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「このような卑劣な行為をけっして許すことはできない」

衆議院総選挙に関連する世論調査などの情報を得るため、ここのところ新聞や週刊誌などを買いあさっていたのだが、その中に本当に許しがたいものがあった。

あ、別に世論調査に怒っているわけではないのであらかじめ。

別にかっこつけるわけではないが、ふだんこの種の週刊誌やらスポーツ新聞やらを買うことはない。今回必要に迫られていくつも見たわけだが、そのうちいくつかの媒体に、スポーツ選手のプライベート写真流出問題が報じられていた。真贋やら詳しい事情やらに興味はないが、どうも本人と近い者が公開したというふれこみらしい。

この種の週刊誌やらスポーツ新聞やらに、人前で開くのをはばかられるような女性の写真が必ず載っていることは承知している。どうこう言っても商業媒体だし、しょせんこれがウリだから、別にそれ自体に文句をつけるつもりはない。被写体本人が了解しているならば。要するにエロ本なのだ。

しかし、当然ながら、被写体本人が承知していないとなれば、問題はまったくちがってくる。しかもこのケースでは、本人が特定される状況にある。顔にモザイクを入れた写真の掲載された記事では名が伏せられていたが、別の媒体では写真抜きだが実名が出ていたりしたわけだし、実名と写真を双方載せていたものもあったのだから、「本人のプライバシーに配慮」なんていう言い訳は通用しない。自分が、あるいは自分の身内がこんな仕打ちにあったらどう思うか、少しでも想像してみるがいい。

「有名人にプライバシーはない」などとよくいう。とんでもない。確かに有名人の中にはプライバシーを売り物にする者もいるが、本人が売りに出さない限り、プライバシーはプライバシーだ。勝手に暴くことが許されるとすれば、それはプライバシー侵害の被害を上回る社会的利益があるとき、たとえば公務員の汚職とかそういったものの場合だけだ。スポーツ選手がプライベート写真を売り物にする理由などあろうはずがないし、その掲載に社会的な利益があるわけでもない。「レースクイーンが限界露出!」の袋とじなんかとはわけがちがうのだ。

この写真はインターネットの掲示板に出されたものらしい。もう公開されているからいいとでも思っているのだろうか。冗談じゃない。インターネットに流れるというのと、紙媒体で出回るというのは、そのインパクトがまったくちがう。それに、別のところで公開されているからといって、それを自分のところでまた掲載していい理由にはならない。泥棒の被害に遭った人の家ならいいだろうと盗みに入るようなものではないか。盗人猛々しいにも程がある。

さらに許せないのは、こうした興味本位の記事が「報道」を装っていることだ。ある記事はいったん画像が流出すると原状回復が難しいことを指摘し、「現代社会に鋭く警鐘を発することとなった」と結んでいる。そりゃその通りだが、あんた方に言われたかない。この週刊誌にとりあげられたこと自体が「ネット社会の危険性」なのだから、この週刊誌の存在自体が社会にとってリスク要因なのだ。「ネットの”匿名性”を隠れ蓑に、ほくそ笑んでいるのは誰なのか」としたり顔で問いかけているが、もしわからないなら教えてさしあげる。あんた方だ。もう1つの週刊誌では、「このような卑劣な行為をけっして許すことはできない」としている。ああそうかい。ならばあんた方も同罪だ。おわび広告を出してさっさと廃刊するがいい。「嫌な世の中になった」と嘆くスポーツ新聞もあった。その通り。嫌な世の中にしているのはあんた方だ。

これらの週刊誌やスポーツ新聞には、今回の衆議院総選挙に関する記事が出ていて(だから私が買ったわけだが)、政党やら候補者やらをさまざまに論評したりこきおろしたりしている。こういう行為は、選挙期間中であれば一般的には公職選挙法で禁止されている「文書図画の頒布」にあたるおそれが少なからずあるわけだが、同法第148条で報道機関は例外として許容されている。この条文については数日前にもとりあげた。「週刊!木村剛」でも「なぜマスコミは良くて、ブログはダメなのか?!」という記事があって、この条文をとりあげている。

上記のような媒体が報道としての「特権」を享受していることは、何ともがまんならない。姑息にも正義漢面をしながら、有名人とはいえプライバシーを売り物にしていない人のプライバシーを晒すことで金儲けを企む輩が、「毎月一回以上、号を逐つて定期に有償頒布するもの」であって「第三種郵便物の承認のあるもの」であるという理由だけでこの特権を享受し、常識をもってブログを運営する人々が排除されているのが、まっとうな社会のあり方なのか。これらの媒体を排除することができないなら、逆に個人のブログも148条の対象にすべきだ。

必要に迫られたにせよ買ってしまった(これを書くためとはいえ記事も読んじゃったし)自分を悔いる次第だが、ともあれ記事の表現をそっくりそのままお返ししたい。「このような卑劣な行為をけっして許すことはできない」と。こういう週刊誌やスポーツ新聞は、報道の名に値しないし、報道の自由を理由として保護する必要もない。こういうものを平気で載せられる神経で編集された記事は、どんな内容であろうと信用するにあたらない。

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Comments

やまぐちさん、こんばんは、

個人情報保護法の雑則にもあたまが来ました。なぜ、マスコミならよいのか?、と。

Posted by: ひでき | September 05, 2005 at 05:59 PM

ひできさん、コメントありがとうございます。
マスコミの方々はよく注意してまわりを見ていますし、声も大きいので、不利な法律が制定されそうになるとちゃんと論陣を張ってますよね。
私たちも、権利を守ったり広げたりしようと考えるなら、もっとまわりをよく見て、声を上げていかないといけないのだと思います。

Posted by: 山口 浩 | September 06, 2005 at 02:21 AM

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