国会には今も床屋があるのだろうか
北九州市で、公務中の散髪を今まで認めていたとかで怒っている人がいる。
むろん同感なのだが、やや違和感がなくもない。
なぜ違和感を持つかというと、民間企業ではありえないとかそもそも考え方からしておかしいとか、とにかく強烈な叩きっぷりをみていると、「そんなこといえた義理か」という気がしてしまうからだ。
なんだかいかにも自分が年寄りになったみたいでいやなのだが、ちょっと(だいぶ、かも)前のことを思い出していただきたい。大きなオフィスビルの中に理髪店があるのは、別に珍しいことでも何でもなかった。ちょっと大きな企業の本社ビルにはたいてい理髪店があったし、理容師を社員として雇用しているのも当たり前だった。民間企業じゃありえないとかいう意見は、「今の」ということばをつければまあ大きくはずれてはいないが、一般論としていうなら、申し訳ないが言いすぎだと思う。そういう企業の理髪店では、当然ながら企業の営業時間内に客を受け入れることになる。営業時間内に理髪店に行くことは、必ずしも職務怠慢ではなかった。社長と専務が仲良くならんで髪(あまりなかったりすることもある)を切ってもらったりする光景がよくみられたのだ。
役所も例外ではなかった。北九州市が叩かれているが、庁舎内に理髪店がある自治体は、少なくとも少し前までは、かなり多かったものと想像する。議員秘書の方が書いているこんなページを見つけたのだが、ここには、国会の中にも理髪店が入っているという記載がある。このページは2001年に書かれたもののようなので、今もあるのかどうかはわからないが、少なくとも2001年時点ではあったのだ。他の役所も状況はさほどかわらないと思う。
もちろん、今のご時世、昼間から職員が理髪店に行くのが当然という考え方はありえない。だから北九州市を擁護するつもりもないのだが、他のオフィスには床屋なんかありえないといわんばかりの糾弾のしかたは、ちょっと悪乗りしすぎではないか。私よりも上の年代の人なら、そういうことを知っている人は多いはずなのに、なぜ黙っているのだろう。問題は「床屋がある」ことではなく、「まだ床屋がある」ことなのではないだろうか。
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Comments
私も以前(と言っても 20 年近く前ですが)、仕事が非常に忙しかった頃、本社ビル内の床屋でヒゲを剃ってもらったり、シャワールームで一浴びということがありました。さすがに不潔なままでは、顧客と相対することもある業務に差し支えましたし。
あと、現在でも、例えば女性ワーカーのための託児所といった施設はより必要になってくるでしょう。
アメニティと福利厚生を厳密に分けて考える必要はあるのかもしれませんが、そのいずれをも否定するような論調がもしあるとしたら、私としてはやはり承服できませんね。
Posted by: McDMaster(マナル店長) | November 19, 2005 11:22 PM
McDMasterさん、コメントありがとうございます。
会社に入ったばかりのころは、土曜日も半日営業していたのですが、朝9時に来て9時半から11時半まで近所の喫茶店で「打ち合わせ」をしている副部長(私もよく付き合わされた)とか、飲んだ翌日によく親戚に不幸がある先輩とか、いろいろな方がいました。会社は変わらないようで、いろいろ細かいところでどんどん変わっています。当時からみると、今はかなり締め付けがきつくなっているな、という気がします。
それはそれとして、アメニティのほうは、ぜひ充実してほしいですね。特に男女機会均等の関連は、企業の社会的責任の一部ではないかと思います。
Posted by: 山口 浩 | November 19, 2005 11:58 PM