「Second Life」は「Game2.0」と呼んでもいいかもしれない
またぞろ「Second Life」の話。先日、CNET JapanにTim Oreilleyの「What is Web 2.0?」の訳が出ていた(前編と後編はこちら)。
それを読みながら思ったのだが、ひょっとすると「Second Life」は、「Game2.0」と呼んでもいい存在なのかもしれない。
最初にことわっておくが、私はウェブに関しては素人同然なので、以下は専門的知見ではない。見聞きしたものをもとに考えてみました、というもので、むしろ専門家の皆さんのコメントをいただいて直していければと思う。
最近はやりの「Web2.0」という表現だが、これという明確な定義はあまりないらしい。「次世代のウェブサービス」みたいないいかたもあるようなので、単純な私はその程度のイメージでいく。Web2.0企業のコア・コンピタンスは、次のようなものであるという。
1. Services, not packaged software, with cost-effective scalability
2. Control over unique, hard-to-recreate data sources that get richer as more people use them
3. Trusting users as co-developers
4. Harnessing collective intelligence
5. Leveraging the long tail through customer self-service
6. Software above the level of a single device
7. Lightweight user interfaces, development models, AND business models
これを全部となるとかなり難しいだろうが、文章の最後に「Remember, though, that excellence in one area may be more telling than some small steps in all seven.」とあるから、要するにAND条件よりOR条件に近いのかもしれない。
で、これを「Second Life」、あるいはその提供企業であるLinden Labにあてはめてみると、おそらく1、3、4、5、7は満たしているように思われる。
1は「プラットフォーム」としてのウェブを意識したものだろうが、Lindenは「Second Life」をプラットフォームと呼び、ゲームそのものをアプリケーションとして提供するというよりユーザーの活動の場を用意することに注力していることから、あてはまると思われる。
3はユーザーが創造したアイテムを受け入れ、それに対する権利を保証していることから明らかだ。「Second Life」においてユーザーが創造できるのは、アイテムの単なるデザインだけにとどまらず、たとえば自動車のようになんらかの機能をもったものも含まれる。自分でプログラムを組み、アイテムが持たせたい外観やら機能やらを自分で作りだすことができるのだ。おそらくこの点は、一般的なMMORPGなどにおいてゲーム会社がとるプロプライエタリ志向のアプローチからすれば、パラダイム転換といってもいい革新的な試みだと思う。
で、これらユーザーの作り出したアイテムの存在が、「Second Life」の競争力の源泉となっている。すなわち、ユーザーの集合知を利用して自らのサービスの質を高めているわけで、4にぴったり該当する。
これらの多様なアイテムの存在は、アイテム創造のプロセスを他のMMORPGのように中央でコントロールするのではなく多数のユーザーが個々に行うため、多様なニーズに応えることができる。つまり「Second Life」のやり方は、アイテム市場におけるロングテールをより重視したアプローチとみることができ、5があてはまる。
「Second Life」のシステム設計についてはほとんど何も知らないに等しいが、話を聞いたところでは、仕様変更が連続的に行われており、したがって「Second Life II」みたいなものは考えられていないらしい。ユーザーがアイテムを作る場合、それがきちんと機能するかどうかというのは重要な関心事のはずだが、実は仕様変更によってアイテムが使えなくなったりすることは日常茶飯事らしい。MMORPGで、アイテムが壊れず蓄積していくことが経済設計上問題となりうるという点が知られているが、「Second Life」の場合は、デザイン、機能面で陳腐化するほか、システム仕様変更によって使えなくなったりするアイテムの価値が下がっていくため、「物価水準」は比較的安定しているとのこと。常にサービスを更新し続けるというこの点は、7に相当するといえるのではないか。
というわけで、「Second Life」は「Game2.0」ではないかと思ったわけだ。Lindenはゲームと呼ばれるのをいやがるだろうが、ここはむしろ「ゲーム」なるものの概念が拡張されたとみたほうがいいのではないか、と私は考える。ゲームはかつて「子どものおもちゃ」だった。しかし一部のゲームは大人のテイストを満足させるものとなり、MMORPG内の社会形成などを通じてコミュニケーションツールとしても機能するようになっている。「Second Life」は、それらに加えて、さらにアイテムを作り出す創造的な活動、それらを取引する経済活動といった新しい可能性をもたらしている。ゲームがかつてのゲーム以上のものとなりつつあるさまを、私たちは目撃しているのかもしれない。
※2005/12/15追記
「Second Life」が取り上げられた最近の新聞記事等。
New York Times' Week in Review2005年12月4日
「The Gamer as Artiste」
Business 2.0(2005年11月28日)
「The Virtual Rockefeller」
Fortune Magazine(2005年11月28日号)
「INNOVATION: ONLINE GAMES - From Megs to Riches」
The Gadget Show Podcast(2005年11月22日)
「Interview with Cory Linden」
Wired Online(2005年11月18日)
「You're Only a Newbie Once」
Marketplace (Public Radio International) (2005年11月16日)
「Coming soon: Virtual debt」
Associated Press (2005年11月11日)
「Virtual Trump: Making money off imaginary land holdings」
BusinessWeek Online(2005年11月号)
「The Web Smart 50」
Information Week(2005年11月08日号)
「Online Virtual World Is Part Fantasy, Part Civics Experiment」
Associated Press(2005年11月8日)
「The Business of Life: Making a Virtual Living」
FOX News(2005年11月)
Video about Second Life
BBC News (2005年10月27日)
「Picturing online gaming's value」
BusinessWeek Online(2005年9月26日)
「Best of the New Web」
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Comments
面白い!今度会ったときにでも!
※2.0ついてるから面白いというのではないのは、山口さんには補足する必要はないと思いますが念のため。
Posted by: SW | December 16, 2005 09:25 AM
SWさん、コメントありがとうございます。
ここにも2.0が、というのは私には面白い発見でした。考えてみればオンラインゲームもウェブサービスなんですから、ありうべし、ではあったわけですが。
Posted by: 山口 浩 | December 16, 2005 12:17 PM