイント経済の中でリスクを負うことを意味する。マーケットメーカーは生身の人間であってもよいが、コスト的にはプログラムで対応するほうが現実的だろう。このアルゴリズムをどうするか、それが予測結果にどのような影響を及ぼすかは未知数だが、「Hollywood Stock Exchange」ではそれなりにうまくいっているから、なんらか方法はあるはずだ。また、米Yahoo!の「Tech Buzz Game」でも、プログラムでマーケットメーカーを提供している。
このほか、以下の点も改善を要する点と思われる。
(4)価格上限の引き上げ
価格についても、上限の引き上げが必要と思われる。配当総額100,000pt、各銘柄への投資額が8銘柄合計で80,000pt、合計で180,000ptだから、価格の理論的上限は、各党10,000株ずつとして、ひとつの政党がすべての議席を獲得したときの場合の1株あたり18ptとするほうが適切であろう。価格の上限を低く抑えておくことは、大規模なバブルの発生を抑えるために有益かもしれないが、一方で価格による情報の伝播を一部阻害する効果もある。これまでの予測市場では、投機的な動きがあったとしても、市場の流動性が確保されている限りは大きな影響は与えないとする分析がみられる。市場運営者としては、制限を加えてバブルの発生そのものを抑えるよりも、市場メカニズムによってバブルが崩壊するように仕向けたほうが健全だ。正しく予測する者にとっては、別の意図をもって市場を操縦しようとする参加者やバブルに踊る参加者は「カモ」なのだ。
※200/8/16追記
上記を若干修正。予測証券の価格がとりうる数値については、この種のものの場合、わかりやすさの点からすれば、0~100のほうがよい。議席の占有割合のパーセンテージがそのまま価格になるという設定だ。で、それを価格1単位あたり何はてなポイントといったかたちで換算するスコアリングルールを導入すればいい。いずれにせよ、現在のしくみだと、事実上議席の50%以上を予測できないことになってしまう。
(5)時価総額ではなく価格による予測であることの明示
現在のところ、「総選挙はてな」のトップ画面には各政党の時価総額、つまり価格×株式数が表示されているが、実際には、ここでの予測は時価総額ではなく価格によって行われている。つまり、すべての銘柄が10,000株ずつ販売されたのであるから、発行株式総数は予測に影響を及ぼさず、最終配当額を決める各党の獲得議席数の全議席数に対する割合は、最終時点の1株あたりの価格と直接比例する。したがって、各党の獲得議席数の予測は各銘柄の価格で行われることを明示すべきである。(もちろん、現在のしくみでは10,000株販売されない可能性もあるしくみであるから、この表示のしかたでいいのかもしれないが、その場合、時価総額が何を示しているのかはわからなくなる。)時価総額で表示するのは、「総選挙はてな」のもととなっている「はてなアイデア」からきている。「はてなアイデア」の場合、それ自体があやふやな存在であるアイデアに対して支持者が集まるかどうかがカギとなっている。だから発行済株式数が問題となるのだ。いってみれば、これはベンチャー株のようなものであるが、「総選挙はてな」における各政党はちがう。政党はそれぞれ確立した存在であり、いってみれば基盤の安定した企業だ。その場合、支持者が集まるかどうかはあまりinformativeな情報ではない。何を予測し、それによって何を取引しているのかをできるだけ明確にしておくことが予測市場においては必要だ。
(6)ルールの明確化
一般的な予測市場では、市場運営に関するルールがもっと細かく示されている。特に問題となりうるのが、配当決定のルールであろう。コメント等でも指摘があるようだが、選挙結果である各党の獲得議席数なるものは、選挙違反による当選無効やら党のくら換えやらのため、開票結果の確定後にも変動しうる。しかし予測市場の配当額決定をいたずらに遅らせるべきではないし、また不明確なルールでは紛争の火種にもなる。したがって、「いつ時点の議席数をどの方法によって誰が判断するのか」を事前に明確にしておくことが必要である。たとえば、「9月12日日本経済新聞朝刊に記載された開票結果をもとにはてなが決定」といった具合である。こうしたルールの明示は、市場に対する参加者の信頼を得る上できわめて重要である。
いずれも、今回すぐに対応、とはいかないかもしれない。ともあれ、日本で予測市場が実施されることの意義は大きい。この予測結果がどうなるかまだわからないが、世界的にもまだ揺籃期にある手法だ。今回うまくいかなかったとしても落胆する必要はない。次の機会もきっとあるものと信じる。また、今回の予測結果も最後までみてみないと判断することはできない。現状でも有益な情報を抽出できるかもしれない。
いずれにせよ、今後とも注目していきたい。
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