「政党」というしくみはそろそろ終わりに近づいているのかもしれない
よく「帯に短し襷に長し」というが、それは政治家についてもあてはまると思う。政治力はあるけど金にまつわるうわさが絶えないとか、人権擁護に熱心だけど抵抗勢力だとか。ここを直してくれれば応援したいのに、と思う人がけっこういる。
個人レベルだとどうも生々しいので、政治家ではなく政党のレベルでそういうことを考えてみた。
「帯に短し」問題は、政党にもあるように思う。たとえばある政党の主張について、経済政策については支持できるが防衛政策については支持できないとか、選挙制度についての主張はいいが地方自治への理解がないとか、まあいろいろあるのではないか。この問題はこの政党、あの問題はあの政党を支持したいのに、実際に選挙で選べるのは1つの政党だけ。なんでこういう組み合わせなんだよ、といいたくなることがある。いわば政策の「抱き合わせ販売」だ。
まあこういうのは、間接民主制には当然ついてまわる問題であるともいえる。自分の考えと100%同じ考えの人やら政党やらを探すのは難しいから、どうしたって「しかたなくましなほうを選ぶ」なんてことになる。これは、ひとつには直接民主制にまつわる技術的・コスト的制約のせいでもあるが、そればかりではないと思う。有権者が世の中のすべての問題に詳しい(つまりそれなりに適切な判断が下せる)わけではないから、誰か信頼できる人に任せることで判断を自分がしないですむ「よきにはからえ」機能だ。これはこれでなかなか便利なものだと思う。
で、よく考えてみると、間接民主制というやつは、議員レベルと政党レベルの2段階になっているのだな、と思う。ほとんどの重要法案で、政党は党としての意見を決めて議員をそれで拘束する。だから有権者は議員に判断を委ね、議員は政党に判断を委ねるという意味で2段階、というわけだ。比例代表制の場合は政党を選ぶことになってはいるわけだが、それでも実際には名簿の順番に沿って議員が選ばれていくだけのことで、それによって選ばれた議員がその後その政党を離れても議員の地位を失うことはないわけだから、やはり個人→政党の2段階はあるのだと思う。
政党というのはそういうものだ、ということになるのだろうが、ちょっと待て。政党というのはこういうかたちでなければならないのか。あるいは、そもそも政治という作業に政党というしくみが必要なのだろうか。
2段階で何か悪いのかという声もあろうが、よろしくないことは起きると思う。よくあるのは、議員個人の意見と政党の意見がちがうとき、議員に託された有権者個人の声が打ち消されてしまうというやつだ。選挙のときには絶対反対とか必ず阻止とかいって当選したのに、その後党の方針に沿って賛成に回ったりする例(もちろん逆も)は、与野党を問わずみられる。でもこれって、公約を破ったことにはならないのか?いろいろ弁明はあろうが、どうも釈然としない。
釈然としないのは、この問題を生み出している間接民主制の2段階構造がなんのために必要なのかがよくわからないからだ。議員内閣制だから、内閣総理大臣を決めるときとか予算を決めるときとかの際に政党が重要な役割を果たすというのはわかるが、それ以外の、たとえば何かの法案の審議なんかの場合は、必ずしも政党単位で競う必要はないように思うがどうだろう。そうすれば、少なくとも1段階構造になるから、隔靴掻痒感は多少減少する。抱き合わせ販売よりばらで買えるほうが自分の好みに近い選択ができるというわけだ。
もし個人より組織のほうが信用できるというなら、全部比例代表制にしてしまえばいい。その場合は、今みたいに当選後に党を変わるようなことは許されるべきではない。有権者は党に投票したのであって個人に投票したのではないからだ。それならそれで納得はできる。
現状のどっちつかずのやり方は、政党助成金の受け皿とか政治献金の分配とか、どうも政治家側の事情による要素のほうが強いような気がする。少なくとも、意思決定システムとして改善の余地があることはかなり確かだと思う。これらの問題が解決できるなら、現在の「政党」というしくみにこだわる必要は必ずしもないのではないだろうか。じゃあどんなしくみがいいのかについて、今ここで具体的なアイデアはないのだが。直接民主制のほうが優れているとは限らないわけだし。なんだかえらく消化不良だが、「ここがわからない」という趣旨なのでご勘弁を。
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Comments
逆に「議員」というものを無くしてしまうのはどうでしょうか?
選挙は全て比例代表制にして、得票率に比例した投票数を獲得します。議会では一定以上の得票率を得た政党の代表者が議論をして、採決では賛成、反対の立場を表明した各政党の得票数を合計し、多い方に決定します。代表者は政党がその都度適切な人を選ぶことにして、議員という身分は設けません。
首相や大臣についても政党間で調整して、最終的には多数を形成した政党連合が推薦、採決して決定します。
歳費は個人ではなく、政党に対して得票率に比例して配分します。
こうなると政党間の合従連衡が政治の主な要素になりますが、審議や採決に問題はなさそうなので、一案になるのではないでしょうか?
Posted by: Baatarism | December 18, 2005 01:07 PM
上の訂正。
こういう選挙だと「代表」を選ぶわけではないので、「比例代表制」という言葉は適切ではないですね。
Posted by: Baatarism | December 18, 2005 01:09 PM
Baatarismさん、コメントありがとうございます。
このあたり、いろいろアイデアが出てきそうですね。
議員をなくすことは、政党をなくすより制度的な障害が大きい(憲法改正が必要ですからね)でしょうが、ありうべき考え方だと思います。
とにかく、現状に対して私たちが感じている違和感というか、問題意識というか、そういったものを当事者の人たちにも感じてもらいたいですね。
Posted by: 山口 浩 | December 18, 2005 07:40 PM