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November 07, 2005

ゲーム内経済学:課金システムと「消費の楽しみ」

数日前に見かけた記事「『網絡同居』 - 中国のホワイトカラーがハマる擬似同棲」が興味深い。

記事で紹介されている「iPartment」は、もともと台湾でサービスされていたものが中国に進出したということらしいので、一応両方見てみた。基本的には、よくあるアバターサービスだ。ただし一般的なアバターサービスが個人単位なのに対して、こちらはペアであって、しかも出会い系の要素が加わっている。会員登録をすると、自己紹介をして相手を探すことになるわけだが、中国版ではけっこう自分自身の写真を使っている人が多い。で、台湾では10代が多いようだが、中国では、記事にもあるとおり20代以上が多い。中国では10代がこういうサービスを利用するのはあまりよろしくないのだろうか。

考えてみればアバターサービスは、一種のオンラインゲームだ。通常のMMORPGでは、冒険だの商売だの、なんらかゲームのテーマがあって、それに付随するかたちでキャラクター同士の交流がある。ただ実際には、ゲームそのものよりもチャットツールとして使われていることがけっこうある。アバターサービスはその部分だけを取り出したもの、といえなくもない。RPGとちがって現実の自分をより強く反映したアバターだが、現実にも会ったりするのだろうか。もしそうなら、ゲームはゲームでも「ちがった種類」のゲーム、ということになるのかも。

ともあれ、似たサービスである以上、「iPartment」のようなサービスから、ゲームが学ぶべきことがあるかもしれない、と考えてみる。

オンラインゲームの語彙を使えば、「iPartment」はアイテム課金制だ。アバターサービスではお決まりのシステムだが、アバターが着る服や部屋を飾るアイテム、さらには部屋の「家賃」は現金で販売され、運営会社の収入となる。オンラインゲームの場合、サービスの需要曲線を考えると、下図の(a)のように月額課金制では消費者余剰はプレイヤーのものとなるのに対し、(b)のようなアイテム課金制では余剰の多くがゲーム会社に移転する。いわゆる"two-part pricing"だ。

gamepricing


図は「他のもの一定」という経済学お決まりの前提をおいているから、実際の効果がどうとはいいづらい(サーバの負担とかもちがうだろうし)が、アイテム課金制にすると、顧客ベースを拡大するとともに、より高い価格を払ってよいと思う人に高い料金をチャージできることで、効率よく収入を挙げられるようになる可能性はある。ある種の消費は、他人に見られることで楽しさが増す。アイテム課金制の下でお金をつぎこむ人は、基本的には自慢したいという欲求が動機になっていると思われる。

このような効果は、当然ながらアイテム課金制のMMORPGでも考慮に入れられているのだろう。しかし「iPartment」は、金を使う際に気にするべき「最も身近な他人の目」を用意した。それが自分の選んだパートナーだ。しかもその結果をランキングにしてユーザーコミュニティに広める工夫をしている。ここではアイテムに金を投じることが「愛情」の「証明」となるわけで、いわば「愛情競争ゲーム」だ。アイテム課金は、「ゲーム会社が儲けている」という印象をもたれるおそれがある。これを避けるためには、いかに「消費の楽しさ」を演出するかがカギとなるだろう。異性の目は、サイフを開かせるためのきわめて強力な道具になる。MMORPGにも結婚システムを持つものはあるが、ここまで徹底したかたちで「最小のコミュニティ」を収益機会としている例はないだろう。コミュニティ性を重視するというのであれば、ゲームにもこのようなしくみの導入を検討してもよいかもしれない。

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Comments

へ~、面白っ。
ゲーム空間に実生活を投げ込むような感覚がしました。
家具、例えばリアルテレビ購入金額30万円とした場合の1ヶ月当たりリース料はどのぐらいか気になりました。
んが、自分はやるかとなると、自分のリアル写真を載せて金持ちを気取るのも虚しいような。知ってる人に見られたら恥ずかしい。

Posted by: でんすけ | November 07, 2005 11:19 AM

でんすけさん、コメントありがとうございます。
日本でも、「matchi.com」あたりだと写真掲載が少なくないですね。「真剣度」の問題なんでしょうか。

Posted by: 山口 浩 | November 07, 2005 06:47 PM

ゲーム内でのコミュニティにおいて自分をよく見せるという目的でアイテム課金を行う、
という消費の動機は「ゲーム内経済学」では一般的な認識なのですか?
それとも、あくまで「iPartment」のような仕様のサイトでのみ通用する「消費の楽しさ」の演出方法の一種なんでしょうか?


仮にプレイヤーの大半がゲーム内でのコミュニケーション目的にゲームアイテムやシステムに課金しているとしたら、需要から逆算したゲーム設計(インフレ策)も可能なのでは?と思い質問させていただきました。

Posted by: sharaku | September 12, 2014 03:25 PM

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