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October 27, 2005

雑誌目次をみる:「SECURITARIAN」

一部に好評の「雑誌目次をみる」シリーズ。今回は「SECURITARIAN」。

「せきゅりたりあん」と読む。「安全保障を意味する英語のSecurityと国際社会で活躍する人、世界人という意味でのCosmopolitanの語感をミックスした造語」なのだそうだ。ふうん。

防衛庁編集協力の「日本の防衛を考える情報誌」だ。出版社は…ん?出ていない。あわててサイトをみたら、「財団法人防衛弘済会」とあった。この財団、「防衛思想の普及、防衛関係学術技芸の奨励、防衛庁及び防衛庁共済組合の隊員・職員並びに退職者及び遺家族の相互扶助と福祉の増進を図る事業」を行うのが目的だそうで、この雑誌もその一環というわけだ。平成16年度の収支決算書をみて(すぐこういうものを見たがる。なんとも意地悪いね我ながら)、えっ!?と驚愕した。当期収入が138億円もある。うち「会費」は19億円で、最も大きいのが「事業収入」で111億円。支出項目で対応しているのは「隊員クラブ等運営費」の106億円。

ふうん。

ちょっと香ばしいのであまり突っ込まないことにして、さて「SECURITARIAN」のほうへ。決算書でいえば「防衛思想普及費」の支出1.4億円が対応しているのだろう。仮にこの支出がすべてこの雑誌のためのものとすると、小売価格が500円(税抜き)だから、原価300円と想定すれば割り算して47万部、という計算になる。現役隊員と退役者、関係企業や図書館なんかで充分いく数、なのだろうか。この雑誌は日本雑誌協会のデータベースには出ていないが、部数でいえば「潮」とか「趣味の園芸」とかのレベルだ。けっこうすごいぞこれは。

というわけであなどれない「SECURITARIAN」。2005年10月号の目次は次の通り。

・OPEN SESAME!
なにやらパーツの写真が出ていて、それが何かを当てるクイズらしい。陸上自衛隊のものらしいが、なんだかまったく想像がつかない。下に前月号の答えが出ていて、「94式 水際地雷敷設装置の海上推進装置(プロペラ)」だそうだ。「陸上自衛隊が、海岸の水際地雷原を構成するために使用する水際地雷敷設装置を水上においても機動させる」ためのもの。…知らねぇよそんなの!隊員ならともかく、こりゃ部外者にはぜったい無理だぜ。それとも、自衛隊ヲタには楽勝、なのだろうか。

・百家争鳴「葛城奈海の大学訪問」 東京国際大学国際関係学部 宮下明聡助教授 国際政治学演習
「国際関係などを学ぶ学生」たちを紹介するコーナー。「葛城奈海」って誰?という方(私もだが)、認識が甘い。東京大学 農学部卒業、合気道四段・鹿島神流初伝の女優さんだ。「葛城奈海は、地球と戯れ、自然を語り、演じ、レポートするアーティストを目指します!!」だそうな。ポイントは「予備自衛官補(一般)第1期生」の予備自衛官だということ。やるときゃやる、のだ。これほど適任の方はいないだろう。公式サイトにはヘルメット姿の写真もあり、ヲタ的に特殊な感情を抱く人がいるかも。

で、宮下ゼミでは日中の歴史教科書を比較する演習が行われた由。日本の教科書は「分析叙述的で受験仕様」なのに対し、中国の教科書は「インパクトのある挿し絵も多用し国家としての意思が直接『情』に訴えてくる」のだとか。教科書で情に訴えるのは反則っぽいぞ、と私なぞは思うのだが。それにしても宮下ゼミ、全11人中女性が9人。男子学生にはおいしい環境とみた。

特集 防衛白書2005
・ダイジェストで見る 平成17年度版・防衛白書
・どう思う? 今年の防衛白書
・どうやって作った? 今年の防衛白書
・初の試み!防衛白書説明巡業

年に一度の大行事。8月に発刊された2005年度版防衛白書の大特集だ。「どう思う?」では学生や学者に感想を聞き、「どうやって作った?」では作成担当者にインタビュー、「説明巡業」は地方で開かれた説明会を取り上げている。この説明巡業は初めての試みで、まずは自衛隊内の5つの方面総監部で行った。今後は国民に対しても説明する由。東京地連部長が石原都知事に説明したそうだが、この人には改めて説明するまでもないようにも思ったりする。

せっかくなので、防衛白書のほうも各章のタイトルだけ載せておく。
第1章 わが国を取り巻く安全保障環境
第2章 わが国の防衛政策の基本と新防衛大綱、新中期防など
第3章 新たな脅威や多様な事態への実効的な対応と本格的な侵略事態への備え
第4章 国際的な安全保障環境の改善のための主体的・積極的な取組
第5章 国民と防衛庁・自衛隊

・自衛隊ルポ 首都圏を空から見守る俊足部隊 陸上自衛隊東部方面航空隊
立川駐屯地を本拠とする陸上自衛隊のヘリ部隊だ。ここは首都圏の防災を担う拠点でもある。新潟県中越地震の際もまっさきに状況を空から伝えたそうだ。

COME ON
・素顔の自衛隊 メリハリの達人 海上自衛隊横須賀教育隊教育第1部・3等海尉 松井玲子
「松井玲子さん」ではなく「松井玲子」と表記される。このあたり、なんとも自衛隊っぽい。「身内」ってわけだ。「全国社会人ハンドボール選手権大会優勝」「全自衛隊陸上競技女子走り幅跳び優勝」という輝かしい実績。今は横須賀教育隊の教官だとか。「学生たちが4ヶ月で自衛官の顔になっていくのがうれしい」とは「An Officer and A Gentleman」みたいでかっこいいな。

連載記事
・漫画 東へ西へ・見学コースをたずねて
・メディカル自衛隊 食育としての食中毒対策
・自衛隊占い派遣 未来潜望鏡
・海の向こうの食卓 ヤエチカで味わう南オーストラリアのオイスター
・自衛隊風土記 目指せ世界遺産9ヵ所 完全制覇の沖縄編
・DEFENSEワードローブ 輸送艦/ドック型揚陸輸送艦/強襲揚陸艦/多目的支援艦
・志方俊之の安全保障講座 立ち往生した大使館でのプレゼンテーション
・グローバルビュー 示された英国人の芯の強さ、ロンドン同時多発テロ事件  
・連載小説  ブルー・ファンタジア
・防衛庁からの戦史 防衛研究所所蔵の軍事関連文書
・ウェポンインストラクション 車両用ガスタービンエンジンのはなし

マンガを描いているのは、以前この雑誌で「HOP☆スコップ☆ガール!」を連載していた金島佳代さん。今度は自衛隊のあちこちを訪ねる連載か。今回は入間基地内にある「修武台記念館」。旧陸軍の陸軍航空士官学校本部の建物をそのまま利用したものだとか。

で、今回この雑誌をとりあげた最大のポイントはマーク矢崎氏の「未来潜望鏡」。占いのコーナーだ。占いにもいろいろあるが、自衛隊の「職種キャラ占い」はここ以外にはぜったい見られないだろう。占い結果は本誌をみていただくとして、ここでは職種キャラの判定方法のみご紹介。

まず、「森羅万象の元になる火地風水という4大要素で星座をとらえ」る。
火:おひつじ座、しし座、いて座
地:おうし座、おとめ座、山羊座
風:ふたご座、てんびん座、みずがめ座
水:かに座、さそり座、うお座

次に「活動、不動、柔軟という要素で、血液型をとらえ」る。
活動:A型
不動:O型
柔軟:B型、AB型

で、これを組み合わせて職種キャラを判定する。

  
活動レンジャー戦車メカニックレーダー
柔軟パラシュート哨戒機ペトリオット潜水艦
不動戦闘機護衛艦音楽隊シェフ

いろいろあるな。隊員がみんなでやったりするんだろうか。宿舎で男たちが「オッ戦闘機は今月ラッキーだぜ」「やったレンジャーは大活躍だって!」「シェフは今月だめだぁ」なんて言い合ったり。…微妙。

連載小説「ブルー・ファンタジア」は今号が連載第1回だ。主人公は海上自衛隊教育航空隊所属の高柳聡、25歳。対潜哨戒機の訓練中。訓練に忙しくなかなか会えない恋人の和泉小鳩、ブティック勤務。実は彼女、某国の諜報員で―なんて展開はないだろうが、さて今後どうなるか。

TOPICS
・ピクルス王子の市ヶ谷台探検ツアー
・密着!パセリちゃんツアー同行レポート

「ピクルス王子」と「パセリちゃん」についてはこちらを参照。パセリちゃんツアーのほうは、同行レポートがついている。今年は海上自衛隊横須賀基地。参加動機は「自然災害で自衛隊の救助活動を受け、自衛隊の活動に興味を持った」「近年の海外派遣活動のニュースで、自衛隊をもっと知りたくなった」「自衛隊が登場するドラマで興味を持った」等々、関係者にんまりの回答が紹介されている。「自衛隊員と知り合いになりたくて」がなかったのは残念、かも。今年は過去最高の抽選倍率だったそうで、本サイトも多少は役に立った(かどうか知らないが)のならうれしい。

INFORMAITION
・SDFイベント情報
・読者プレゼント

自衛隊関連のイベントなんてあるのか?と思ったら、けっこうあるのだこれが。載っているのは12月末までに開催されるものだが、それでも全部で55ある。読者プレゼントの賞品は(1)防衛庁広報ビデオ「イラク復興支援24時」(25分。製作協力はなんと㈱円谷プロダクション!)3名、(2)ピクルス・パセリクリスタル携帯ストラップ5名、(3)ピクルス・パセリクリスタルキーホルダー3名。

OTHERS
・防衛閑話
・ビジュアル編集後記/状況おわりっ!

「状況おわりっ!」といういい方があるんだろうか。「おわり」はともかく、この場合の「状況」って何だ?

この雑誌、広告もなかなか味わい深い。というわけで特に味わい深いものを2つほど。

㈱アイ・ディー・エーの広告。「GARMINハンド・ヘルドGPSナビゲーター」だ。サイトはなぜか全部英語。ハンドヘルドGPSという商品自体がそこはかとなく自衛隊っぽいが、別に自衛隊で使うわけでもないだろうし、どういう関連だろう?自衛隊員はアウトドア趣味の人が多い?自衛隊OBが経営する会社?なぞは深まる。

財団法人防衛弘済会の広告。「あなたが著者の『本』を作ってみませんか」だそうだ。「防衛庁職員・自衛隊員及びご家族、OBの皆様の『本』作りをお手伝いします」のだとか。うーん。わからんでもない。ないのだが、あんまり書かれちゃ困ることもありそうな。あ!そうか。だから他じゃなくて防衛弘済会で作らせるんだな。やばそうな内容はあらかじめチェックできるし。

期待にたがわずおいしいところ満載の「SECURITARIAN」。目次だけといわず、ぜひ書店にてお買い求めいただきたい。

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Comments

。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。どひゃひゃひゃ。

何をまた硬い雑誌を…と思ったら吉本も真っ青な内容に吃驚!というか笑い転げますた。

この出版費用は直ちに削って竹槍購入に当てるべし!

Posted by: でんすけ | October 27, 2005 07:59 PM

でんすけさん、コメントありがとうございます。
いえいえこの雑誌、おそらく「採算」はとれていると思いますよ。かなり「プロ」向けの内容からして「防衛思想の普及」に役立っているかどうかは微妙ですが、ともあれけっこう楽しめます。ぜひ一度書店で手にとってみてください。

Posted by: 山口 浩 | October 27, 2005 08:06 PM

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