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ゲームは3時間以内に、という話

私はこの話を、最近行われた台湾のゲーム会社の方の講演で聞いたのだが、今みたらすでに4gamer.netとかあちこちで流れていた。自分の情報感度の低さにやんなっちゃうのだが、それはさておき。

「この話」というのは、中国政府が新たに導入するゲームの時間規制の話だ。

この規制は、中国政府が若者のオンラインゲーム中毒を防ぐため、オンラインゲームに3時間以上連続してプレイしにくくなるプログラムを導入するというもの。所轄は当然ながら新聞出版総署。ここがゲームの選定もやる。「青少年の健全育成」のため、日夜がんばっているわけだ。

規制は、MMORPGなどのオンラインゲームを連続3時間以上やるとキャラクターのレベルが一時的に半分程度にまで下げられ、アイテムなどの発見率も抑制されるというものらしい。連続5時間以上になると、キャラクターのレベルがそのゲームでの最低レベルにまで下げられてしまうという。これを避けるためには、1回の時間を3時間以内に抑え、かつ次に遊ぶまで最低5時間(またはシステムの再起動まで)あけなければならないとのこと。「システムの再起動」ってことは、クライアントPC側で制御するのかな。再起動すればOKならみんなそうすると思うのだが、そのへんはよくわからない。正式な規制開始時期は決まっていないようだが、2005年10月からテスト開始予定とのこと。当面予定されているゲームは次の11タイトル。

「Lineage II」
「World of Warcraft」
「MU」
「The Legend of Mir II」
「The World of Legend」
「Westward Journey Online」
「Fantasy Westward Journey Online」
「JX Online」
「First Myth Online」
「The Legend of Mir 3G」
「Blade Online」

以下、つらつら思ったことを、思った順に3つほどメモ。

まずは、「そこまでやるか中国政府」と「中国政府ならやりかねない」の2つ。国策としてゲームを振興する以上、アディクション対策との整合性はもっておきたいだろう。しかしそれにしても「大胆」だ。1回あたりのオンラインゲームのプレイ時間が3時間以内なら「健康的」、3~5時間は「疲労度が高い」、5時間以上を「不健康」であると政府が判断してくださった。で、親切にも青少年が「悪の道」に落ちず「健全」にゲームを楽しみ、もって国内ゲーム産業が発展できるようにご指導いただいたというありがたいお話だ。

次に、「こういうことをやっていたら中国のゲーム産業は中長期的に伸びないのではないか」と。もちろん、これによって中国製ゲームの市場競争力がすぐに落ちるということはないのではないかと思う。他の国のゲームだって中国で売りたければ対応するのだろうし。ただ、こういったかたちで政府がゲームのしくみ自体に直接介入するようなことがあると、ゲーム会社は萎縮して新しい試みをやりにくくなる。それに、この規制は、中国で人気の高い従来型のMMORPG、プレイヤーがモンスターを倒してアイテムをとったりレベルを上げたりしていくスタイルを前提としたもののようだが、ゲームはそれだけではない。このような規制は、「許容されるゲーム」を型にはめてしまうような気がする。ゲーム会社が「これなら政府のお墨付きが得られる」とばかりに従来型のゲームばかりを作っていくようなことになったらどうだろう?当面は市場のパイ全体が拡大しているからいいが、やがてみんな飽きてゲームから離れていき、売り上げもそのうち頭打ちになってしまうかもしれない。さらにいうと、どこの国でもそうだと思うが、ゲーム業界には「死ぬほどゲームが好き」だった人たち、何時間でも遊んでいた人たちがたくさんいる。そういう人たちが「自分でゲームを作りたい」と願うようになり、クリエーターに育っていったケースが多いと聞く。1日3時間で我慢できる「健全」ないい子ちゃんたちばかりになったら、クリエーターは生まれないとはいわないが、生まれにくくなるかもしれない。

最後に、「力のあるクリエーターにはチャンスかも」と。こういう理不尽な制限は、力のあるクリエーターにとっては、むしろ新しい面白さの発見につながるかもしれない。そもそもゲームのルールなんて、どれも恣意的なものだ。それがゲームの世界観なら、かなり理不尽なものだってプレイヤーは受け入れる。1日3時間までという制限を逆手にとって、それを面白さの根源にするようなゲームとか、プレイ時間の長さに依存しないゲームとかが生まれるかもしれない。他の国の政府はこんな大胆な政策をとったりはしないだろうが、アディクションはどの国でも問題になりうるし、実際多くの国で問題になっている。今のところはそのあたりをある意味うやむやにして、「長時間遊ばないようにしましょう」なんて呼びかけをしたりしてお茶を濁しているわけだが、中国のようにはっきりとした規制が行われれば、正面から対応せざるを得ない。もし中国のゲームクリエーターたちが(あるいは中国で事業を展開する他国のゲームのクリエーターたちが)新しいゲームのかたちを見つけられれば、世界に受け入れられる可能性はあると思う。

2番目と3番目のケースは矛盾しそうにもみえる。規制は萎縮を呼ぶのか、新しい創造性を呼び起こすのか。分かれ目はどこだろう?ひとつはゲームクリエーターの才能だ。新しいものを提案できるかどうか。もうひとつは、規制が「人治」でなく「法治」のルールで運用されるかどうか。「人」がものごとを決めるスタイルだと、どうしても予防的な発想から幅広く規制しようとするから、萎縮につながりやすいのではないか。逆に、ルールが明確になっていれば、それを利用して、面白さを追求していくことができる。さて、中国のケースはどっちなのだろうか?

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» ゲーム3時間以内 [たなかつどっとこむ。]
中国でびっくり話。 http://www.h-yamaguchi.net/2005/09/3_98fd.html ゲーム中毒を防止するために 一日のゲーム時間を3時間に法律で制限するみたい。 こんなこと日本じゃまったくできないことだよね。 ほんとに。 いつも法律に対して思うのは 新しい法律ができると それにともない 業界に影響がでて その後、その法律がビジネスチャンスになることが多い。 その新しい法律をただ いやだー ってとらえるのではなくて なんらかのチャンスだと捉えることが大切。 今回の中国のゲ... [Read More]

Tracked on September 20, 2005 at 12:44 PM

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