アメリカの銀行員ももらいすぎ、という話
銀行員といえば高給というイメージがあるが、これは洋の東西を問わないらしい。8月4日付のFinantial Timesのコラムで、「銀行員はもらいすぎ」というのがあった。
「A serious question for all the overpaid bankers」というタイトルのコラムだ。書いたのはUniv. of San DiegoのFrank Partnoy教授。昨年出版された「Infectious Greed: How Deceit and Risk Corrupted the Financial Markets」の著者だ。こうアジっている。
"The real scandal is not about excessive pay for the top executives, but about excessive pay for almost everyone else in banking . . . "
よく大企業のCEOが法外な報酬をとるといって批判されるが、銀行の場合は一般社員のほうがよほど問題だ、というわけだ。米国での話なのだろう。ここでいう「銀行」には投資銀行も含むはずだ。それだけ稼いでいるから当然という主張に対しても、他業界では通らない理屈だと一刀両断。「(banking bonuses) are purely discretionary and come from a pool based on the bank's revenues.」という指摘は、Morgan Stanley出身で内部事情もよく知っている上でのものだ。ふつうだと、社員の取り分はある程度決まっていて、株主はresidual incomeを手にする。ところが銀行では逆だ、というのだ。こういうことらしい。
". . employees decide how much shareholders will receive, and the keep the residual."
だから銀行員はもらいすぎなのだ、という主張だ。私は事情にうといので「へえ」というしかないが、そういうものなのだろうか。六本木あたりをうろついている外資系金融機関の外国人たちは不自然なくらい金回りがいいよな、ぐらいしか思い当たらないが、あれはハードシップの手当ではなかったということか。
ひるがえって日本だが、日本でも銀行員は高給とされる。もちろん事情はかなりちがう。日本の銀行の場合、最近は業績なんかによる給与の格差がけっこうあるようだが、それでも全体としては全体に均質的だ。それでも、他業界では正当化されえないような水準の給与が支払われているという点は日米で共通、ということになる。日本では、銀行員は高い倫理を求められるからとか、優れた能力をもっているからとか説明されるが、他の業界に比べて特筆すべき事情があるとは正直思えない。
日本でも米国でも、銀行業界への参入に、それほど高いハードルがあるわけではなかろう。実際、最近の日本では新規参入もある。しかし、少なくとも日本の銀行の場合、コストの中に占める人件費の割合がべらぼうに高いわけではないから、よほどのことがない限り、この領域でのコスト削減のインセンティブが働きにくいとはいえるだろう。経営が傾いたりそな銀行なんかはかなり給与水準が下がったと聞くから、やはりいっぺんは「地獄」を見ないとなかなか変わらん、ということか。
郵政民営化法案が今国会で可決されたら「郵貯銀行」ができることになる。巷では地域金融機関との競合が取りざたされていて、それはそれなりに適切な懸念ではあるわけだが、「高給」ということでいえばやはり都銀だろう。郵貯銀行ががんばってこのあたりの都銀と競合して、それが銀行業界の「価格破壊」につながったりすると面白いのだが。
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