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October 21, 2005

東京コンテンツマーケット2005

東京コンテンツマーケット2005」の会場から目に付いたものをメモ。

このイベントは独立行政法人中小企業基盤整備機構関東支部が主催するもの。というわけで出展は中小企業や個人などがほとんど。こじんまりとしているが、それだけにけっこう面白い。キャラクターの出展が相変わらず多いが、映像コンテンツでゆる系が目立ったのは今年の流行りか。

というわけで、目についた順に。

㈲アノン・ピクチャーズ(動画部門特別賞)「Be Rockin'」
2Dアニメだが、動画部分を自動的に生成している。通常のアニメの場合30分もので200人前後要するところ、このやり方だと15人でできるらしい。ほぼ原画担当ぐらいの人数で全部できてしまうわけだ。原理上かなりのコスト節減が可能になる。さらにさまざまな動きのライブラリが充実していくと効率はさらに上がるはず。マシニマを思い出したが、既存のゲーム用エンジンではまだ細かい動きは難しい。じゃあモーションキャプチャは使えないのかと聞いたら、モーションキャプチャの動きは3Dアニメには合うが、2Dには合わないのだとか。見る側が「こう動く」と期待するアニメ文法がある由。モーションキャプチャを修正していくより、最初から作ったほうが早い、ということらしい。考えてみれば、作画を極限まで節約する「ジャパニメーション」(最近はなんだかほめ言葉みたいに使われるが、以前は「まがいもの」っぽい響きがあった)においても、決まった動きは使い回すやり方をしていたはず。同じことを機械でやってるだけだ、といえなくもない。ただ、パイロット映像ではキャラクターの動きが微妙にぎごちないので、もうちょっとがんばってほしいなぁ。テーマが音楽だし、手元を映すシーンがけっこうあるので、そこをばちっと決めれば。主人公のギター部分には某大物ギタリストを起用すべく交渉中だそうだが、ぜひ実現していただきたい。資金調達にはLLPと信託のスキームを使う予定とか。なんとか自律性を保とうする姿勢がよい。

㈱ケー・エー・ジェー「splume(シュプリューム)」
3Dブラウザ、だそうだ。要するに、WWWを3D空間的にあらわせるツール。建物が立ち並ぶ街並みの中を歩き回れるようになっていて、見た目はよくある電子商店街ふう。しかしそれぞれの建物はウェブサイトになっていて、リンクによって隣とシームレスにつながる構造らしい。オンラインゲームのポータルなんかに使ったら面白そう。

㈱ハイビジョン「filn」
アキバ系SNS、だそうだ(関連記事はこちら)。12月スタート予定で、「人気作家の画像入りスキンを無料提供したり、声優ライブやオフ会を企画、アキバ情報を提供」(IT Media)したりするとのこと。会員ってヲタ男ばっかり、なんだろうか。なんだかすごそう。しかし要求水準高そうだから、運営側もきっと大変だろう。

㈱ペットワークス
白いものが空を飛んでいる写真があるが、もしやこれは!?「風の谷のナウシカ」に登場したメーヴェではないか!これって本当に飛ぶのか?と思って聞いたら、すでに模型では成功していて、実機製作中とか。「ナウシカ」に登場したものとは実際にはデザインが微妙に異なるが、本当に飛ばすための工夫なのでいたしかたあるまい。宮崎監督から「がんばってください」といわれたとのこと(それ以外いいようがないよなぁ)。私としても、「ぜひがんばってください」と応援申し上げたい。しかし、これってコンテンツなのか?と思ったりもする。ご本人の目的は「映画製作」なのだそうだが、その前がたいへんだよなぁ。

「惑星大怪獣ネガドン」
シンポジウムに出ていた㈱コミックス・ウェーブ竹内社長のプレゼンの際、予告編映像が公開された。20世紀特撮風のCG自主制作映画とか。「この作品は実写を一切使用しておりません」とある。スタッフロールは以下の通り。たったこれだけ。要するに、映像はほぼ1人で作ったってこと。

スタッフ
・原作・脚本・監督…粟津 順(スタジオマガラ)
・音楽・音響効果…寺沢新吾
・主題歌作詞…加藤健二郎
・主題歌…湯本あかね
・ゲストCGアーティスト…宮原 眞
・キャスティングコーディネート…矢野 剛
・デザイン協力…大石麻紀子
・独唱(BGMの一部)…長谷川泰子

キャスト(声の出演)
・楢崎龍一…清水 大
・吉澤政次…笹原琢磨
・楢崎恵美…湯本あかね
・TVアナウンサー/ナレーション…貴志昌文

ネットで見られるので、ぜひ予告編をご覧いただきたい。昭和色全開。ナンジャタウンあたりにいいかも。とにかくものすごいインパクト。ぜったい見たい。

イベント全体として、マスの媒体にアクセスのない中小企業や個人向けということもあってか、ネットをうまく活用して、といった雰囲気が感じられた。つまりだ。大企業に売り込んで採用してもらおうというアプローチではなく(いやそういうのもあるだろうが)、できる限り自分たちでやってしまえという方向性だ。このあたりにコンテンツ産業の将来を握るカギの1つがありそうな気がする。

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Comments

いいね。いいねー。ネガドンいいねー。
「この作品は実写を一切使用しておりません」のキャッチもいいねー。完成度高いね。
でもって制作所要時間どのぐらいかしら?費用はきっと大したことないよね?なんて普段気にならないことが気になるぐらい、いいね。

Posted by: でんすけ | October 21, 2005 10:44 AM

でんすけさん、コメントありがとうございます。
いいですよねネガドン。所要時間については聞きませんでしたが、それなりにかかっているとは思います。それでも、時間をかければほぼ1人でここまでできるようになったということが大きいと思います。クリエーターにとってチャンスが広がった、ということですからね。

Posted by: 山口 浩 | October 21, 2005 12:32 PM

関係者ということで、宣伝ついでに:
ネガドン、2.5年かかりました。もちろん、企画レベルからのお話ですが。25分なので平たく言うと、1分0.1年(36日!)ということになりますが、脚本やCGフィルターの開発などを除けば、実質的には1年ちょっとで完成しています。新海誠の『ほしのこえ』のときとほぼ同様ですね。

Posted by: yujim | October 23, 2005 11:16 AM

yujimさん、情報ありがとうございます。
一般化すると1~2年、といったところですかね。才能と時間はあっても資金がないという人にはじゅうぶん可能性のある状況ではないでしょうか。まさに「ゲリラマーケティング」万歳、ですね。これでハリウッドあたりからお呼びがかかったりすると痛快なんだけどなぁ。

Posted by: 山口 浩 | October 23, 2005 08:01 PM

一部の表現で誤解を招いたようなので・・・。
制作期間は純粋に1年で終わっていることではなくて、結果としてそう計算できるということでしかなく、先行したパイロットができた時点からのお話です。
ネガドン、「2.5年」というが実際です。きっと、作者自身が企画を暖めてきた期間からかんあげるともっと時間がかかっているということでしょう。失礼しました。
(関係者という表現も、誤解を招いたようで・・・。その会の関係者ということで関係者としました)
訂正ばかりで恐縮ですが、ご理解のほどを

Posted by: yujim | October 24, 2005 02:53 PM

yujimさん、お知らせありがとうございます。
2~3年、という感じでしょうか。いずれにしても、意欲と才能のあるクリエーターにとっては必ずしも「手の届かない」ものではない、と理解しました。
いずれにせよ、期待してます「ネガドン」。絶対見に行こうっと。
「関係者」は、一応理解しているつもりです。ご心配なく。

Posted by: 山口 浩 | October 24, 2005 03:09 PM

yujimさん、情報ありがとうございます。

直接的関係者ではなく、当該関連事象をthinkし続けておられる方とお見受けしました^^。

Posted by: でんすけ | October 25, 2005 04:21 PM

>直接的関係者ではなく、当該関連事象をthinkし続けておられる方とお見受けしました^^。

でんすけさん、座布団1枚です。

Posted by: 山口 浩 | October 26, 2005 02:20 PM

こんにちは。
「ネガドン」、11月3日の朝日新聞夕刊(東京版)でも紹介されていますね。
予告編を見ましたが、昭和特撮で育った世代にはたまらない色合いです。これが全編CGとは。
単館レイトショー限定と言わず、もっといろんなところでテスト上映してほしいですね。

Posted by: くりおね | November 06, 2005 03:55 PM

くりおねさん、コメントありがとうございます。
見ました>ネガドンの記事
今やネットで話題騒然ですから、きっといろいろとお声がかかっているかと。がんばってほしいなぁ。

Posted by: 山口 浩 | November 06, 2005 05:51 PM

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