「総選挙はてな」参加者アンケート集計速報(1)
以前お知らせしたとおり、㈱はてなのご協力をいただき行っていた「総選挙はてな参加者アンケート」を締め切った。全部で293人の方からご回答をいただいた。ご回答いただいた皆様、㈱はてなの皆様に厚く御礼申し上げたい。
結果はこちらに出ている。ちゃんとした分析はこれからだが、とりあえず現段階で簡単にまとめておく。統計的な分析ではなく、あくまで「感想」レベルなのでそこんとこよろしく。
質問は全部で20問あった。今にして思えばもっといろいろ工夫の余地があったと思うが、あわてて作ったせいもあるし、アンケート調査の専門家ではないのでご勘弁いただきたい。
最初に、参加者の属性を問う質問群。
問1.性別は?
やはり男性が多い。はてなの女性ユーザー比率は約30%前後なのだそうで、その意味では、女性は平均的にみて政治への関心がやや薄い傾向がある、といえなくもない。ただし「総選挙はてな」の参加者統計では、女性比率は9.2%(男性1043人、女性106人、その他15人)なので、その意味では、参加者の中で男性より高い割合の方がご回答いただいたということになる。
問2.年齢は?
図はクリックすると大きいものが表示される。アンケート回答者の年齢構成は、ほぼ参加者のそれに重なっており、まあサンプリングとして悪くないように思う。人口の年齢構成は2000年国勢調査から(こちら)、投票者は人口に2003年衆院選時の年齢層別投票率をかけたもの。
やはりというべきか、若年者に偏っている。これもはてなのユーザー層とおおむね似た構成になっているようだ。10代がかなり入っていることに注目。やはり関心が高かったのだろう。投票できない代わりに、という要素もあったのかもしれない。面白いのは、参加者統計では50代以上はいないのに、アンケートでは50代後半の方もいらっしゃることだ。参加の際にはサバを読んだ、ということなのだろうか。ちなみに参加者統計では年齢は自由記入だったようで、最年少の方は「-31歳」となっている。私もこれから「マイナス20歳」と答えることにしようか。10歳以下の年齢を記入された方を省いている。アンケートのほうでは「10代以下」でひとくくりにしている。
ちなみにデータは以下のとおり。
年齢層 | アンケート | 参加者統計 | 投票者 | 人口 |
10代以下 | 11.9% | 12.9% | 0.0% | 20.5% |
20代前半 | 17.4% | 22.1% | 4.5% | 6.6% |
20代後半 | 21.5% | 24.7% | 6.2% | 7.7% |
30代前半 | 20.5% | 21.6% | 6.6% | 6.9% |
30代後半 | 10.2% | 11.9% | 7.4% | 6.4% |
40代前半 | 7.8% | 5.0% | 8.0% | 6.1% |
40代後半 | 4.1% | 1.7% | 9.7% | 7.0% |
50代前半 | 2.0% | 0.0% | 11.7% | 8.2% |
50代後半 | 0.7% | 0.0% | 10.3% | 6.9% |
60代以上 | 3.8% | 0.0% | 35.6% | 23.4% |
問3.職業は?
職業 | 人数 | 比率 |
会社員 | 116 | 39.6% |
学生 | 80 | 27.3% |
自営業 | 17 | 5.8% |
無職 | 17 | 5.8% |
アルバイト・不定期雇用等 | 15 | 5.1% |
その他 | 14 | 4.8% |
公務員・団体職員 | 14 | 4.8% |
主婦 | 12 | 4.1% |
会社・団体役員 | 8 | 2.7% |
合計 | 293 | 100.0% |
会社員と学生が多いのは、まあそうだろうなといったところ。「無職」「アルバイト・不定期雇用」が思ったより多いようだがどうだろう。もしそうなら参加者の年齢構成と関係があるものと想像する。
問4.もともとはてなユーザーでしたか?
回答 | 人数 | 比率 |
「総選挙はてな」実施以前からはてなユーザーだった | 251 | 85.7% |
「総選挙はてな」で初めてはてなユーザーになった | 42 | 14.3% |
合計 | 293 | 100.0% |
つまり「総選挙はてな」は、はてなの新規顧客開拓にはさほど効果的ではなかった、ということか。近藤社長にはちょっと申し訳ないが、既存顧客へのサービスという意味もあるし。
問5.政治に関心のあるほうですか?
「おおいに関心がある」と「まあ関心がある」で合計88.8%。わざわざ予測市場に参加したくらいだからこれもまあ当然といえば当然か。ただし、「おおいに関心がある」人も、ひょっとしたらふだんから政治に強い関心をもっているというわけではないかもしれない。「まあ関心」のほうが多いという点については、「政治的な意図」をもって参加した人はいたとしてもそれほど多くなかったろうという意味で安心した。実際、予測結果にはそうした「政治的な意図」の影響は特段みられないようだし。
問6.支持政党は?
世論調査結果と比較して、参加者の支持政党に極端な偏りはみられないが、自民、公明支持がやや少なく、共産支持がやや高めのようにもみえる。年齢層によって支持政党の傾向がちがうとすれば、それを反映している可能性もある。「ネット右翼」なる表現を目にすることがままあるが、仮にそういう人がいるとしても、それがこの結果と比べて整合的なのかどうかはよくわからない。そもそもどういう人を「ネット右翼」というのかもよくわからないし、そういう人がどの政党を支持するかもよくわからない(共産とか社民とかはないんだろうけど)。まあ各紙の世論調査でも各党支持率の数値はけっこうちがっているわけなので、誤差のうち、なのかもしれない。
どこぞの週刊誌だかが「自民支持層はテレビの視聴時間が長い」というアンケート結果を報じていたが、「総選挙はてな」の参加者は、後の質問で「最も参考にした情報ソース」にインターネットと答えている人が最も多い(つまりテレビへの依存度が低いということだ)ことと関連があるかもしれない。
政党名 | アンケート | 毎日 | 朝日 | 読売 |
自由民主党 | 34% | 38% | 40% | 46% |
公明党 | 2% | 6% | 4% | 4% |
民主党 | 22% | 22% | 18% | 19% |
日本共産党 | 6% | 3% | 4% | 3% |
社会民主党 | 2% | 2% | 2% | 2% |
国民新党 | 1% | 1% | 1% | 0% |
新党日本 | 1% | 1% | 0% | 0% |
この中にはない | 0% | 2% | 0% | 0% |
無所属 | 1% | 0% | 0% | 0% |
支持政党なし | 30% | 25% | 31% | 25% |
読売は9/6-8実施の継続世論調査4回目、毎日は9/7-8実施の世論調査、朝日は9/8-9の連続世論調査第8回目から。読売と朝日の世論調査では「無回答」がいるため、「無回答」を除いたものの比率として計算した。
問7.株式や債券等の投資経験は?
選択肢 | 人数 | 比率 |
まったく経験がなく、投資には慣れていない | 171 | 58.4% |
あまり経験はなく、投資にはあまり慣れていない | 57 | 19.5% |
多少経験があり、投資にはまあ慣れている | 54 | 18.4% |
経験があり、投資には慣れている | 11 | 3.8% |
投資にはまったく経験のない参加者が過半数だった。この点は、予測市場の今後の実施可能性を問う上で重要だ。「市場」そのものに慣れていないとうまく使えないかという懸念があったからだ。実験経済学の分野でも、必ずしも市場に対する知識は必須の条件ではないとの知見が得られているが、一方で市場が途中で崩壊してしまう事例もあるといわれているため、懸念があったわけだ。今回の結果は、このぐらいの参加者構成であっても市場メカニズムは機能する可能性があることを示したという意味で貴重な経験といえる。
問8.ネット証券での取引経験は?
選択肢 | 人数 | 比率 |
頻繁に取引をしている | 17 | 5.8% |
たまに取引をしている | 34 | 11.6% |
めったに取引しない | 15 | 5.1% |
今はしないが以前はしていた | 12 | 4.1% |
利用したことはない | 215 | 73.4% |
ネット証券での取引経験があれば予測市場にも慣れやすいのではないかと考えた質問。投資そのものの経験があまりない人が多い以上当然なのかもしれないが、思っていた以上に経験率は低いというのが個人的な感想。
問9.「総選挙はてな」に参加した理由は?
選択肢 | 人数 | 比率 |
政治や選挙に関心があったから | 184 | 62.8% |
株式等の投資が好きだから | 37 | 12.6% |
アイデアポイントをふやしたかったから | 79 | 27.0% |
ゲームとしておもしろそうだったから | 114 | 38.9% |
どんなものか試してみたかったから | 151 | 51.5% |
ただのひまつぶし | 42 | 14.3% |
上記の中にはない | 8 | 2.7% |
合計 | 615 |
この問は複数回答。比率は回答者総数293人に対してのもの。 市場にはどんなタイプの投資家がどのくらいの割合でいるのかを調べようとしたもの。問7、問8の回答からみて、「投資が好きだから」が少ないのは理解できる。これと「ゲームとして面白そう」は一種の競争動機、ということだろうか。市場メカニズムが機能するためにはこのあたりが必須だから、その意味で「安心」できる結果だ。
疲れたので今日はここまで。とりあえずここまででいえそうなことのうち最も重要なポイントは、「参加者の構成には偏りがあるが、予測結果にバイアスはない」という点だ。要するに「予測市場はいわゆる『サンプリングバイアス』に影響されない」という仮説を支持する結果だということだ。
「総選挙はてな」参加者の性別、年齢階層別構成は、有権者のそれとはかなり異なっている(居住地域に関する問いを入れなかったのは私のミスだ。素人はこれだから困る)。要するに、もしこれが世論調査のサンプリングであったら、とても採用できないということになるわけだが、実際の予測結果は世論調査と比較して大きく異なってはいなかった。支持政党の分布と予測結果の分布が大きく異なっていたことを想起されたい。以前の記事で「予測市場はサンプルバイアスに影響されない」と書いた。これはアイオワ大学の米大統領選予測市場でもいわれている(若い白人男性のだそうで、はてなユーザー層と重なる部分があるかも)が、「総選挙はてな」のケースでも同じような結果となったわけだ。もちろんこの1回だけで断定することはできないが、少なくとも「有望」だとは思う。
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