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January 24, 2006

雑誌目次をみる:「雑誌 文字」

一部に好評の「雑誌目次をみる」シリーズ。久々の今回は「雑誌 文字」。

念のため。この「雑誌目次をみる」シリーズは、ふだん目にすることが少ない雑誌をとりあげ、その「目次」をネタにしてあることないこと書く、というもの。内容は読んでいないというのが前提なので、紹介が実際の内容とちがうという批判は受け付けない。と高飛車に念押し。

実にシンプルな誌名だ。雑誌であることはほぼ一目瞭然なのだが、それでもきちんと「雑誌」とことわっているところがいい。ものごとすべからくこうあるべきだな。階段には「階段」、トイレットペーパーには「トイレットペーパー」とちゃんと書いておいてもらいたい。コンビニで売ってるお酒にだってちゃんと「お酒」と書いてあるではないか。…ともあれ、言語執着系としてはかなりそそられるたたずまい。今回はじめて見かけたのだが、いったいどんな雑誌なのか。

発行しているのは「文字文明研究所」。なんだかとても「妖しげ」な雰囲気が漂うが、京都精華大学教授にして書家でもある石川九楊所氏が所長を務める組織らしい。文字は文明・文化の根底であり、きわめて重要であるにもかかわらず、近年は西欧言語学と情報化の影響で、そのことが忘れ去られている、なんとかせねば、という趣旨で活動している組織である由。ふうん。

この石川教授、「縦に書け!/横書きが日本人を壊(こわ)している」なんていう著書もある。「文字文明研究所」サイトにある紹介文曰く:

古来、「天」から「地」へ向かう重力と格闘しつつ、縦に文字を書き、言葉を紡(つむ)ぐことによって日本人の精神は醸成されてきた。日本語を横書きにすることは、英語(アルファベット)を縦に綴(つづ)るのと同じ「愚」である。

なるほどそうかぁ。とはいえ、上記で引用したこの本の紹介文は横書きだったりするんですけど。しかし、ご主張を受けてか、「所長挨拶」はちゃんと縦書きになっている(下の画像)。ただしこんどは「21世紀」の「21」まで縦書きになっていたりするんですけど。「愚」を体現するまさに「捨て身」の批判、なのだろうか。

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文字文明研究所サイトより。

研究所の人員構成を見ると、副所長になんとアート・ディレクターの浅葉克己氏が入っている。数々の広告作品もさることながら、「トンパ文字」を日本に紹介したことでも知られる人だ。いかにも、という感じ。このほか「中央公論」元編集長の宮一穂氏、評論家の草森紳一氏、京都精華大学教授の坪内成晃氏などが名を連ねる。

で、本題の「雑誌 文字」なわけだが、最新号は第6号。サイトでは発行年月がわからないので月間か季刊か年刊かもわからないのだが、まあそういうことが問題になるタイプの雑誌でもなさそうだし、まあいいか。というわけで、第6号の目次は次の通り。

・第1講 中国革命史の栄光と矛盾
  ─ 毛沢東の「実践論」 と「矛盾論」 朱建栄
・第2講 ハルバースタム
  『ベスト・アンド・ブライテスト』 白石隆
・第3講 アメリカに対抗するフランス外交 田中正人

いきなり「中国革命」ときた。「文字」とどういう関係があるのだろう。毛沢東は達筆だったのだろうか。その次はハルバースタム、その後はフランス外交。あれ?「文字」の雑誌じゃないの?ハルバースタムは漢字とか書かないだろうし、フランス外交で漢字を使うわけもないし。うーん。これはいったい。と思ったら、この号は「中・米・仏、世界を動かす指導者達」がテーマだそうな。「各国のリーダー達はそれぞれの危機にあって、どうやって困難な決断をし、乗り越えてきたのか、各分野の専門家が詳しく、わかりやすく解き明かしています。」という趣旨らしい。ふぅんなるほど。で、それって「文字」とどんな関係があるの?

・第4講 文字と宗教 石川九楊
・連詩 「飛葉(五)」 吉増剛造
・第5講 文字と言語 ─ 西洋言語学の限界を超えて 石川九楊

おお会長さん大活躍。やっと「文字」っぽくなってきた。文字と宗教、ね。なるほどいかにもっぽい。お経の話とかなんだろうか。そういえばコーランの文字ってきれいだよなぁ。「西洋言語学」ってどんなのだろう。Wikipediaの「言語学」の項をみてみる。ここに書かれているのは基本的に西洋言語学なんだろうな。限界ってのはよくわからん。分析的にみちゃいかんっていう感じなのかもしれない。

・連載 マンガ的思想VI 夏目房之介
・書評 書の戯れ ─ 石川九楊『一日一書』を読む 池内 紀

夏目房之介だって!?「マンガ的思想」?実はこの連載、本誌創刊号から続いている由緒正しい連載なのだ。これも「文字」研究なのか?いやしかし忘れちゃいかん。この京都精華大学の芸術学部にはマンガ学科があるのだ。教授には竹宮恵子の名も。ストーリーマンガ専攻には「現代マンガ論」「比較マンガ論」なんて科目もある。ひょっとすると夏目房之介も非常勤で教えていたりするかも。マンガと文字の関係を研究したりもするんだろうか。いや実際、研究所の平成17年度研究テーマには「マンガ表現と日本語(文字)について解明する」なんてのがある。いったいどんな内容なのだ気になるではないか。「マンガ夜話」みたいな感じなのだろうか。

ついでに、バックナンバーから面白そうな記事のタイトルを拾ってみる。( )内は私のつっこみ。

創刊準備号
・第6講 漫画前史 石川九楊
・第7講 マンガと描線/文字とマンガ 夏目房之介
(「漫画」と「マンガ」はやっぱり使い分けているんだろうなぁ)

創刊準備号II
・第1講 私の「マルクス」 辻井喬
(堤さんだ!そういえばこの人は共産党員だったよなぁ。で、これは「文字」と何か関係が?)

第3号
・巻頭放談 イラク・北朝鮮と世界を語ろう 
 草森紳一/長谷川宏/石川九楊/宮 一穂(司会)
(いったい「文字」と何の関係が!?)

第4号
・第6講 解体新書 養老孟司
(おお養老先生も!文字も解体しちゃったりするのだろうか)

第5号
・第2講 夢における文字の狂気 新宮一成
・第3講 日本語書記史からみた「みそひと文字」 小松英雄
(「夢における文字の狂気」って、なんだかとっても危なそう。「みそひと文字」とは31文字のことらしい。)

いやしかし、なかなか侮りがたいぞ「雑誌 文字」。夏目房之介のあたりは読んでみたいなぁ。

ちなみにこの文字文化研究所、「学研会員」を募集中とのこと。目的に賛同し、入会費(年間5,000円/学生2,500円)を納めれば1年間の会員資格が得られる由。会員の特典は以下のとおり。

1.連続講座受講料を優待
2.銷夏講座受講料が無料
3.雑誌『文字』(年4冊/8,000円相当)を無料頒布
4.機関誌「一本杉通信」(月刊)を無料頒布
5.研究所主催行事の案内および優先参加
6.雑誌『文字』への寄稿(但し、審査があります)
7.規定により修了証ならびに記念品の授与

「記念品」というのが気になるな。会長さん直筆の書、だったりするんだろうか。入会ご希望の方は、サイトにて手続きをご確認いただければ。

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Comments

うううーー
山口さんったら私がいかにも食いつきそうなネタを書くので
食いつきました(笑)。
やばい、私はこれ、購読してしまいそうです。
マンガというのは文字がとても重要に感じます。
海外のコミックと日本の漫画を見ると尚更そう思います。
言語学も別に私ははっきり分かりませんが、
やっぱり表音文字の人が体系づくったものだから何かちょっと認識のところでずれがあるのかなあ、などと思っちゃったり。素人だからどんどん妄想が広がるのです。
なんといっても今はマンガ学会もありますし
http://www.kyoto-seika.ac.jp/hyogen/manga-gakkai.html
私の大学の卒論担当の先生はマンガの記号論とか研究しているみたいだし、
まんがってもはや研究対象になっているんですよね。

山口さんはちゃんと浅葉克己もおさえているし本当に幅が広いですね。
言葉を使う現代アート系なら学生時代はまりました。
おすすめはジョセフ・コスースとサイモン・パターソンです。
(勝手に書いてます。。。)

Posted by: hiroette | January 24, 2006 08:13 PM

hiroetteさん、コメントありがとうございます。
来ると思ってましたよ。いいですよね「雑誌 文字」。現代アートにもなるんですか。
マンガ学会もこの京都精華大学です。雑誌ということでいえば、「ユリイカ」なんか最近はマンガとアニメばっかりですし。

Posted by: 山口 浩 | January 25, 2006 01:30 AM

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