« ゲーム内資産への課税の是非について | Main | 2006年アカデミー賞ノミネート予測市場 2006/1/29 »

January 29, 2006

誰がやるかではなく何をやるかだと思う

マンション等の耐震偽装疑惑問題で、建築確認の民間委託が原因であるとの議論が多くみられる。すでに多くの議論がなされているから素人の私がいうべき場所でもないのだろうが、ここだけはどうしてもいいたい。

「民間」をばかにするな!

建築確認業務の民間開放を「行き過ぎた規制緩和」として問題視する考え方は、あちこちにみられるのでいちいち紹介しないがひとつだけ。国会会議録検索システムで「耐震 規制緩和」と入れて検索したら、民主党の佐藤雄平議員の発言がみつかったので抜粋して引用。

衆議院では、今度の耐震偽造について、正に真相究明ということで、参考人をそれぞれ招致しながらいい質疑をして、全容を見さしてもらっておりました。…私は、この一連のその安全の、安心のそれぞれの問題の中で、やっぱりこれには規制緩和、それから今のその構造改革、様々なやっぱり問題が含んでいるんじゃないのかなと。…国のやることと民間のやること、ある意味ではこれ私は取り違えているんじゃないかな。安心や安全、これ一番やっぱり大事なところなんです。…しかしながら、規制緩和、構造改革の中で、何か改革という美名の中で私はそういうふうな最大の問題が欠如しているんであろうと。

最初に確認しておきたいのだが、建築確認業務に関して不備があったのは民間検査機関だけではない(ニュース)。特定行政庁による確認業務でも不備がみつかっている。今回の耐震偽装のような深刻なケースはみつかっていないようだが、それは「どの程度真剣に調査したのか」による部分が大きいのではないかと思う。特定行政庁の建築確認業務が必ずしも万全ではないという「噂」は、「関係筋」からの情報も含め、あちこちで聞く。その意味で、まず話の前提がちがうんじゃないの?と指摘したうえで。

別にこの議員やその所属政党に文句があるわけではないが、とりあえず、民間企業が信用ならない、といわんばかりの一般化した言い方については、全国の民間企業とそこに働く人々を愚弄するもので、ちょっとがまんならない。

上記引用部分は、すべての業務についていったものではない。建築確認業務のような安心・安全にかかわる「重要」な業務は、利益に目がくらんだ民間に任せるいいかげんにすませてしまうから、高い公共性を備える政府がやるべきだ、ということだろう。つまり、チェック機能のような「重要」な仕事について民間は信用に値しないという考え方だ。しかし「重要」だから官にってのは、あんまりじゃないか。

官と民にそれぞれ役割があるというのは理解できる。当たり前だ。しかしそれは重要だから、ではない。政府がやるべき仕事だからだ。政府がやるべき仕事が何かについては、それ自体で大きな論点となりうるから、ここではふれないが、少なくとも、民間企業で、建築確認をはじめとして、「重要」と思われる業務にかかわるチェックなり監視なりをしているところは、たくさんある。それらの企業の多くは、自らの信用をかけて業務に取り組んでいるわけで、重要業務を任せるには民間は信用ならないとされたのでは浮かばれないだろうし、実際民間がうまくやっているところもたくさんある。中には、身分の保証された公務員よりずっと「真剣」だといいたい向きもあるかもしれない。それに、極論すれば、「重要性」という観点からは、建築確認業務よりも建築設計業務のほうがはるかに「重要」ではないか。

問題は、「安心や安全」に関する重要な業務を「誰が」やるべきかではなく、そのために「何を」すべきか、だと思う。現在の建築確認制度の中で構造設計に関するチェックがあまり詳細には行われていないらしいという話を聞いたことがあるが、問題はそこではないか。必要なのは技術(人材)とコスト。建築確認業務について、民間開放前の体制が充分だったと考える人は少ないと思う。もとに戻せばすむという話ではないのだ。どのくらいの技術やノウハウがあればしっかりした業務ができるのか。そのためにどのくらいのコストがかかるのか。日本国内に対応できる人材はどのくらいいるのか。いなければどう確保するのか。民間はそのためのコスト負担を甘受するのか。まっさきに問うべきはそうしたあたりだ。それを官がやるか民がやるかの議論は、その後で充分だ。

市民感覚からいえば、こういうのを「政争の具にする」という。別にこの議員や政党を批判するためにいっているのではない。今の与党も野党だったときには同じことをしたのだ。政治家という人々の「慣習」というか「習性」というか、そういうものだと思う。この職種の人たちは、民間企業やそこで働く人々に対して「利益第一主義」だとか何とかいって批判することがけっこうあるが、自分たちのほうは「選挙第一主義」というか「得票第一主義」というか、とにかく、人のことをいえた義理ではない。国民の安全と安心を第一に考えるなら、政権の責任論より先にやることがあるだろう。立法府にしかできないことは、立法府がやるしかないのだ。どうかお願いだから、国民の安全と安心のための議論をしていただきたい。

|

« ゲーム内資産への課税の是非について | Main | 2006年アカデミー賞ノミネート予測市場 2006/1/29 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 誰がやるかではなく何をやるかだと思う:

» 「政争の愚」 [Hardcoded]
もはや私以外の賢明な有権者の方は気付いておられると思うが、念のため。 規制緩和で政府の責任追及 - NHK ニュース 前原代表は「本来なら、官が責任を負うべきことを何でも官から民へと効率性を追求して民間やアメリカに任せ、耐震強度の偽装問題や、アメリカ産牛肉の輸入問題、それにライブドア社の株取り引きの問題が起きた。規制緩和はよいが、株の時間外取り引きや100分割を認め、ライブドア社に脱法行為を許したのは行政として適正だったのか」と述べ、こうした規制緩和の問題を国会で追及していく考えを示しました。...... [Read More]

Tracked on January 29, 2006 09:25 PM

« ゲーム内資産への課税の是非について | Main | 2006年アカデミー賞ノミネート予測市場 2006/1/29 »