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November 14, 2005

どっちが先か、じゃないだろう

聞いていて、うんざりする。ためにする議論のたぐいが多すぎる。財政改革について議論がさかんに行われているが、どうも実がないものが多いように思われる。なんでこうなるんだろう?

NHKの「日曜討論」は、この種の番組としてはけっこういいと思う。少なくとも、同時にどなりあって誰が何を言っているのか誰もわからない番組や、笑いをとるためのネタとして政治を利用しているだけの番組とかに比べるとはるかによく対立点や構図が理解できる。

ただ、話がおとなしい分、表向きの話に終始しがちだという問題はある。11月13日の放送は財政改革に関する議論がされていたのだが、どうも議論がかみあわない。整理するとこういう対立だ。

(1)「Aは必要だが、Aだけを先にやるのはよくない。まずBをやるべきだ」
(2)「まずBが必要だというのは当然だが、Aも必要だ。だから同時に議論をすすめるべきだ」

どっちにせよ、AもBも必要であることは変わらない。どちらかだけなんてことは誰も言っていない。どっちも大事で、時間のかかる問題だ。どちらが先、という問題ではないし、どちらかを先にしなければならない理由も本来ない。どのくらい増税が必要かはどのくらい歳出削減できるかに依存しているし、どのくらい歳出削減が必要かはどの程度の増税を容認できるかに依存している。並行していかなければならないのは当たり前ではないか。

「どちらが先か」という議論は、暗に「同時にはできない」という見解を反映しているのかもしれないが、同時にできないわけがない。歳出削減について議論するグループと、増税について議論するグループと、それらを統合して全体の方向性を議論するグループに分ければいいだけだ。何のために722人も国会議員がいるのか。必要なら手分けして作業すべきなのは当然ではないか。どちらが先かなんて議論をしているひまがあったら、それぞれのところで必要な議論をすすめてもらいたい。おそらく、各所ではそうしているのだろう。だったらそれをどんどん表に出してくれ。

「まず歳出削減を」と主張する人たちは、おそらく一部のメディアがセンセーショナルに喧伝する「増税で日本破滅」だの「地獄」だのとかいう主張への配慮をしているのだろう。ただ、一国民として身の回りをみた限りでは、そうした「扇動」に乗っかっている人は、それほど多くはないように思う。けっこう、みんな冷静なのだ。求められるのは、「小さな政府か効率的な政府か」みたいな抽象的かつ実質的には議論の余地のない論争ではなく、具体的な各項目においてどうやっていくかという地に付いた議論だ。

たとえば健保の改革問題については、経済指標連動やら免責条項の導入やらについて、結果はともあれ具体的な議論が行われている。そういう議論をこそすすめるべきだ。政府系金融機関の問題、公務員定数の問題、どれをとっても大所高所から見ていたら問題の本質は見えない。個別の議論を積み重ねて、それらを付き合わせることで、相互の間に矛盾が生じる構図が明らかになる。その時点で初めて、国民として選択ができるようになるのだ。「小さな政府か効率的な政府か」ではなく、「税率を○%上げ、△のサービスをこうする」というプランに対して、よしあしをいえるようになる。この種の問題は、全員が合意することはもとより不可能なのだ。選択に至るまでの間にどれだけ議論を詰めていけるかがカギではないか。

ただ、変な状況になっている原因の大きな部分は、マスメディアが伝えるべきことを伝えず、センセーショナルな情宣に終始していることにある。視聴率がとれないからとりあげないというのなら、公共性を謳う資格はない。電波やら紙面やらは限られているという技術的制約をいうなら、やはり情報源からマスメディアをすっ飛ばしてネットに一次情報を流していくしかないだろう。国民がそれぞれ自分の関心領域をウォッチして、情報を発信し共有していく流れを作ったらいい。「素人では情報の質がどうの」とかいったって情報が出てこないよりはるかにましだし、テレビタレントの政治講釈より信頼のおけるブログはたくさんある。国民の声をこれまでよりはるかに効率よく救い上げるしくみも、ちょっと工夫すればすぐにできる。いまどき、技術的に解決できることはけっこうあるのだ。

論点がずれそうなのでここらでやめておくが、もっと実のある議論を見たい、と声を大にして主張しておきたい。

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Comments

>やはり情報源からマスメディアをすっ飛ばしてネットに一次情報を流していくしかないだろう。

ですよね。そういう時代に漸くなりつつあるということでしょうか。

Posted by: でんすけ | November 14, 2005 10:40 PM

でんすけさん、コメントありがとうございます。
マスメディアには、本来いろいろ期待したいところなんですが、お任せしてるだけでもいかんだろう、ということですね。大事なことですから、みんなでやったほうが。

Posted by: 山口 浩 | November 15, 2005 09:30 AM

財務省が主張している保険免責制度の導入は、下手をすると国民皆保険を揺るがしかねないという問題があります。勿論、その裏には民間の保険会社が医療保険を売りたいという思惑もあります。
それなのに、財務省が政府系金融機関の統廃合に関して明確な削減策を出してこないというのは、厚生労働行政に関わる身としてはちょっと許せないですね。

Posted by: nami | November 15, 2005 07:29 PM

namiさん、コメントありがとうございます。
誰しも自分のところは特殊な事情があると考えがちです。だからこそ表に出して、外部の意見を入れて議論していく必要があるわけですね。
私は健保の免責制度がそれほど悪い案とは思っていませんが、他にも案はあるだろうとも思います。政府系金融機関の問題も、外部からどんどん意見を出していくべきですね。

Posted by: 山口 浩 | November 15, 2005 09:01 PM

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