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October 26, 2005

森永卓郎氏は郵貯・簡保が破綻すると予測しているらしい

Nikkeibpのコラムで、経済アナリストの森永卓郎氏が書いている「小泉構造改革をどう生きるか~成果主義、拝金思想を疑え!~」というコーナーがある。その第3回「郵政民営化法案成立で我々を待ち受ける運命~郵貯・簡保は日本国債・米国債のゴミ箱と化す~」というのを読んでみた。

なんだか穏やかでないタイトルだが、実際、内容も穏やかではない。

おおざっぱに整理すると、こういう論旨。

(1)郵貯と簡保について、10年以内に株式を売りに出すのは財務省の意向。
(2)財務省の狙いは2つ。「税収減対策」と「インフレ対策」。
(3)「税収減対策」とは、郵貯・簡保の株式売却金収入を財政の足しにしようというもの。時価総額は少なくとも15兆円と見込む。
(4)「インフレ対策」とは、今年末から来年3月にかけてデフレが収束してインフレに転じ、郵貯と簡保が保有している国債価格が下がることへの対策。民営化しない場合、国債の購入に政府保証がついており、値下がり分は国が補てんするが、民営化によって「自己責任」となる。
(5)しかし実はもう1つ理由がある。それは「アメリカによる郵貯・簡保の乗っ取り」。 民営化会社の株式(たとえば20%)をアメリカが買って、民営化会社にアメリカ国債を購入させるというもの。
(6)しかしアメリカも財政赤字のため国債は危険である。今人民元を低く抑えるためアメリカ国債を買っている中国も、危ないからもう買わない。 それを郵貯・簡保に押し付ける。
(7)郵貯・簡保から出ていった日本国債は民間銀行が買い取る。
(8)こうした動きに対して、庶民はすぐにでも郵貯から逃げられる態勢をとっておくべき。 しかしいなかの高齢者は逃げ遅れるだろう。 安全だと信じていた虎の子の貯金を失うといった悲劇が、あちこちで起きる。
(9)最近の好景気はバブルではない。地価も株価も、本来の価格の半分近い状態であり、本来の価格に向かう過程にある。
(10)盛況な株式市場は外国人投資家だけが買って株価を引き上げている状況である。 個人投資家は売り越している。
(11)これからは、再び株・不動産の価値が上がる時代である。 インフレの時代には、現金や元本保証の預貯金のほうが、よりリスクが大きい。

森永氏ははっきりとは書いていないが、(8)「虎の子」を失わないように「逃げる」必要があるというのだから、郵貯と簡保は破綻(正確にいうと、払い出し不能に陥るということだ)するという予測を示したものと考えるのが妥当だろう。こんなあたりを見ると、ちょっと前は「デフレ脱却が何よりも必要」と力説していたようだが、いざ脱却するとこんどは(4)国債暴落でたいへん、ということか。だから民営化に反対ってわけだ。でも、郵政民営化ができなくても、民間金融機関の預金は金利上昇で同じ影響をこうむるわけだし、金利上昇をもたらす景気回復は政府の政策とは無関係と主張されているようだから、「虎の子の貯金を失う」事態は必ずしも政府の責任ではないということになるな。それとも銀行を全部国有化せよという主張だったのか?

そういえば気になるのだが、郵貯・簡保会社の株主になって国債を買えと迫る「アメリカ」さんって誰のことだろう?まさか連邦準備銀行じゃないよね。国務省?いやいや。アメリカの民間銀行か?それもありえない。だって森永氏によれば、アメリカの財政も危機的状況で国債の引き受け手がいないそうなのだから、利にさとい彼らが「お国」のために紙くずとなる郵貯銀行株を買ってくれるとは思えない。IMFってこともないだろうし。そんな奇特なまねは、責任ある組織にはとてもできまい。きっと個人だ。ブッシュ大統領?15兆円×20%なら3兆円だぜ。そんなに金持ちとも思えないな。ジョージ・ソロス?まさか。でも広い国だし、きっとどこかにそういうお金持ちがいるにちがいない。

そういえばこの「アメリカ」さん、最近の立花隆氏のコラムにもよく登場する。ああそういえば亀井静香氏の選挙演説でもとりあげられていたな。よほど有名な人なんだろう。私は不勉強にして知らないが。ともあれ、破綻するはずの日本の郵貯銀行の株を20%も買ってくれるそうだ。ありがたい話ではないか。日本国民の「虎の子」貯金の大半は森永氏の賢明なるアドバイスに従って逃げるだろう。残りのかなりの部分も、預金保険で守られる。アメリカ国債の大保有者となれば、愛国心豊かな「アメリカ」さんは、郵貯・簡保会社が破綻しても資本注入してくれるかも。いやいやもったいない、新生銀行のときとは逆に、破綻した郵貯・簡保会社の紙くず株を、日本企業が安く買い叩けばいい。値下がり分は実質的には「アメリカ」さんから日本経済へのプレゼントということだ。

となれば、森永氏といっしょに、「アメリカ」さんにお願いしよう。20%といわず、郵貯・簡保会社の株を100%買ってくれと。

それから、株や不動産が「本来の価値」の1/2だそうだが、その「本来の価値」ってやつをこの人はどうやって計算したのだろうか?(10)「外国人投資家だけが買って株価を引き上げ」ていて「個人投資家は売り越している」株式市場が今後持続的に上昇する見込みというのもちょっとわかりにくい。疑問はいくつもあるが、まあいいや。きっとりっぱな理由があるんだろう。なんせ「年収300万円」の10倍は軽く稼ぐ有名なエコノミストだし。

とにかく、覚えておこう。経済アナリスト森永卓郎氏は、郵貯と簡保の破綻を予測した、と。時期を書いていないのは「予測」としてはやや不満だが、まあいい。気長に待つとしよう。

※2005/12/14追記
2005年12月12日、「gooリサーチ」を共同で提供するNTTレゾナント㈱と㈱三菱総合研究所は、「gooリサーチ」登録モニターを対象に「家計の金融資産保有意向と郵政の民営化に対する考え方」について調査を実施した。有効回答者数は30,447名。

主な結果
1. 家計は金融資産の安全性を重視。今後も預金や郵貯の保有意向は強い。
2. 多額の金融資産を保有する高齢者層の一部では、株式などのリスク資産保有の意向が高め。
3. 郵貯保有の主な理由は、アクセスの良さなどといった利便性。
4. 郵政民営化後も、既存のサービス水準が保たれれば、大きな資金移動が起こる可能性は低く、郵政民営化後も、郵貯は大きく減らない可能性が高い。
5. 郵政民営化に最も期待することは、「政府部門全体でのリストラ実現」。

森永氏のコメントが聞きたいところだが、エコノミストは「過去は自分に有益なとき以外決して振り返らない」のが鉄則だから、特に何も考えていないだろう。まあ、「気長に待つ」と書いたのだし、気長に待つことにする。

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Comments

うーむ。最初は株屋と不動産屋から金貰って書いてるのかと邪推したが、これは金貰えるほどのもんではないし…。やはり氏は本来のオタクとして年収360万円ほどの生活が幸せなのではないでしょうか。

Posted by: でんすけ | October 26, 2005 11:13 AM

でんすけさん、コメントありがとうございます。
「氏」はそれよりひと桁(かふた桁か知りませんが)多い年収をもって、自分のコレクションを展示するための博物館建設を構想している由。「ヲタを極めたければ金を儲けよ」という生きた教訓かと理解しております。「年収300万円」の方々の心境やいかに。

Posted by: 山口 浩 | October 26, 2005 02:16 PM

ごぶさたしています。
氏の本から、
日本はこれから「年収300万」が当たり前の社会になっていくけど、それは変えられないものと受け止めた上で、自らの生き方を変えた方が幸せなんだよ、
という、とても共感できっこないメッセージを感じている私は間違っているでしょうか?

Posted by: あざらしサラダ | October 30, 2005 05:33 AM

あざらしサラダさん、コメントありがとうございます。
考え方はそれぞれですから、まちがってはいないと思います。ただ、300万円かどうか別として、期待の水準を調整することは、個人レベルでできる有効な対策ではあります。
上記の記事を書いたのは、たとえ森永氏が反対していた郵政民営化が実現「してしまった」からといって、民営化会社の経営不安を根拠なしに流布するのはやりすぎだと思ったからです。同氏のいう「国債が紙くず」なんていう事態が本当に起きたとしたら、民営化会社どころではなく日本とアメリカの国全体の危機ですからね。

Posted by: 山口 浩 | October 30, 2005 11:38 AM

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