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学校で教えるべきなのはこういうものに関する「常識」なのではないだろうか

世間を騒がせているマンションの構造設計に関わる虚偽事件だが、不動産関係の方々と話していると、あまりおおっぴらにはいいにくい意見、というのがあるようだ。

つきつめていうと、「自己責任論」ということになるんだろうが。

要するに、あれだけ単価が安かったらおかしいぞと気づいてしかるべきではないか、ということだ。全部がそうなのかは知らないが、報道なでみると坪40万円以下の建築費なんていうのもあったようだ。いやこれはさすがに鉄筋コンクリート造にしては低すぎるだろう、といいたくなるのだが、同じようなことを業界の方々も考えているらしい。ただ、今はとても口にできなさそうなので黙っている、といったところだろうか。(※2005/12/12追記。知り合いの中でそう考えている人もいた、ということ。「業界を代表する意見」ではもとよりない。スジとしてこういう意見を不動産業界からいうのはおかしい、というバランス感覚もあろう)

素人なんだから知らなくて当然だ、事業者に責任がある、いや制度の不備を放置した官僚が、といったあたりが世間的に通っている(政治的に正しい)評価ということになるんだろうが、暴論を承知でいえば、高い買い物なんだから勉強しておいてもおかしくないではないか、という逆の見方もありうる。同じようなことを考えているのだろうか、はてなにもこんな質問があった。

問題となっている偽装マンションは、相場に比べて販売価格はどうだったのでしょうか? 具体的に×坪で×円、その周囲のマンションの相場は×円、といったことをご存知でしたら教えてください。よろしくお願いします。

今回の話って、金融系で似たものがよくある。「元本保証で年利20%、ウソみたいだけどホントの話、あなただけに!」なんていう類だ。こういうのはさすがにおかしい、という知識がだんだん広まってきたわけだが、不動産分野だって、「このくらいは知ってなくちゃ」的な基礎知識というのはあるはずだ。悪い金融業者にだまされてあやしげな資産運用商品に虎の子の老後資金を預けて、なんていうケースがあったとき、「政府が買い取れ」という議論が起きたことはないのではないか。もちろんマンションの場合は構造設計に欠陥があれば周囲にも危険だという事情があったりするが、これを理由の1つとしているのは、「だまされた」点そのものは自己責任という判断がどこかにあるからだと思う。建築確認という点で政府が関与しているにせよ、不動産の売買は民間の取引だ。

で、思うのだが。

具体例から離れて一般論として考えてみる(そうしないとどうしても感情論が先に立つ)と、本来、国民はこういうものに「だまされない」知識をもっていてほしいではないか。こういうものについての知識は、一般人が世間で生きていくうえで、二次方程式の解の公式やら正弦定理やらケプラーの第2法則やらなんかより重要だとは思わないか。学校で教えるべきことに関する議論はさまざまあろうが、金融でも不動産でも、「うまい話にだまされないために必要なチェックポイント」みたいなものをもっと大きく取り扱ってもいいような気がする。

いうまでもないが、上記の話は、偽装をやった業者やらそれを見逃した検査機関やら行政やらの責任がないとかいっているわけではない。ただ、今回のケースだけを特別扱いするのはどうも違和感がある、ということだ。この例だけに限定して「悪い奴は誰だ」みたいなことをやっているだけでは、問題の根は変わらない。この件の責任問題は第一義的にはこれは瑕疵担保責任の問題で、業者がその資力の限りで賠償すべきだから、抜本的な対策として信用補完手段が今後もっと重要な要素になってくるのではないかと思う。政府が土地の買取までやるのはどうもよくわからないが、もしやるなら他の同様のものにも同等の対応をしなければならないと思う。検査のやり方は知識がないのでアイデアはないが、なんらか改善する手段があれば当然やるべきだ。それらを前提としてだが、国民の側にも「もっと勉強しようぜ」という機運が高まっていくべきではないだろうか。高校とか大学のカリキュラムは、そのあたり意識していったほうがいいと思う。

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Tracked on December 18, 2005 at 09:56 AM

Comments

異論はありませんが、難しい問題ですねえ。

私はそれより退去命令を出すってことに疑問が・・
ま出さざるをえないんでしょうけど・・
倒壊したら周りに迷惑がかかりますからね。

生活のレベルを落とすって切羽詰ってなきゃそう易々とできるものではないでしょう。
100㎡に住んでた人がいきなり市営住宅に移れって言われても、おいそれと引越しはできないだろう事は想像が容易です

Posted by: こえだ | December 12, 2005 at 04:50 PM

こえださん、コメントありがとうございます。
まさしく、ご本人方のお気持ちは想像を絶します。「一生の買い物が」っていう表現、本当に身につまされます。それでも政府としては、ご本人方や周辺住民の方々の安全も考えなければいけませんからね。少しでも「より」納得できる結果になればと思うのですが。

Posted by: 山口 浩 | December 12, 2005 at 05:25 PM

株や外貨預金なら、何回も投資を繰り返すわけですから、学習コスト(時間と費用)は苦にならないでしょうけど・・・。
住居を買うような、一生に一度クラスの買い物については、学習コストが割に合わないような気がします。
山口さんのおっしゃっていることは「最低限の常識」は身に付けておくべきということなのでしょうけど。
アメリカみたいに不動産投資が一般的になれば、解決されるのですかね?

Posted by: どど迷路 | December 13, 2005 at 01:39 PM

どど迷路さん、コメントありがとうございます。
学習のために要するコストについては、それほど心配する必要はないのではないか、と思っています。
多くの人が一度しかやらない、たとえば「結婚」とかいうことにしたって、けっこういろいろ情報が出回っていて、アドバイスしてくれる人たちがいて、それなりに知識を身に着けて臨むことが多いのではないでしょうか。
学校でできることは、「他と比べて圧倒的に有利な話は疑ってみる」「セカンドオピニオンをとる」「質問を遠慮してはいけない」「その会社が倒産したら自分たちはどう守られるのか調べてみる」みたいな一般論を叩き込むことぐらいでしょうが、それでもかなり役に立つのではないかと思います。楽観的すぎるでしょうか?

Posted by: 山口 浩 | December 13, 2005 at 02:09 PM

ものすごく賛成です。

Posted by: ひでき | December 13, 2005 at 02:39 PM

わが国では伝統的に物事を疑う考え方はあまり歓迎されなかったので、教育においてもそのへんは及び腰になりがちなんじゃないでしょうか?ここらへん文化的な影響が強いとは思います。大新聞に広告が出てるだけで簡単に信用したりしますよね。あと、デフレによりあらゆるモノの値段が下がっているので、相場観が狂ってしまってる可能性があります。それか、安いのは革新的な企業努力の賜物と思い込んだか・・。ひねくれた考え方かもしれませんが、最近の「改革ブーム」で何か従来にはなかったサプライズなことがおきても驚かないというか、無用心な心構えが助長されてるような気がしてしょうがないんですが。無知に付け込んだ悪徳商法やトンデモも跋扈してますし。どうも嫌ですね、この空気は。

Posted by: すなふきん | December 13, 2005 at 07:55 PM

概ね賛成といったところです。
確かに買い手に対して過失を問う意見は少ないような気がします。
給料何年分にも相当するような買い物をするにあたって、何の知識も有しないのが半ば当然のような風潮があるのは恐ろしいことかもしれません。

しかし、それを学校で教えるというのはまた別問題じゃないでしょうか。
私見になりますが、学校というのはその騙されない知識、世間において役に立つ知識を身につける為の基礎を学ぶ場ではないかと思います。
実際に「騙されない」ためのテクニカルな部分を学校に求めるのは少し的外れかな、というのが素直な感想です。

Posted by: ふじはら | December 14, 2005 at 02:26 AM

コメントありがとうございます。

ひできさん
業界の方々はなかなかいいづらいでしょうね。「けしからん」はともかくとして、システムをどうするかという議論は冷静に進めないといけないと思います。

すなふきんさん
ええと、アメリカでも田舎にいくと、家のドアにカギをかけなかったりします。「伝統」というと話がそこから先へ進みませんが、少しでもよくしていこうとしていけば、だんだんよくなっていくのではないか、と楽観的な私は考えたりしています。カギは情報公開と相互チェックですね。

ふじはらさん
ええと、学校で「テクニカルな部分」を教えよというつもりはありません。ただ、社会人として知っておくべき常識の類は学校で教えてもいいのではないかと。事情をよく知りませんが、高校の「政治経済」だかなんだかで、クレジットカードのしくみと使い方みたいな授業はやってるんじゃなかったでしたっけ?その種のもので、学校で教えておいてほしいこと、いろいろありますよね。「契約」という考え方、消費者ローン、ねずみ講への対処、資産運用、不動産賃貸借、著作権、…。そういうものの1つとして、不動産売買を入れてもいいんじゃないかと思うんですが。週1コマで1年間あればけっこうなことができると思います。

Posted by: 山口 浩 | December 14, 2005 at 09:33 AM

私は義務教育とは、倫理観、リテラシーや学び方を培う場所であって、本当に学ぶのは個人の努力に他ならないと思っております。
世の中は細分化され、科学や法律の常識は日々更新されるのが常ですし、新たな分野も開拓されてゆきます。
講座で点数を稼ぐのが勉強と思われるようになってしまったのは悲しいことです。

Posted by: @c | December 14, 2005 at 05:57 PM

大筋同意した上でその先の事柄についてですが、何でも学校で教えてくれれば、という方向性はちょっと無理があります。学校で教わっていればというのは、国がきっちり設計書を確認しておればよかったのに、というのと同じじゃないですか。
現状の教育現場ではそのような余裕はありませんし、個別の事項について注意点を教育するのでは際限がありません。
購入する側にも多少なりとも騙されない責任、騙されないための情報を得るためのスキルを与える教育、必要な専門的情報を公開されたnet等のメディア、が必要なんじゃないですか?

Posted by: とおりすがり | December 14, 2005 at 07:44 PM

コメントありがとうございます。

@cさん
「学ぶ」という行為に関して、学校ができることはもとより限られています。ただ、限られているからといって役に立たないわけではなく、むしろ学校には学校の役割があり、そのほかの機会での「学び」と合わせて考えなければならないのでしょうね。現在、生活上必要な知識が圧倒的に不足しているように思われますので、基礎を学校で教えて、その後いろいろな方法でフォローするような方向がいいのではないでしょうか。

とおりすがりさん
何でも学校で、とは書いてないと思うのですが。今回のような問題が今後発生しないようにするためには、さまざまな方面の対策が必要だという点は本文に書いたとおりですが、国民がもっと賢くならないと、という点に関しては、学校が果たすべき役割というのもあるのではないか、と思うわけです。もちろん細かいところまではできないでしょうが、学校で基礎を学ぶことは、その後社会に出て自分でさらに学んでいく際の効果を大きく高めると思います。私のバランス感覚では、このような知識は高校レベルの物理や数学の知識(漢文とか音楽とかも)よりもはるかに実用性が高いように思われます。そのためにカリキュラムを変更してもいいのではないか、といったレベルの話ですので、現在の教員が対応できない、というのは理由にならないと思います。当面は、銀行とか住宅会社とかから講師を派遣してもらうなんて方法をどんどん取り入れてはどうですかね。

Posted by: 山口 浩 | December 15, 2005 at 12:13 AM

とおりすがりさん
書き忘れました。「概ね同意」いただいてるんでしたよね。私も「概ね同意」です。
「購入する側にも多少なりとも騙されない責任、騙されないための情報を得るためのスキルを与える教育、必要な専門的情報を公開されたnet等のメディア、が必要」だと思います。「クレジットカードをもらったらすぐサインをしろ」レベルの実用知識に相当するものは、不動産分野でもカバーしておいていいと思いますね。

Posted by: 山口 浩 | December 15, 2005 at 12:57 AM

私の欠陥住宅は、雨漏りで床上浸水になる家でした。
何回ものクリスマス・お正月は醜い腐ったフローリングと、カビだらけの部屋。
去年の11月18日にニュースの森で特集番組として放送されました。
去年の私のクリスマスイブは、自己破産の依頼を弁護士に依頼して、1人東京を歩いていました。
今もまだ、自己破産の手続き中です。
支援は一円も無く、固定資産税見直し依頼しても相手にしてもらえませんでした。
うちも、検査機関がしっかりチェックしてくれれば苦労は無かったはずです。
おまけに建設省が構造の欠陥に気が付くべき部分もありました。
世の中は不公平の中に成り立っているようです。
特に自民・公明政権となってから、酷くなったように思います。
無理を通せば道理引っ込む。まさに今の世情ですね。

Posted by: れすっ子 | December 18, 2005 at 04:44 AM

れすっ子さん、コメントありがとうございます。
無念のお気持ち、推察するに余りあります。
今日テレビで見ていたら、今回政府が対策として打ち出したものはすべて既存の制度であるとのこと。にもかかわらず、なぜか妙に手厚く感じるのは、通常では考えられないほどすばやい対応のせいでしょうか。
耐震性に問題のある建物は、今回のマンションだけではないはずです。今回の対応は、それ全部に話が及ぶのをなんとかして食い止めようという感じがぷんぷんと漂っているように思えてなりません。
私の書いている一般論など何の助けにもならないと思いますが、金融に関連する仕事をしている私としては、こうした問題に金融面でもっとできることがあると主張していくことで、私なりにできることをやっていきたいと思います。
安易な励ましのことばを書き連ねるのも失礼かと思いますが、がんばってください。

Posted by: 山口 浩 | December 18, 2005 at 10:45 AM

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