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ゲーム内経済学:(1)経済の要素

ゲーム内経済学、というのを考えてみようと思う。ゲームデザインの中で「経済」というものをどう設計するかは重要なテーマではないかという問題意識と、ゲームの中の経済を考えることが、現実の経済を考えるうえでも有用ではないかという直感に基づいて。

そのための下準備として、思いつきを書いてみる。できればシリーズ化したいが、まずは始めてみないと。固まった文章ではないのであらかじめ念のため。

ゲームデザイン、特にMMORPGにおける経済の要素については、Bartleの「Designing Virtual Worlds」あたりでもけっこうスペースを割いて考察していたりするが、それにとらわれず、とにかく今自分が思いついたことだけをメモする。ゲームデザインという視点に特化しているBartleよりはもう少し幅広い文脈で考えたいし、もう少し現実の経済ないし経済学とのつながりを意識したいからだ。

「ゲーム」についての定義は省略する。その筋の文献でいろいろと定義されているだろう。たいていの場合、それらの文献における広義の「ゲーム」をイメージしているといっていい。中にはもっと狭く、デジタルゲームだけに限る場合もあるかもしれないが、今のところは広めに。

最近のMMORPGなんかでは、「経済」的要素はほぼ必須といっていい。独自の通貨システムを持ち、アイテムやサービスがプレイヤー間で売買されるとなれば、それはもう立派な経済だ。また、1人とか数人とかでやるようなゲームでも、なんらかのかたちで「経済」的な判断を迫るしくみが導入されていることは少なくないし、経済を下記のように広めに解釈するなら、通貨がなくても、あるいはデジタルゲームでなくても、「経済」は成立しうる。

経済学を意味するeconomicsはもともと「家政の学」を意味するギリシャ語からきている。限られた資源をどのように配分して最大の満足をめざすか、というものだ。現代の経済学においては、個人レベルの効用最大化としてとらえたり、国など大きなレベルでとらえたりする。

こういう一般的な経済学は、考えるべき対象がそれなりにはっきりしている。しかしゲーム内経済学では、何を対象としているのかをまず考えておかなければならない。

まずは、ゲーム内世界で「経済」を成立させるためにはどんな要素が必要かについて考えてみる。

1. 経済の根源的三要素

大上段に構えたが、この文脈で考える、程度の意味。「人」、「資源」、「基準」の3つと考えてみた。

1.1 人
とにかく「人」がいないと経済は成り立たない。人が何かの行為や意思決定を行い、結果も最終的には人に帰属する。「人」の要素がないゲーム、たとえば、みんなでいっしょに同じことをすることのみによって成り立っているようなゲームにおいては、経済は成り立たない。

では、「人」という要素は、どんな性質をもっているべきだろうか。

1.1.1 他人との区別
人は、別の人と区別されなければならない。意思決定し、その結果を帰属させる主体だ。まさに「我思ふ、故に我在り」ってとこだ。極端な例だが、「おしくらまんじゅう」というゲームにおいて、他から区別される「人」の要素はない。

1.1.2 同一性
自分というものがあるとしたら、自分は自分であり続けなければならない。そのためには、ゲーム世界において自分が何者であるかについての情報が引き継がれていなければならない。「ポケットモンスター」において、主人公は固有の名前とIDを持ち、メモリを消去しない限り、ゲームを行うたびに自分の記録がよみがえるから、自分としての同一性は保たれている。しかし「スペースインベーダー」においては、100円を入れるたびに「ゲーム内の自分」が新たに作られるわけで、さっきの「自分」と今の「自分」は同じではない。つまり同一性が保たれないということだ。

1.1.3 意思決定能力
自分は、自分の意思によってゲーム世界になんらかの影響を与えられなければならない。ただムービーを眺めているようなゲームでは、経済は成立しないし、たとえ選択ができたとしても、それがゲームの結果や、ゲームからプレイヤーが受ける効用になんらかの影響を与えない限り、プレイヤーが選択をするインセンティブがないだろう。

1.2 資源
経済は資源の配分を考えるものだから、配分すべき資源が存在しないゲームにおいては、経済は成り立たない。たとえば「にらめっこ」を考えると、にらめっこは明らかにゲームだが、その勝負およびその結果自体によってなんらかの資源が配分されることはないため、ここでは経済は成立しない。ただし、にらめっこの勝敗によってなんらかの資源を配分するようなルールがあったとすれば、そこには経済が成立する。

では、「資源」という要素はどんな性質をもっているべきだろうか。

1.2.1 希少性
資源は希少、つまり不足していなければならない。それがプレイヤーの行動や選択を促すものであり、経済活動の根源をなすからだ。すべての人が必要なすべての量が何の造作もなしに手に入る状況では経済は成り立たない。

1.2.2 ルールに影響
その資源は、そのゲームに影響力を及ぼすものでなければならない。たとえばゲームのクリアに必要なアイテムであったり、より活動をラクにするための道具であったり。中には、たとえば「ポケットモンスター」の中で主人公の家に置く調度品の類のように、ゲームの進行自体にはまったく役に立たないものであるものもあるが、それとてプレイヤーの楽しみの源になるという意味で、ゲームに影響力がある。

1.2.3 利用可能
その資源は、ゲームにおいてプレイヤーにとってなんらかの意味で利用可能でなければならない。「利用」は広い意味で、「有用」である必要性は必ずしもない。「利用」の典型的な例は、所有、使用であろうか。所有というのは、自分の財産として所有できるアイテムなどだ。所有していなくても、使用できる場合はある。たとえばたくさんモンスターの現れる特定の場所をあるプレイヤーなりプレイヤーのグループが独占してしまうことがあるが、いい悪いは別として、所有できない土地を使用している例ではある。逆に、ただ単に落ちていて道路とそうでないところを区分するためだけの石なんてものがあるとすれば(たいていの場合そういうものは動かせない)、それは利用可能とはいえないだろう。

1.3 基準
ゲームはなんらかの競争を行うものであり、そこにはなんらかの基準、ないしルールが必要だ。基準とは、ゲームにおいてどんな状態がプレイヤーのめざすべきものであるかを示すもの、ルールはその際にやっていいこと、わるいことに関する決め事を意味する。

では、「基準」という要素はどんな性質を持っているべきだろうか。

1.3.1 順位付け・定量化できること
ゲームはなんらかの意味で競争とか挑戦とかいった要素を含むのだから、その結果がきちんとわかることは最低限必要だろう。たとえば「アイテムを持つ」という行為があるとすれば、持っているのかいないのか、はっきりしている必要がある。

1.3.2 知られていること
あまりに当たり前だが、基準が基準として機能するためには、それがゲーム内世界において知られていなければならない。誰も知らないルールは、誰の行動にも影響を与えない。

1.3.3 人、意思決定、資源にとって意味のある結果をもたらすこと
ここで考えるのはゲーム内経済を考えるための「基準」だから、ゲームにおけるプレイヤーやその意思決定、ゲーム内の資源に関係する基準でないと意味がない。たとえばゲーム内世界に昼と夜があって、それらが交互に訪れるというルールがあったとしても、それによってプレイヤーのとるべき行動がちがわなければプレイヤーに影響を与えない。


今日はこのへんにしておく。なんだかダブった要素もあるような気がするし、どこかで矛盾したりもしているかもしれないが、まあとりあえずとっかかりとして。抽象的なことを考えるのは頭が疲れる。

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» [ゲーム]ゲーム内経済学 [某青年科学史家の暴言録]
http://www.h-yamaguchi.net/2005/09/1_f536.html 山口浩氏がブログで、ゲーム内経済についてのエントリーのシリーズを始めた。かなり理論的な考察で、ゲーム行為のかなりの部分に関係する話になりそう。大いに期待。 MMORPGの経済について経済学的研究については、BartleよりもEdward Castronovaの研究が標準的であると思う: http://mypage.iu.edu/~castro/home.html といっても、私は彼の研究を読んだわけではなく... [Read More]

Tracked on September 26, 2005 at 07:55 AM

» [ゲーム] ゲーム内経済学 [みだれうち読書の〜と]
[http://d.hatena.ne.jp/kanryo/20050925:title=霞ヶ関官僚日記]経由で[http://www.h-yamaguchi.net/2005/09/1_f536.html:title]を読む。「大航海時代(コーエー)における産物の価格の上下はプレイヤーとNPCが市場で売買する量だけに依存しているような気がするが、市民の需要とか貨幣流通量とか、そういう変数を考慮に入れるとどうなるのかな。現状のシステムは金地金の売買についてなんか納得の行かないところがあった気がするな... [Read More]

Tracked on September 26, 2005 at 06:22 PM

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