「ゲーム内経済学という考え方」配布資料
先日このサイトでも告知したのだが、東大ゲーム研究プロジェクトの研究会で話をする機会があった。その際、行きたいのだが行けないという方がいらっしゃると聞いたので、とりあえず配布資料をアップしておく。
資料はこれ。音声ファイルもあって、公開できたらしようと思うのだが、テクニカルな問題が若干あるのと、一応聞きなおしてからということで。
当日その場にいらした方以外にはほとんどわからないであろう追加説明を少し。
中に出てくる「MUDflation」について、自分では存在を確認できなかったのでそのように説明したのだが、出席者の方から、日本のMMORPGでも似たような状況があるとのお話をいただいたので、その点を訂正したい。私の説明は、ゲーム世界内でのアイテムと貨幣の量にバランスがとれているのではないかというものだったが、もし価格上昇がみられるとするなら、貨幣のほうが相対的に増えているということになるのだろう。ここでいう「貨幣」にリアルマネーを含めたほうがいいかどうかは議論の余地があるが、多少なりと影響を与えているであろうとは思う。
なんのことだかさっぱりわからんという方は、また別の機会に。
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Comments
山口浩さん、こんにちは、
非常に興味深いですね。ゲーム世界はインフレ気味になるというのはよくわかります。昨日某所で某方々に「貨幣でなにを買えるかはそれを使う人々の生産能力に比例する。よって、貨幣は消滅しうる。」と議論をふっかけ「それは経済がわかっていない。貨幣に対する期待がすべてだ。」と言い切られ軽く論破されてしました。
で、なにを言いたいのかというと、中国の奥地では貨幣を使うよりも物々交換にまで立ち戻っているという話をうそかほんとか知りませんか聞いたのですが、情報の流通が限界までスムーズであれば貨幣を媒介としな物々交換が成立しうるのではないでしょうか?ということは、ゲーム内経済での物々交換というのもかなりの比率で存在しえ、立派な経済活動だと想うのですが、この辺の研究とかあるのでしょうか?
Posted by: ひでき | November 20, 2005 04:25 PM
ひできさん、コメントありがとうございます。
「貨幣に対する期待がすべて」というのはちょっとわかりにくい表現ですね。何がいいたいのか私にはわかりません。
貨幣でないものが貨幣の役割を果たす経済はざらに存在します。もともと貨幣の歴史をひもとけば、原初時点の「事実上の貨幣」にいきつくことがよくあるわけで。貨幣の機能を満たす財であれば、現在でも貨幣の補完物となりうることは当然の帰結です。ゲーム内でも、アイテムが事実上の貨幣として使われることがよくあります(研究は聞いたことがありませんが)。ただし現在ある貨幣をすべて置き換えてしまうほどのものを想定するのはちょっと「大胆」ですね。それに、貨幣のような特殊な機能の財を持つことは一般に経済にとって有益なので、現行の貨幣かどうかはともかく、そういう機能の財が「消滅」してしまう事態は考えにくいです。
Posted by: 山口 浩 | November 21, 2005 10:45 PM
なんだかコメントがエントリの主旨から外れていっているような気がするのは私だけでしょうか?
まあしかし、ゲーム内の「財」はそもそも規模の利益を生み出さないと仮定するならば、価格が逓減しないというのもわかる気はします。
あと、物々交換については、例えばオープンソース・コミュニティではいっとき「贈与経済」、つまりある経済主体の余剰物を他の主体の便益に供することによって成り立つ経済というものがまことしやかに唱えられていたことがありますが、私は、それも楽観主義に過ぎるという見方をしています。
詳細は割愛しますが、ご興味のある場合は適切なチャネルを通してコンタクトしてください。くれぐれも、わがブログのエントリに関係のないコメントなどをしないようにw
Posted by: McDMaster(マナル店長) | November 22, 2005 07:20 AM
McDMasterさん、コメントありがとうございます。
経緯はよくわかりませんが、なんだかご気分を害されたようで、申し訳ありません。
ゲーム内の財に「規模の経済」が働かないというのは、デジタルであるがゆえに限界費用がほぼゼロであるという意味でしょうか?ゲーム会社にとっては確かにそうですね。一般的なMMORPG内のプレーヤーにとっては、パーティを組むとモンスターを倒しやすくなるので、規模の経済の要素はあるのではないかと思っています。
あと、「物々交換」と「贈与」は若干ちがうように思いますがいかがでしょう?前者は守らなければならない契約がベースですが、後者は相手の善意への「期待」がベースですから。
いずれにせよ、記事の趣旨は「オンラインゲーム内に経済が発生する」という内容のプレゼンの資料を提示するというだけのものです。それ以上のものでもそれ以下のものでもありません。
ともあれ、お騒がせしたようでしたらお詫びいたします。
Posted by: 山口 浩 | November 22, 2005 01:16 PM
講演は本当にありがとうございました。
それで、週末に来日されたウィ先生にお会いしたのですが、韓国のMMORPGのゲーム内で、まさに今マクロ経済がわかる学生がいないか?といった、問い合わせが来たりするケースがあると聞きました。ゲーム内インフレをどのように吸収するのかは本当に切実な問題になっているそうです。
やっぱり人数の桁が違うこともあって、通貨政策の問題は切実な問題になってきているようです。そのために実際に実施しているアイデアが、まさに期せずして、バートルの指摘の通りのことをやっているということを聞いて驚きました。やはり、韓国で起きている事例の中にはまだ北米にまったく紹介されていないけど、このあたりのことについて、世界的に先端をいく状況というというのが確実に生まれているようです。
今は企業内のノウハウで乗り切ってますが、それを今後はマクロ経済のツールの使い方を知ってる人が、運営やゲームデザインに求められていくようになることは十分にあり得るだろうという予測をされていました。
今年は、ウィ先生は、ゲームだけでなく、RMTまでも組み合わせたMMORPGを使った経営戦略の授業を大学の講義で展開されているそうです。
Posted by: shin | November 27, 2005 11:50 PM
shinさん、コメントありがとうございます。
ううむ、進んでますねぇ。
これはひとつ、いろいろ教えてもらわないといけないですね。
個人的には、RMTのない状況でもインフレが起きるのかどうか、どのくらい差が出るのかは気になるところです。
Posted by: 山口 浩 | November 28, 2005 02:07 AM