女性の労働力参加と出生率の関係はけっこう複雑らしい
12月19日(月)のRIETI BBLセミナーは面白そう。
山口一男氏(RIETI客員研究員/シカゴ大学社会学部教授)
「女性の労働力参加と出生率の真の関係:OECD諸国の分析」
知ってる人は知ってるだろうが、RIETIとは独立行政法人経済産業研究所のことで、霞ヶ関の経済産業省別館最上階にある。ここでは頻繁にBBL(Brown Bag Lunch)セミナーをやっていて、面白いテーマがよく出てくるのでスケジュールが許せば参加することにしている。
12月19日のテーマは「女性の労働力参加と出生率の真の関係:OECD諸国の分析」。講師の山口一男氏はRIETI客員研究員でシカゴ大学社会学部教授。誤解する人はまさかいないと思うが、私とは何の関係もない。関心が高いせいもあろうが感情的な議論が目立つ分野だから、冷静な分析がまず必要、というわけだ。
講演の概要はこんな感じ、らしい。
OECD諸国内では女性の労働力参加率と出生率の関係が1980年代に負の相関関係(高い労働力参加率の国々は出生率が低い)から、正の相関関係(高い労働力参加率の国々は出生率も高い)に転じたとこは良く知られているが、これはこの2変数間の因果関係の変化を意味するのか、それとも他の要因によるものかは未だに明らかにされていません。
今回のBBLでは、OECD諸国内で女性の労働力参加率の出生率に与える独自の影響は平均的に見て依然として負の方向ですが、1980年代以降有業有配偶女性にとって仕事と家庭の役割の両立しやすい社会環境が整って(即ち「両立度」が高まって)きたことが、この負の影響を(1)女性と労働力参加とこの両立度との相互作用効果と(2)労働力参加の負の直接効果を相殺する両立度を通した正の間接効果、の2つのメカニズムによって弱めてきたことを実証し、それを明らかにします。 また、それではなぜ現在女性の労働力参加率と出生率の関係は見かけ上では正の関係になるのか、またこれらの事実がわが国の少子化対策に意味することは何か、もあわせて議論します。
ふむ。
女性の労働参加率が高い国々で出生率が日本より高い例をひいて「日本でも」と論ずる向きは多いが、話はそう単純ではない、ということなのだな。「2つのメカニズム」の説明はこれではちょっとわかりにくいから、ちゃんと聞かないと。
これだけ読むと、きっと「なんで『女性の問題』と決め付けるんだ?」みたいな反発があるんだろうな。男性の時間外労働のトレンドとか、社会一般の価値観とか、保育施設の整備状況とか、いろいろ考えられる諸変数の中で女性の労働力参加率が一番説明力が大きい、ということならわかるんだけど。あと、女性の労働力参加率が他のファクターに影響されてるってことはないだろうか。
話を聞く前にいろいろ勘繰るのも何なので、このへんにしておく。要するに、ある意見が社会を動かしていく力を持つためには、こういう分析が欠かせないということだ。ちがう考えを持つ人々も、それなりの根拠と論陣を備えていかないと、対抗していくことはできないだろう。
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