Game Gives Peace a Chance
10月16日付Washington Postの記事「Video Game World Gives Peace a Chance」から。最近シリアスゲーム関連のニュースが目立つようになってきた(ひいき目ではないように思うがどうだろう)が、今回は「平和を学ぶゲーム」といったところ。
記事にはいくつかの事例が紹介されている。
事例1:カーネギーメロン大学の「PeaceMaker」プロジェクト
イスラエルとパレスチナのいずれかのリーダーとなって、相手との交渉を行う。軍事力を使いすぎると暴力の応酬に陥り、かといって譲歩しすぎれば暗殺されるリスクが高まる、のだそうだ。なんだかとても現実的。このゲームのことは、来月ワシントンDCで開かれるSerious Games conferenceで発表される由。
事例2:南カリフォルニア大学の親米ゲーム開発コンペ
米国に対する国際的評価を高めるためのゲームの開発に関するコンペを開催する。「Voice of America」のゲーム版みたいなもの、と解説されている。
事例3:MTVの大量虐殺と戦うゲーム
スーダンのダルフールで起きている大量虐殺に対抗するためのゲームの企画を競うコンテストを開催する。最優秀賞は5万ドル。
事例4:国連世界食糧計画(WFP)の食糧援助ゲーム
例の「Food Force」だ。200万もダウンロードされたとか。日本版はコナミが制作し、10月17日に公開されたばかり。
オンライン仮想世界の研究で知られるインディアナ大学のTed Castronova准教授は、アメリカ国務省に「世界中の十代の若者が参加でき、民主的に運営される世界を体験できるオンラインゲームを開発すべきだ」と主張している。今のところ相手にされてないようだが。
USCのチームはもう少し現実的で、コンペの審査委員に国務省関係者を迎えようと協議中。優勝者は来年のGDCで発表されるようだ。このアイデアの元となったのは、Star Wars Galaxies。米国外からの参加者も多いこのMMORPGで、当初米国人に否定的な考えをもっていた海外参加者が、実際に米国人プレイヤーたちと協力して活動していくうちに、その考えを変えていったのだとか。こちらは「バーチャル・エクスチェンジ・プログラム」みたいなもの、と解説されている。
いずれにせよ、ポイントは、まずゲームとして面白くなければならないことだ。どんなに教育的効果が高くても、つまらなければ誰もやらない。それでは意味がないのだ。「民主主義は娯楽たりうるか?」という課題を、このテーマに挑むゲームデザイナーたちは突きつけられている。
記事は、この問いに対するCastronovaの(いかにも彼らしい)印象的な回答で締めくくられている。
"You could look at the U.S. Constitution as a big game. . . We've been playing it for 200 years. And we love it."
ホイジンガが草葉の陰で喜んでるだろうな。遊びは人間活動の本質であり、人間の行う多くの活動の中に遊びの要素を見出すことができる。ならば遊びを通じて人間を、そして人間の集合体である社会を学ぶことは、一般に考えられているよりも正統的なアプローチなのかもしれない。
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