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August 06, 2005

「貴公子」の条件

「紅茶界の貴公子」というのがいる。

熊崎俊太郎さんという。「本物の紅茶を日本中に広げるために活躍中」のティーブレンダーなのだそうだ。新聞の折込チラシにとあるホテルのものがあって、そこに「ティーブレンダー熊崎俊太郎のティーサロン」なるイベントが出ていた。

ふむ「貴公子」ね。そういえば他にもそう呼ばれる人はいるな。「貴公子」の条件ってあるんだろうか、なんてことを考えてみた。

ともあれとっかかりはこの「紅茶の貴公子」だ。写真をみると、おおなかなかのイケメンではないか。プロフィールを読んでみる。

熊崎俊太郎(くまざきしゅんたろう)プロフィール 1967年11月東京生まれ。アメージングティーブレンダー、ティー・コーディネーター、日本紅茶協会認定ティーインストラクター。本物の紅茶を日本中に広げるべく、アメージングティーを開発。同時にその造詣の深さから、カフェのメニューのコンサルティングをはじめ、紅茶に関する講演などの活動、スクールの講師も務める。最新著書は「HAPPY TEA TIME(双葉社刊)」

イベントのほうは、時間12:00-14:30で料金はお一人様\7,000。内容はランチ、紅茶のテイスティング、アメージングティーのお土産付。

「アメージングティー」がいかなるものであるかについては想像の範疇を超える。というわけで検索したら、あったあった。「貴公子」さんがブレンドした紅茶を指すらしい。なんでも「誰でもおいしい紅茶を、簡単にいつでもおいしいテイストで味わっていただけるようにつくられた」紅茶なのだそうだ。何しろ「アメージング」だ。さぞかしびっくりするほどおいしいのだろう。あるいはびっくりするほど簡単に入れられるのだろうか。サイトでみる限りは、難しい技術がいるわけでもなさそうだ。「お手軽茶道」みたいな感じなのだろうか。

おっと忘れちゃいけない。本題は「貴公子」のほうだ。三省堂「大辞林」によるとこうある。

貴公子(きこうし) (1)身分の高い家柄の若い男子。貴族の子。 (2)気品高く、風采にすぐれた男子。 「―然」

なるほど。本来は(1)なのだろうが、いまはたいていの場合(2)、ということなのだろう。では、どんな分野に「貴公子」がいるのだろうか。ちょっとグーグルで検索すると、「微笑みの貴公子(ペ・ヨンジュン)」、「ニットの貴公子(広瀬光治)」、「音速の貴公子(アイルトン・セナ)」、「バレエ界の貴公子(ウィル・ケンプ)」、「流星の貴公子(テンポイント)」「Club貴公子(ソープ)」、「筝の貴公子(松本英明)」、「邦楽界の三大貴公子(藤原道山(尺八)、東儀秀樹(雅楽)、上妻宏光(三味線))」…。なんだかあまりに雑多だが、3類型に大別できるように思う。「技(わざ)系」、「体(からだ)系」、「なんちゃって系」だ。ここでは、「紅茶界の貴公子」に敬意を表して、「技系」の貴公子について考えてみる。

友人の力を借りて考えてみた。このタイプの貴公子の条件としては、次のようなものが考えられる。

(1)イケメンであること
これは辞書の定義(2)から自明だろう。いかに生まれがよくとも、顔が悪ければ貴公子にはなれない。厳しい世界だな。

(2)筋肉ムキムキではないこと
筋肉隆々の人は、なんだか知らんが直感的にちがうように思う。なんでだろう?貴公子は力仕事はしないということだろうか。「ボディビルの貴公子」「重量挙げの貴公子」なんてのは難しいわけだ。

(3)若々しいこと
若いこと、ではない。みたところ、年齢を重ねた「貴公子」はたくさんいるようだし。まあかつては本当に若かったのだし、よしとしようではないか。しかししょぼくれてしまってはいけない。あくまでハリのある肌、しなやかな感性を感じさせる物腰が必要だ。貴公子の「定年」はどのあたりなのだろう?比較的年配と思われる「ニットの貴公子」広瀬光治氏は1955年生まれ。50歳になるというわけだ。つまり50歳までは大丈夫。では60歳は?うーん、やはり赤いチャンチャンコを着る歳で「貴公子」は難しい気がする。ということで、「貴公子」の定年は60歳と勝手に決定!

(4)ガテン系の仕事ではないこと
「紅茶界の貴公子」熊崎俊太郎は、ティーブレンダーであって、茶園の人ではない。「ニットの貴公子」広瀬光治」も、ニットを編む人であって、羊を育てる人ではない。ガテン系の場合は「名人」のほうがしっくりくる。茶づくりの名人、なんてのはいそうだな。

(5)「サーバント」ではなく「先生」
技系の貴公子は女性が知らない世界を教えてくれる「先生」であって、実際の年齢はともあれ、女性にとって目上を感じさせるものでなければならない。たとえどんなイケメンでも、レストランのウェイターに「貴公子」はいない。

(6)ゲイでないこと
「貴公子」は女性にとってあこがれの存在でなければならない。ゲイは精神的には女性に近いところがあり、女性としては「目上」ではなく対等に感じられる由。だからゲイは貴公子になれないのだ、と。

(7)でもフェミニンな要素をもっていること
しかし同時に、「貴公子」と呼ばれるためには、ゲイではないにせよ、どこかフェミニンな要素を感じさせるものがある必要がある。上記の「筋肉ムキムキではないこと」「ガテン系の仕事ではないこと」と通じるものがあるが、おそらくは、たくさんの女性の中にぽつんと一人だけいても違和感がないこと、ということになるのではないか。

ふむいろいろあるものだ。ここまでわかったところで、ちょっと妄想が走った。「こんな貴公子はどうか・こんな貴公子はイヤだ」シリーズ。

こんな貴公子はどうか
・ケーキの貴公子(食べるほう。作るのは名人)
・ハーブの貴公子(個人的には気色悪いが)
・将棋の貴公子(羽生善治名人はちょっと童顔だし)
・医学界の貴公子(これはモテそう)
・短歌の貴公子

イケメン男性の皆さん、この分野に精通すれば、あなたも貴公子になれるかもしれない!

こんな貴公子はイヤだ
・エステの貴公子(さすがに気色悪い)
・盆栽の貴公子(いやこれはちょっと)
・菊人形の貴公子(これもないよな)
・南京玉すだれの貴公子(!)
・デパ地下の貴公子(なんだそりゃ)

…あまりムキになって考えるのもいかがなものかとわれながら思う。まあ今の世の中、消費は女性が牽引する。さらにそれを牽引するのがこうした「貴公子」の皆さんだ。ぜひこれからもがんばっていただきたい。

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Comments

おもしろかったです。
そうそう、「短歌の貴公子」ではありませんが、
「カラン卿」を名乗るこの方が「っぽい」と思われます。

黒瀬珂瀾 http://www.kurosekaran.com/

Posted by: ドリ | August 06, 2005 03:08 PM

ドリさん、コメントありがとうございます。
見ました見ました>カラン卿
確かに「貴公子」っぽいですね。でも見ていると、どうもヲタっぽい趣味という印象も受けます。
ヲタは貴公子になれるのか?これは見落としていたポイントです。しばし検討させてください。

Posted by: 山口 浩 | August 06, 2005 04:37 PM

「○○界の貴公子」のように、「界」を付けられる言葉はたいてい貴公子っぽくできる気がしました。

Posted by: ryuichi | August 09, 2005 12:50 PM

ryuichiさん、コメントありがとうございます。
なるほど「○○界」ですか。そうかもしれませんね。「南京玉すだれ界」とかはいいませんからね。では「界」をつけられるのはどんなものなのか?というのが次の課題でしょうか。

Posted by: 山口 浩 | August 09, 2005 02:41 PM

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