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November 11, 2005

鵜を焼いて食べる話

中国でベンチャーキャピタルを営む日本人の方の話をまた聞きして、なるほどねぇと思った話。

そもそも中国にベンチャーキャピタルがあるのか、というところでへぇ、となったわけだが、そういう役割をしている投資家層はいる。というか、投資するだけの資金を持っている人たちはかなりの数がいるようだ。

ベンチャーキャピタルは、鵜飼いにたとえられることがある。鵜飼いは鵜の首になわをつけて川に放ち、鵜に魚をつかまえさせる。鵜が魚を飲み込もうとしたときになわを引き、魚を飲み込ませないようにして引き上げ、魚を吐き出させる。そのなわさばきで鵜の本能を利用して自らの目的を果たすというのはややずる賢い感じもするが、ベンチャーキャピタルとしては、そのくらいのつもりでないと、投資先のベンチャー経営者にしてやられる、ということなのだろう。

しかし、中国では事情はさらに過酷だ。鵜飼いなんかしているつもりでいたら、鵜が魚を食べ放題になる。ベンチャー経営者が自分のポケットに入れてしまう度合いは日本の比ではない。ベンチャーキャピタルたる者、いざとなったら鵜ごと焼いて食べてしまうぐらいの気迫で臨まないと、ということらしい。具体的には、いざとなったら投資先の経営者を追い出して、ベンチャー企業を乗っ取ってしまえ、というわけだ。そのくらいやって初めて、ベンチャー経営者の行動ににらみがきくようになる。

もっとも、ただ厳しくすればいいというものでもない。あまり厳格にやれば、経営者のほうが先に逃げ出してしまう。優秀な経営者ほど流出しやすい。だから鵜を焼いて食べるのもたいがいに、ということになる。ある程度まで投資家の利益を確保したら、あとは経営者に好きに任せてしまうのがいいのだそうだ。その程度の役得は認めてあげてはじめて、優秀な経営者を社内にとどめておける。それに中国の場合、そもそも鵜が食べる「魚」はそれこそいくらでもいる。多少鵜に食べられても鵜飼いの取り分はたっぷりあるのだ。ならば多少のことに目くじらたてるよりも、お互いにハッピーになったほうがいい。実践的な知恵、ではないだろうか。

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Comments

なるほどですね。
川には魚がいるか?働き者でズルをしない鵜は手に入るか?手綱の締め具合はそれなりに。ですね。

Posted by: でんすけ | November 11, 2005 08:56 PM

でんすけさん、コメントありがとうございます。
要するに、「郷に入っては郷に従え」ということですね。別に「だから中国人は」とかいうことではなくて、当地ではそういうものだ、ということだと思います。

Posted by: 山口 浩 | November 12, 2005 11:20 AM

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