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November 25, 2005

ここがわからない:メディアの政権批判は減っているのか?

書きものをしようとして、自分がいかにものごとをわかっていないかを痛感することが多い。そういうとき、たいていはわかっている範囲で書いたり、ある程度調べたり勉強したりしてから書くようにしている(にもかかわらずとんちんかんなことを書いてしまうことも多いが、それは能力の限界ということで)のだが、それだけだとなんというか「腹ふくるる業」となってしまう。

というわけで、わからないものをわからないと書いてしまおうと思う。題して「ここがわからない」シリーズ。

第1回はこれ。

nikkeibpで、経済アナリストの森永卓郎氏がコラムを連載しているのだが、2005年11月24日付のコラムは「大方のメディアから締め出された政権・政策批判」というタイトルがついていた(記事詳細はこちら。要無料登録)。

要は、9月の衆議院総選挙で自民党が圧勝して以来、メディアにおける政権・政策批判がなくなってきているという指摘らしい。こんなことが書いてある。

テレビに登場する評論家たちを見るといい。総選挙前には、あれほど小泉首相の批判をしていたというのに、自民党が圧勝するや、まるで雪崩のように小泉応援団に変わってしまった。
私が注目しているのは、ある女性評論家である。総選挙前は歯切れのいい小泉批判をして人気があったのだが、いつのまにか小泉応援団にまわってしまった。
その結果、何が起きたか。不思議なことに、その直後から彼女がテレビに登場する回数が激増したのである。
一方で、私は相変わらず小泉首相の政策を批判し続けている。そして、これまた不思議なことに、私に対するテレビの出演依頼は、小泉内閣の支持率に反比例して急激に減っているのである。

ここがわからない。

そんな女性評論家いたっけ?というあたりもさることながら、そもそもメディアにおける政権批判って減ってるのか?いやもちろん数えたわけじゃないが、あちこちの雑誌やら新聞やらの見出しとか、テレビなんかの論調をみていると、別に減ったとは全然思わない。今日いくつか見たテレビ番組でも、政府系金融機関の統合問題とか、三位一体改革の中の義務教育費国庫負担問題なんかが取り上げられていたが、いずれも政権に対する批判的なトーンであり、小泉首相のリーダーシップ不足やら強引な政権運営やら(どっちなんだよ)に対して苦言を呈する類のものだったと思う。少なくとも、「小泉応援団」がメディアに跋扈している状況とは、とても思えない。本当なんだろうか?どなたか事情を知っている人がいたら、ぜひ教えていただきたい。

人に聞くだけではどうかと思うので、自分でも少し考えてみる。ご自分への仕事の依頼が減ると、それが政権批判をやめないからだという結論になるようで、コラムでは、作家の宮崎学氏やエコノミストの植草一秀氏なんかも同じ意見、と書いてある。宮崎氏はともかく、植草氏のほうはちがう理由のような気がするのだが、まあそれはそれとして。で、世の評論家諸氏も生活がかかっているから事情は理解できるとし、森永氏自身については、慶応大学の金子勝教授などと同様、定職があるからまし、としている。

その点、私や金子勝氏は、幸いにも経済評論以外の収入があるので、なんとか生活はできる。金子氏は慶応義塾大学の教授であるし、私にしても「オタク」や「おもちゃ」といった分野での仕事が増えているので、経済評論の仕事が減っても、実害はないとはいえばない。

ふうん。まだわからないままだが、ひょっとしたら、と思ったことがある。あくまで仮説、だが。

(1)政治やマクロ経済といったテーマ自体がメディア的に「ホット」でなくなったために、評論家業界全体の需要が低下しているのではないか。森永氏は、「女性評論家」の出番が増えたと憤っているが、ひょっとしたらその女性評論家も「最近自分の出番が減った」と悩んでいるかもしれない。「隣の芝生は青い」っていうし。誰しも人は、いいことは自分の成果、悪いことは他人のせい、と考えがちだ。それに、日本の経済評論は悪いことをいわないとウケない、と聞いたことがある。ひょっとして、それまで森永氏の出番が多かったこと自体が、森永氏の人気のゆえというより、経済情勢がよくないという外部の事情によるものだったということはないだろうか。

(2)森永氏は最近とみにオタク関連の評論家としての名声が高まっているが、これが「本業」の経済評論の仕事の依頼に悪影響を及ぼしているのではないか。経済評論の重要な得意先である中高年層の「マジメ」な人たちにとって、「オタク」評論家といったレッテルの人物にご意見を拝聴するのはちょっと、と引かれてしまっている、なんてことはないだろうか。別にオタクを差別するつもりはない。私はその方面に関して世のサラリーマン諸氏よりはるかに理解があるつもりだが、近著の「萌え経済学」を書店で手に取るのはちょっと気が引ける。「なにもそこまで」感というか、「あっち側に行っちゃった」感というか、とにかく引かせるものがあるのだ。

真相は依然としてよくわからない。ぜひ皆様のご意見を聞きたいのだが、個人的な感覚では、森永氏はご自分の「ポジショニング」をもう一度検証されたらいいのではないか、と思ったりする。いっそ突き抜けて「コスプレ経済評論」なんてやったら新しい顧客層を開拓できるかも。コミケで経済書を売るとか(来場者が全員買ったら30万部、だぜ)。

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Comments

女性評論家で思い当たるのは、櫻井よしこ氏でしょうか。負けない議論で、保守系の人達に人気があるようです。
森永氏は、知識のない外交や防衛等の国際政治分野でトンチンカンな発言をして、締め出されたんじゃないでしょうか。
おかげさまで、今回は保険免責制度の導入は見送りになりました。

Posted by: nami | December 03, 2005 11:08 AM

namiさん、コメントありがとうございます。
櫻井よし子さんですか。なるほど。あの方なら、外交とか政治とかの考え方でも森永氏とは対立点が多そうですね。でも櫻井さん、小泉首相にすり寄ってましたっけ?うーんわからん。
保険免責の件、私のおかげではもとよりない(当たり前)ですが、お考えに沿った結果になってよかったですね。さて、では医療保険制度、どうしたらいいんでしょうか。素人ですが、このままでいいとは思えないもので。

Posted by: 山口 浩 | December 04, 2005 09:47 PM

「萌え経済学」読みました。40分で読了。
本当にひどい本でした。関連産業に暮らしているからこそですが、読んでて本当に頭に来る本でした。
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数字は浜銀のデータぐらいしかなく。
伝聞情報多数。
人の議論に付け足す形での展開+思い込み。
各ビジネスモデルも裏取りなし。
雑誌取材で言った体験ロケ話だけ。
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唯一読めるのは、ご本人の領域のコレクターの部分だけ。

どれぐらいひどいかのサンプル。
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 私が見知っている限り、アキバ系の人たちほど、おとなしくて、やさしくて、人を傷つけるのを嫌い、人から傷つけられるのも嫌い、そして法律や社会ルールを守る存在はいない。それでは、小林容疑者の事件(注:札幌の監禁事件)はなぜ起きたか。それは、彼がアキバ系の人間ではないからだ。(P.202)
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また、ブロッコリーとタカラが「萌え」産業企業として絶賛されてるけど、どっちも業績ガタガタだぞ。なんで、明らかにそうなったのかをちゃんとリサーチしてない(というか、業績悪化については一言も言及なし。すでに去年からその兆候ははっきりでてたのに)。それがわからなければ「萌え」産業の本質はみえんだろう。ちょっと裏とれば、すぐわかるようなことが、この人の本からは抜けてる。

こんないい加減な本に「経済学」なんて付けて、世間に「萌え」についても間違ったイメージを売るのはやめてくれ。「経済アナリスト」なんて名乗ってるからさらに話が変になる。

(個人の意見なのでメアドは、個人アドレスでご容赦ください)

Posted by: shin | December 20, 2005 12:10 PM

shinさん、コメントありがとうございます。
手に取った勇気と、簡潔にして充分なレポートも、ありがとうございます。
ご指摘のとおり、最近、「萌え」も「オタク」も適当に使われてるので意味がぼやけてしまって、すっかりことばとしても陳腐化しちゃいましたね。おなじことが「経済学」についてもいえてて、ただの金勘定の話が「経済学」になっちゃうのはなんとも嘆かわしいです。
氏はフリーではなく超のつく高給取りですが、ご自身のコレクションを飾る博物館建設資金を貯めるため、せっせと本を書かねばならないお立場の様子。氏なりに目標に向かってがんばっているのでしょうね。

Posted by: 山口 浩 | December 20, 2005 08:01 PM

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