移民がだめでも養子がある、という話
少子化対策の話というのは、いろいろと付随する問題がややこしくて、すっきりと議論できないことが多い。あまりに身近な問題だから、それぞれがおかれた立場に強く影響されて、一致点を見出しにくい状況に陥ってしまうのだろう。
そんなところにこんな話を投げ込むのもどうかと思うのだが、「高齢化ニッポンへのちょっとした提案」といったタイトルのコラムが9月9日のFinancial Timesに出ていた。火に油か、はたまた爆弾か。あるいは目からウロコの名案か。きわめつきの暴論、といきまく向きもあるかもしれない。
ともあれ、投げ込んでみる。
内容はタイトルの通りで、養子を受け入れたら、という話だ。移民というと社会に溶け込みにくいという問題があるが、養子ならなじみやすいということだろう。どこから?子どもを増やしたくない国から、といえば、いわずと知れた中国だ。中国の高齢化というのは日本を上回るスピードで進んでいるので、本当はそんなことやってられないのではないかという気もしなくもないが、少なくとも現在のところ、一人っ子政策はやや緩和されながらも公式には健在だ。実際のところ、アメリカ人が養子を受け入れる先としては中国が最も多くなったらしい。もっともそれは女の子に限った話だそうだが(なんでなのかね)。
このコラムを書いたのはジョージ・ワシントン大のRobert Dunn教授。専門は経済学。実はこの人の孫(女の子)も最近中国から受け入れた養子とのこと。アメリカにも中国系に対する差別があったが、中国系アメリカ人がアメリカで成功するケースが増えるにしたがって、そういったものはなくなっていった、昨今の女の子の養子が裕福な家庭に受け入れられている事実から、将来アメリカの女性の中で中国系は大きな力を持つようになるだろう、と予測している。
で、Dunn教授、ご自身の経験をふまえてか、日本の少子化対策にも中国からの養子受け入れはどうか、とご提案いただいているわけだ。
といっても、少子化問題解消のために大規模な養子受け入れを、とまでいっているわけではない。子どもに恵まれない人たちが利用しやすいようにしてはどうか、ということのようだ。
There are many couples who cannot produce babies and they should be encouraged to adopt, which is where China could be helpful.
当然、日本国内での反発もあるだろう、だが他に方策はあるのか、少子化が進むに任せるデメリットをどう考えるのか、との指摘が続く。確かに、いやいいアイデアだとすぐに飛びつく類の問題ではない。個人レベルでそう考えて実行するなら誰も文句をいえないが、仮に政府が支援するなどという話になったら、考えなくてはならないことはたくさんある。それなりの大騒動になるだろう。
ただ、中国その他の外国からに限らず国内でもそうだが、養子縁組というものについて、マッチングやら関係者の権利保護やら、問題が起きないように、希望する人たちの阻害要因にならないように、制度的な整備を進める努力というのは、今後必要になってくるかもしれない。一方に子どもが欲しいがかなわない人がいて、もう一方には子どもを充分に養育できる環境にない人がいる。どちらも子どもの幸せを願うのは同じ。となれば、養子縁組でそうしたミスマッチを解消することは、もっと柔軟に考えてもいい選択肢だろう。そんなに簡単に割り切れないよ、という声も聞こえてきそうだが、少なくとも、それが納得できる人を阻害しないようにするのは悪くないと思う。
たとえばこの種のサービスの担い手だが、就職・転職に人材紹介業や職安があって、臓器移植に移植コーディネーターがいて、結婚にも紹介業がある。養子縁組はどうなんだろう?アメリカの場合は養子縁組を斡旋するエージェンシーがあるらしい。Googleでぱらぱらとみた限りだと、日本の場合、帰化などといっしょに、弁護士や行政書士がサービスを提供しているようだが、こういうものごとは本来、法律以外の要素も大きいはずだ。専門家がいてもいいのかもしれない。不勉強なので、そのあたりの事情をご存知の方、教えていただければ。
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