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September 28, 2005

マイクロソフトがシリアスゲーム研究に資金を出すという話

大ニュースみたいなタイトルをつけてみたが、実はまったく新しい話というわけではない。Technology Reviewの「Gaming Makes the Grade」から。

シリアスゲームについてはこのサイトでも何度か取り上げているが、ゲームを遊び以外の目的に利用するものだ。ここでの話は教育への利用。それにマイクロソフトが金を出すというのが記事の内容だ。

新しくないというのもいってみれば当たり前で、教育への利用はシリアスゲームの分野では中心領域の1つといっていいだろう。各地の大学において、 科学、数学、工学や人文・社会科学といったさまざまな分野の教育へのゲームの利用について、さまざまな取り組みが行われている。マイクロソフトも、MITと共同で、これまでにも教育目的のゲーム研究開発プロジェクトをやってきた。「Games-To-Teach Project」というこのプログラムは2001年から行われている。

では今回の話の何が新しいかというと、ゲームを利用した教育を、そのゲーム開発に直結するコンピュータサイエンス教育で行おうという点だ。最近アメリカの大学では、コンピュータ関連業界の海外アウトソーシングの普及や留学生受け入れ政策の変化なんかのために、コンピュータサイエンスを専攻する学生は、80年代と比べて50%近く減っている由。それはこの分野の今後の発展にとって深刻な問題だというのが一般的な認識となっている。で、マイクロソフトも同様に考えていて、その解決のために、大学がゲームを利用した新たなコンピュータサイエンスのカリキュラムを構築するための資金を出そうというわけだ。6つの大学を対象として、合計48万ドル。研究成果はCurriculum Repositoryで無料公開されるらしい。

記事の話はここまで。話を教育におけるシリアスゲーム一般に広げる。

人間が「homo ludens」であるなら、教育のほとんどの分野において、人間の本性に根ざしたゲームというアプローチは有効だろう。実際、これまでの教育においても、随所になんらかの意味での「ゲーム」的な要素が取り入れられている。デジタルゲームももちろんゲームの一種であるから、新しく利用可能となったこのツールを教育目的に使うことは、本来なんらおかしくはない。

デジタルゲームについては、これまで「ゲーム脳」やら「犯罪を誘発」やら、有害娯楽みたいな取り上げ方をする向きが少なくなかった。そういうのを見ていると、私が子どものころ、テレビについて似たようなことが言われていたのを思い出す。宮崎勤の事件のときはビデオが批判の対象になった。もちろんそうした批判の中にはそれなりの根拠を持つものもあるのだろうが、多くはそうではないように思う。要するに、その時点ではやっているものが槍玉にあげられているという要素のほうが強いのではないか。

小学生のころ、クラスでダントツに長い時間テレビを見ていた典型的「テレビっ子」の私だが、曲がりなりにも博士課程を修了する程度にはなれた。テレビを見なかったらもっと頭がよくなっていたのだろうか?そんなことはない。テレビは私にとって教師であり、反面教師であり、また生きた教材でもあった。ゲームだってきっとそうだ。歴史を舞台にしたゲームで歴史への関心や知識を養い、攻略本で漢字を覚える。オンラインゲームでは協力や集団行動を学ぶことができる。批判する人は、「ポケットモンスター」のあるバージョンには点字が読めないとクリアできない箇所があったのを知っているのか。

乱暴な「ゲーム有害論」に対抗するためには、本当に悪影響があるのかどうかきちんと検証するのも必要だが、一方でいい影響もあるということをどんどん打ち出していくのもいいと思う。その意味でシリアスゲームの研究や普及は、ゲーム業界全体にとって利益のあるもののはずだ。

日本のゲーム会社も、ゲームの教育目的への利用について、もっと力を入れて取り組んでいったらいいと思う。もちろん大学もだ。産学共同で取り組むべき領域の1つではないだろうか。

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» 企業のシリアスゲーム投資 [Serious Games Japan]
「マイクロソフトがシリアスゲームに資金提供」という情報を 山口浩さんのブログからトラックバックで送っていただきました。山口さんのブログでは、当サイトがあまりカバーしていないMMOG関連の話や、私がサボっている英語での情報発信など紹介されています。 アメリカのシリアスゲーム系プロジェクトへは、紹介記事にあるマイクロソフト、最近ではリープフロッグ社(Education Arcadeプロジェクトのスポンサー)など、企業から直接提供される資金の流れもあります。金額の多寡はあるかと思いますが、日本でもゲーム会... [Read More]

Tracked on September 29, 2005 02:10 PM

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