ゲーム有害論て何なのよ
ゲーム有害論、というのがある。ちょっと前に神奈川県が「Grand Theft Auto III」を有害図書類に指定し、埼玉県もこれに続くなど、行政側の動きもある。当然、ゲーム業界にとっては由々しき事態で、関心はきわめて高い。「ゲーム批評」の2005年11月号でも「ゲームは有害なのか?」と題した特集を組んで、さまざまな側面から取り上げている。
以下は、「ゲーム批評」の記事を読みながら頭に浮かんだ、ただの思いつき。
世間に出回っているゲーム有害論は、いくつかのジャンルに分かれると思う。
(1)暴力・性表現が健全な青少年育成を阻害する
これはある程度当然だ。書籍でもテレビ番組でも、この種の表現にはなんらかの制約がある。ゲーム業界にもCERO(特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構)という組織があって、ゲームのレーティングを行っている。今回の自治体の動きはこれとは別個に出てきたもののようだが、それは別にCEROの活動を否定するものではなかろう。
ゲームは健全な青少年育成にとって有害だ。ただしそれは、本が有害だというのと同じ意味においてだ。全部の本が有害ではないのと同じように、全部のゲームが有害なのではない。表現の自由を前提として、青少年の健全育成という別の価値とのバランスをどこでとるかという、おなじみの問題だ。この点においては、ゲーム業界は行政側ともっと話し合ったほうがいいと思う。特別なお目こぼしを要求するのもおかしいが、特別に厳しく規制されるべき理由もない。ゲームはひとつの表現形態であり、本やらDVDやらのような、他の表現形態と同じように考えればいいのではないか。
(2)ゲームをやり続けるとキレやすくなる、犯罪を誘発する
北海道で起きたいわゆる「監禁王子」事件で、容疑者の部屋に多数の「その種のゲーム」があったという話もあるし、その昔飛行機をハイジャックして機長を殺害した犯人が「フライトシミュレーションゲームと同じように橋の下をくぐってみたかった」と言ったとかいう話もあるし、ゲームによって触発された犯罪が多くあるような論調の報道がよくある。そういえば「ゲーム脳」とかいうトンデモな説もあったな。このへんについては、やはり「ボウリング・フォー・コロンバイン」あたりを思い出すべきだろう。銃乱射事件を起こした高校生が、その直前にボウリングをやっていた。じゃあ銃乱射事件はボウリングのせいなのか?という話。
ゲームは犯罪を誘発する有害なものだ。ただしそれは、ボウリングが銃乱射事件を引き起こすと主張するのと同じ意味においてだ。監禁王子の事件で、容疑者は心理学関係の書籍を保有していたそうだが、それなら心理学関係の本も犯罪を誘発する有害図書ということになるな。
(3)ゲームにはまると現実の人と接することができなくなる
これもよくある。現実の人間と接することができないからゲームにはまる、とも。あれ、因果関係はどっちなんだ?専門家ではないから感想レベルだが、たいていの人間はゲームと接する前に人間と接する。人間と接することができない人間の多くは、ゲームとも接することはできないのではないか。
ゲームは現実の人との接点を失わせるから有害だ。ただしそれは、テレビがそうであるのと同じ意味においてだ。テレビにはまると、現実の人と接することができなくなる。ああテレビってなんて恐ろしいんだろう、一定時間以上見せないように規制しなければ、と思うのか?だったら、1日中テレビを流しっぱなしにしている電器屋の店員は、非常に危険な職業ということになる。
(4)ゲームばかりやってると勉強しなくなる
これは一番「プリミティブ」なやつだ。ゲームばっかりやって!もっと勉強しなさい!なんてどなってる親はどこにでもいるだろう。確かに、ゲームばかりやってれば勉強する時間はなくなる。ただ、ゲーム「だけ」しかやってない人というのは、そんなに多くないのでは?他にもいろいろやってるのに、なんでゲームがいけないことになるんだ?
ゲームばかりやってると勉強しなくなるから、ゲームは有害だ。ただしそれば、携帯電話が有害だというのとくらべれば、おそらくものの数ではない。ゲームにはまっている中高生の数よりも、携帯電話でのメールなどにはまっている中高生の数のほうが圧倒的に多いだろうと思う。ゲームを制限するなら、まず携帯電話を制限してからにしてくれ。
前にも書いたと思うが、ゲームに対する批判の大半は、その昔テレビやマンガに向けられていた。その前はロックだったりしたのだろうか。小説もそうかもしれない。要するに、そういう程度のものだ、ということだと思う。もちろん科学的な(ゲーム脳みたいなのじゃなくて)検証が必要ではあるが、そういうことより、ゲームに批判の目を集中させることで逆に見えなくなってしまうものがあることのほうがこわいと思う。
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