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August 18, 2005

雑誌目次をよむ:「Where to Retire」

一部に好評の「雑誌目次をみる」シリーズ。今回は「Where to Retire」。

アメリカの雑誌だ。日本では売られていないと思う。リタイアした高齢者がどこに住むかについての情報をテーマとしている。この国では、リタイアした人たちが都市に残りたがったり故郷に帰りたがったりするとは必ずしも限らないらしい。「どこに住むか」をいろいろと考えるわけだ。

広告ページがたくさん入っているが、多くはリタイアした人たちのための住宅団地(「retirement community」と表現するらしい)の広告で、写真をみたところニュータウンといった風情だ。娯楽施設なんかも備えている。こういうのをディベロッパーがしかけるらしい。日本だと有料老人ホームみたいな感じなんだろうか。スケールがでかいね。

というわけで、「Where to Retire」2005年8月号の目次は次の通り。

◎8 Scenic Towns for Outdoor Lifestyles
リタイア後にアウトドア三昧したい人のためのベストな街選び、というわけだ。それにしてもこの国のアクティブ志向はほとんど宗教めいている。とにかくアクティブでなければ、といった感じ。選ばれた8つの場所は次の通り。

・Kalispell, Montana
・Jackson, Wyoming
・Monterey Peninsula, California
・Brunswick and the Gloden Isles, Georgia
・St. George, Utah
・Sunriver, Oregon
・Brevard, North Carolina
・Hot Springs, Arkansas

いずれも人口はあまり多くない小さな街だ。一番上にあるKalispellの場合、人口は16,500人。夏の最高気温は27度、冬の最低気温は零下10度ぐらい。Glacier National Parkのすぐ南に位置する。ありとあらゆるスポーツが楽しめる環境だそうな。日本だと避暑地の気候ってところか。一戸建て住宅の価格は20万ドルぐらいらしい。


◎Cruising for Retirement
リタイア後は船上で暮らす、というスタイルはとても豪勢にみえるが、必ずしもそうではないかも、という記事。クルーズ船に住むコストは月間2,000~5,000ドルぐらいだが、ケア付住宅に住むと月間2,400ドルというのが全国平均だそうだから、それとほぼ同等のレベルだ、ということらしい。確かに魅力的ではあるが、安いほうの船室はぜったい狭いぞ。家具とか車とかを持ち込めるわけでもなし、さてどんなものだろうか。旅行としてならありうるんだろうけど。日本でも退職者層にクルーズが人気らしいし。記事では、今後この分野は伸びる、と書いてある。


◎What Singles Want in an Active-Adult Community
一人暮らしの高齢者がよりアクティブに暮らすにはどんなコミュニティを選べば、という記事。また「アクティブ」だ。アクティブ教だねまったく。いや別にアクティブがいかんというのではないのだが。掲載されてる写真も走ったり山に登ったりゴルフやったりとめちゃくちゃ健康そう。


◎Who is Winning the Race to Attract Retirees?
この記事は面白い。さまざまな州が、リタイアした高齢者の移住先として名乗りをあげ、競争を繰り広げているという話だ。かつてはフロリダみたいなところに集中する傾向があり、それは全体としては変わっていないが、だんだん地域が拡散する傾向にある、と書かれている。カリフォルニアなんかはもともと多くのアメリカ人がリタイア後に移り住んでいたが、今は住宅価格高騰や地震なんかのために減ってきていて、代わりに外国人がどんどん移住してきている。ウェストバージニア、ミシシッピ、ケンタッキー、アラバマ、ルイジアナ、アーカンソー、フロリダなどは、州レベルでの誘致プログラムを設定している。どうも、リタイアした高齢者は、各州にとって魅力的な存在らしい。州としてどういう計算になるのか、調べてみたら面白そう。記事では「Retirement industry」という表現が目に付いた。こういういいかたをするんだな。で、「Retirement Migration in America」という本から、1995~2000年の各州の高齢者(60歳以上)の入りと出によるネット誘致者数ランキングが引用されていたので以下に掲げておく。最下位がニューヨークというのはまあ納得。そのすぐ上がカリフォルニアというのは、入りも多いが出も多いということ。これはアメリカ人の数字で、これ以外に外国人の流入があるというわけだ。


ランキング州名流入数流出数正味増減数
1フロリダ401,052171,300229,752
2アリゾナ134,18352,40381,780
3ノースカロライナ77,72042,73134,989
4ネバダ62,15527,24334,912
5サウスカロライナ47,69825,22922,469
6テキサス101,44679,93821,508
7ジョージア63,12041,98521,135
8テネシー50,03631,85318,183
9アラバマ31,15523,3077,848
10アーカンソー29,87623,1386,738
11ニューメキシコ24,89318,5036,390
12オレゴン40,77835,9054,873
13ミシシッピ19,43314,9514,482
14デラウェア12,1407,7864,354
15ミズーリ40,36336,6513,712
16オクラホマ26,92323,5123,411
17モンタナ10,8968,0482,848
18アイダホ15,31312,5532,760
19バージニア53,77651,4562,320
20ユタ15,30013,2132,087
21メイン13,11211,3371,775
22コロラド40,32038,5461,774
23ワシントン47,19246,0241,168
24ニューハンプシャー15,41714,675742
25バーモント6,5916,345246
26ワイオミング6,1816,310-129
27ウェストバージニア13,68813,880-192
28サウスダコタ5,5815,862-281
29ハワイ8,5349,192-658
30ケンタッキー24,64525,379-734
31ロードアイランド7,3738,729-1,356
32ノースダコタ3,4095,133-1,724
33ネブラスカ10,01812,016-1,998
34カンサス18,24620,783-2,537
35アラスカ3,8287,069-3,241
36ルイジアナ17,41321,286-3,873
37ウィスコンシン26,82733,209-6,382
38ワシントンDC4,53811,192-6,654
39アイオワ14,64222,669-8,027
40インディアナ33,13544,045-10,910
41ミネソタ19,32530,502-11,177
42メリーランド33,95746,006-12,049
43コネチカット21,20937,064-15,855
44マサチューセッツ30,27949,711-19,432
45ペンシルバニア60,08283,055-22,973
46オハイオ44,80572,852-28,047
47ミシガン35,78369,932-34,149
48ニュージャージー54,42597,315-42,891
49イリノイ40,697106,106-65,409
50カリフォルニア127,693194,085-66,392
51ニューヨーク49,640204,826-155,186

Charles F. Longino Jr, (2005). Retirement Migration in America. Vacation Pubns Inc. forthcoming.

◎America's 100 Best Master-Planned Communities
よく計画されたコミュニティの紹介。全米さまざまな州のさまざまな場所が紹介されている。

とにかく写真の多い雑誌で、楽しそうな写真がさまざま、これでもかといった感じで載っている。日本と一番ちがうのは家とか庭とかがいちいち広いことだろう。日本だと高齢者住宅っていうと集合住宅しか考えられないが、アメリカだと平気で一戸建てがある。このあたりは正直うらやましい。

ふうんアメリカのリタイアした人というのはいい生活をしてるんだな、とか思いかけてしまったが、ちょっと待て。すべての人がこんな生活をできているはずがない。住宅は日本より安いかもしれないが、それだけで「夢のような暮らし」にはならないだろう。

そう考えたあたりで、待てよ日本でもこんな感じの雑誌を見たことがあるぞ、と思い出した。記憶をたどると、そうだバブル期だ。バブル期にはよく、雑誌なんかでこういう感じでリゾート物件や高級有料老人ホームの特集号があった。ぜいたくな写真を満載して、これでもかこれでもかさあ買えさあ買えとかきたてる論調の雑誌類が。この雑誌がいつごろ創刊されたのか知らないが、少なくともこの号は、バブル期に日本でよくみられた不動産関連雑誌によく似た「背伸び」感があるような気がする。

とはいえ、生まれた土地、暮らした土地にこだわらず、リタイア後の居住地をさがす身軽さは、それほど悪くないようにも思える。実際には「halfbacks」といって元の家と新しく移り住んだ先とを行ったり来たりする生活を送る人々も少なくないらしいから、どちらかというとセカンドハウス的な意味合いもあるのかもしれない。そういえば日本でも「(財)ロングステイ財団」なんていうのがあったな。あ、セカンドハウスもバブル期にはやったよなぁ。

自分自身がリタイアしたときのことは、正直いってまだあまりよく想像できないが、早めに考えておいたほうがいいのは確かだ。そういえば「BusinessWeek」も毎年恒例のリタイアメント特集号を出していた。夏の昼下がりは、こういう雑誌でも眺めて将来の悠々自適に思いをはせるか、暗い将来を見越して背筋を涼しくするか。どちらにせよ、将来を考えるのにはいいタイミングかもしれない。

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Comments

大変面白い雑誌ですね.わたしもそろそろこういう雑誌を読み始めたいなと思っています.

私が以前NHKの番組で見て仰天したのは,トレーラーハウスで暮らす人たちの数の多さです.全米で数10万人以上.おそらく100万人のオーダーです.小学校に通う子どもを抱えた夫婦がトレーラーハウスで全米を巡りながら暮らしたり,リタイヤした夫婦がこれまた全米を旅しながら楽しんでいます.彼らが暮らしやすいように,アメリカの町外れにはたいていトレーラーパークがあり,上下水道の接続が出来たり,その他の施設が整っています.しかも,この100万人規模の不定形のコミュニティは,自ら組合を作り,移動生活につき物のさまざまなリスクをヘッジするための保険を開発して役立てています.要介護のメンバーのためのケアハウスのようなものまでありました.

西部開拓時代からNomadたるアメリカという国の面目躍如たる一面です.これは日本では到底まねが出来ませんね.こういうリタイヤ生活はいかがでしょうか?

Posted by: 俊(とし) | August 20, 2005 08:33 AM

俊さん、コメントありがとうございます。
トレーラーハウスですか!なるほど!この雑誌にはまったく出てませんでした。たぶんこの雑誌は不動産開発業界に関係しているのでしょう。トレーラーハウスっていうのは、安いからなんでしょうか、それとも移動できるのが魅力だからなんでしょうか。うーんどうだろう。うらやましいような、そうでもないような。

Posted by: 山口 浩 | August 21, 2005 10:37 PM

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