「談合をやめる」と談合した話
新聞の見出しには、たまにとても面白いものがあって楽しめるのだが、今朝の朝日新聞の1面トップ記事の見出しは爆笑もの。
ゼネコン4社「談合と決別」
鹿島・大成・大林・清水 申し合わせ
独禁法 制裁強化受け
「談合をやめましょう」という談合をしたわけだ。一瞬、ウケ狙いか?と思ってしまった。
実際、4月1日ならまさにぴったりの内容ではないか、と思う。ちょっと早かったな。
「申し合わせの存在について、存在を認めた1社を除く各社の首脳らは『知らない』『申し合わせはしていない。社独自の経営判断で法令順守に努める』などとしている。取材を申し込んだが、回答がなかった社もあった。」
と、申し合わせの存在を否定するところなんか、談合まるだしだったりするし。
いや、談合がなくなるならもちろんけっこうだし、期待したいところだが、談合をやめるためにも談合が必要だというのも、根が深いな。こんどは入札のたびに、「この入札では談合をしない」という談合をするようになったりして。
※2005/12/29追記
「爆笑もの」と書いたのだが、記事を書いた側の方々はおおまじめだ。朝日のスクープなのだろう。そのあたりがまたおかしい。ほら、コメディとかに出てくる人って、自分では絶対笑わないでしょ。モンティ・パイソンでもMr. ビーンでも。
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Comments
買う側にとっては、ある程度の価格の目安は欲しいものなんですが。たとえば家電の店頭価格が「オープン」と書かれていて、値引き交渉に持ち込みづらくなった経験は、おありではないでしょうか?
談合も、それによって価格の吊り上げ(=不当な利益を得る目的)が顕著なら摘発すべきでしょうが、逆に「価格の『叩き合い』」→「手抜き受注の横行」→「安全性・セキュリティの低下」という連鎖を招いてしまっては、それこそ本末転倒なわけですし。
Posted by: guldeen | December 29, 2005 03:30 PM
もちろん談合はいけないことです。
しかし、この主張は、例えば医者も自由競争で値段決めろ、という主張と何が違うんだろう、と私のような素人は考えてしまいます。
技術が必要な市場に、無理やり価格競争をさせているところに談合の原因があると思うんですが、どうなんでしょうか。
医者や床屋や新聞屋が値段を調整するのは正しくて、土建屋が値段を調整するのは悪、という決め付けは違うように感じています。
Posted by: masaki | December 29, 2005 10:53 PM
guldeenさん、 masakiさん、コメントありがとうございます。
競争入札という制度は、経済学的にはファーストプライス・シールド・ビッド・オークションと呼ばれるものですが、これがうまく機能するためには工事の品質に関する情報の非対称性がない、つまり発注側が工事の品質を適切に見極められることが必要です。これがうまくできないためにいろいろな問題が起きているわけで、入札改革の中にもVE方式のようにこの点をなんとかしようという方向のものがあります。
ただ、入札というしくみ自体に業者の利潤動機と値下げ競争のジレンマがある以上、談合による手っ取り早い解決を指向するインセンティブはなかなか根強いですね。
この点に関して、ちょっと大胆な、でもひょっとしたら面白い提案をしようと考えています。来年東洋経済新報社から出る本(共著)の中に収録される予定です。発売されたらまたお知らせします。
ご指摘のような、ほかの分野との比較については、要するにメリットとデメリットの比較の問題ですね。自由競争による消費者側の利益と、それによる弊害との比較です。一般論としては、情報の非対称性が顕著な場合や、零細事業者や地域経済の保護が必要な場合などは、自由競争の弊害が大きくなります。それぞれに即して考えなければいけないのでしょうが、一方で個別性ばかりを強調するのも不適切かと思います。問題は、建築ばかりではないはずですよね。
Posted by: 山口 浩 | December 30, 2005 02:18 AM
確かに、面白い話です。爆笑してしまいました。^^;ありがとうございました。
Posted by: イプログダイレクトの店長 | December 31, 2005 08:37 AM
イプログダイレクトの店長さん、コメントありがとうございます。
いや、おもしろうてやがてかなしき、というか、笑い話じゃないんですよほんとはね。なんだかなぁ。
Posted by: 山口 浩 | December 31, 2005 02:42 PM