「ときメモONLINE」にみる「オン」と「オフ」の連携
コナミの「ときめきメモリアルONLINE」がベータテスターの2次募集をしている。最初の募集が8月ぐらいから始まっていたかと思うが、状況はどうなのだろうか。東京ゲームショウでは、ブースに大行列というほどでもないもののけっこうな人だかりができていた。
以下はゲームそのものではなく、プロモーション戦略の話。こっちのほうもなかなか面白い。
本題に入る前に、自分向けとして「ときめきメモリアル」についてちょっとだけメモ。ちなみに以下は別サイトの「Tokimeki Memorial Goes Both On&Off Line」をベースにしている。
コナミが最初の「ときめきメモリアル」を発売したのは1994年。それから10年余の年月が流れたが、その間に続編が3本出ている。うち2つが男性向け、1つが女性向けだ(そのほか女性向け1本が開発中)。いずれもコンソール向けのシングルプレーヤーゲームだ。そういえば最初期のコンテンツファンドが組まれたことで有名になったのは、「ときメモ3」と「Girl's Side」だった。
・「ときめきメモリアル」1994年5月27日発売 PCエンジン用
・「ときめきメモリアル2」1999年発売
・「ときめきメモリアル3」 2001年発売
・「ときめきメモリアル Girl's Side」 2002年発売
・「ときめきメモリアル Girl's Side 2nd Kiss」 発売未定
全部書ききれないので書かないが、ゲーム本体だけでなく、サイドストーリーのゲームやら関連アイテムやら、派生商品もかなり多い。
で、いよいよオンライン化というわけだ。「ときめきメモリアルONLINE」がいかなるゲームかについてここでつらつら説明するのもどうかと思うので省略。ポイントは、「ときメモ」のゲーム性がオンラインになるとどう変わるのか変わらないのか、というところだろう。「ときメモ」のようないわゆる「恋愛シミュレーションゲーム」では、プレーヤーは「主人公」となり、相手役(これも主役級)との関係を作り上げるのが主要な活動となる。これに対し、MMORPGでは各プレーヤーは「大勢の中の1人」にならざるを得ない。それなりのドラマがあるのかもしれないが、シングルプレーヤーの普通のゲームにおけるほど「ドラマチック」な体験はなかなか得られるものではないし、自分が他のキャラクターに比べて特別であるわけでもない。それに、「ときメモONLINE」の場合、MMORPGによくあるモンスターとの戦いも攻城戦もない。学校内でPK大会をやる訳にもいかない(それじゃ別のゲームだって)。ゲームに「非日常」とか「ドラマチック」を求めるのであれば、これはなかなか厳しい状況だ。
で、「ときメモONLINE」のとったアプローチだが、基本的にはコミュニティを作るための戦略だ。だが具体策はユニークで、いってみれば「コミュニティの中にハブとなるリアルのキャラクターを配する」戦略とでもいおうか。ひとつは「スペシャルゲストキャラクター」だ。実際のアイドル数人がゲームのキャラクターとなってゲームにログインする。実際のところどのくらいの時間プレイするのかは疑問符だが、まあそういう人がいる「かもしれない」というだけでもそれなりの効果があるかもしれない。
もう1つは、11月中旬に原宿でオープンする、「ときめきメモリアルONLINE」をテーマにしたカフェ「ecole」(エコル)だ。店員がそれぞれ「ときメモONLINE」をプレイしており、そのキャラクターと同じ制服を着て接客を行う。
これにより、プレイヤ(カフェのお客さん)と「クラスメイトと話しができる」というコミュニケーションを提供するとしている。
のだそうだが、なんだかメイドカフェの高校生版といった風情もある。店員は現在募集中。カフェでの接客のほか、ネット放送、ラジオ出演、雑誌の取材などときめきメモリアルONLINEのプロモーション活動も仕事に含まれている。もちろん男性の店員も募集している。
独断だが、こういうアプローチというのは、アイドル(カフェ店員も含めて)という「ハブ」を作り出すことによって、ゲーム内コミュニティを活性化しようというものではないだろうか。もちろん「仕事」としてゲームに参加する彼らとの交流は、他の一般プレイヤーとの交流とはちがう。しかし他のプレイヤーとちがって、アイドルらは「リアル」のキャラクターも知られているという意味では「リアル」な存在だ。それに、ファンにとってアイドルの存在やアイドルを応援したりする気持ちは「リアル」なのだから、「ニセモノ」とばかにしたものでもないと思う。それはそれでコミュニケーションの一種だし、そういうコミュニティだってあっていい。
また、ここに出てくるアイドルにとっても、この試みは面白い。「スペシャルゲストキャラクター」は実際にタレント事務所に所属するタレントだし、カフェ店員も少なからず芸能活動を志望する人だろう。売り出しのためにいろいろな媒体への露出の機会があれば何でも利用したいところ。つまり彼らにとって、「ときメモONLINE」はメディアなのだ。「ゲームがコンテンツからメディアへ」という動きについては前にも書いたことがあると思うが、ここにもそういう要素があると思う。もし彼らの中の1人でもスターになったとしたら、「ゲーム」というものが、これまで考えられてきたもの以上の存在になってきているということが、世の中にはっきりと示されることになるのではないか。
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Comments
ムシキングカードとおもちゃ屋さんの端末とそこに溜まっている子供たくさん、という構図を思い出してしまいました。
Posted by: SW | October 17, 2005 02:12 AM
SWさん、コメントありがとうございます。
ムシキングもゲームとコミュニティをうまく結びつけて成功した例ですね。
ゲーム会社の戦略としてユーザーコミュニティ重視がいわれて久しいですが、そのやり方はいろいろあるのだな、と思います。
Posted by: 山口 浩 | October 17, 2005 11:33 AM