「テレビとネットの近未来カンファレンス」というのに参加してみた
神田敏晶さん主催の「テレビとネットの近未来カンファレンス」に参加してみた。第3回だそうだ。テーマは「テレビとネットの融合」。トラックバック歓迎だそうなので、書いてみることにする。
イベント自体についてはそちらのサイトをご覧いただければ。「テレビとネットの融合」に関するさまざまな新しいサービスが紹介されていて、そのあたりにうとい私には面白かった。動画投稿サイト関係が多かったのはテーマのゆえだろう。テレビ番組のネット配信の話がほとんど出なかったのは「自明」ということか。ただテレビ側からネットへのアプローチの例が、「kizasi.jp」と提携したNHKの「つながるテレビ@ヒューマン」だけだったのはちょっと気になった。これだとある意味、「テレビ周りのネットビジネスご紹介」ふうといえなくもない。テレビ側は「出口」としてのネットは二次利用の1ウィンドウとしかとらえていないということなんだろうか。
あと、動画投稿サイトに集まる動画が面白いのはわかったが、それらのビジネスモデルのどこがどう面白いのかは素人にとってはやや消化不良のまま。わかる人はわかるんだろうが、そういう人はそもそも紹介するまでもなく知ってるわけだし。
いや、面白かったんだよ。別に批判してるわけじゃない。そこんとこひとつよろしく。
紹介されてた中で、前に書いたことがあるのは衆議院TVとOCW。どちらについても、今日のイベントではちょっとまちがって紹介されていたように思うので、補足がてらちょっと書いておく。
国会のインターネット審議中継は衆議院・参議院両方がある(なんで別々なんだとつっこみたいところ。無駄じゃん)。前にも書いたが、半端な地上波テレビよりインターネットの国会審議中継のほうがはるかに面白いので、最近はつけっぱなしにしていることが多い。おかげで去る1月30日の、衆議院予算委員会における民主党松野議員と中川農水大臣の質疑応答でアメリカ産牛肉の輸入再開問題に関する紛糾が起きたのをリアルタイムで見ることができたりする。2月1日も参議院予算委員会での医薬品の原材料をめぐる質疑応答で、川崎厚生労働大臣が民主党家西議員に問い詰められてしどろもどろになっていた。どうもこのところ民主党の勢いが目立つが、それはおいとくとして、こういう「生」の姿こそ私たちが見たいものだし、この媒体にふさわしいコンテンツといえる。
今日のイベントでは「寝ている議員の映像を集めて」とかいっていたが、実際の審議中継では一般のテレビのようにカメラを切り替えてしゃべっている人のみを映すようになっているし、議論が紛糾して怒鳴り合いになるとあっという間に遠景に切り替えて音量を絞ってしまったりする(参議院だとすぐに音声を止めてしまう)ので、期待されるようなハプニングはまず期待できない。憶測だが、寝ている議員を映さないように、なんてお達しはぜったい出てると思う。
この点はきわめて不満だ。せっかくネットTVで制約が少ないのだから、もっと「ナマ」の画像をどっさり出してもらいたい。カメラを複数設置して、すべて撮りっぱなしにすべきだ。神田さんたちのトークをふまえるなら、いっそ全議員の席の前にカメラをセットしてしまえばいい。自分の応援する(しない)議員の発言や行動を見ていられる「My衆議院TV」機能なんてのを導入すべきだな。これならイベントで言ってたみたいに居眠りしてる議員がすぐわかるし。神聖なる議場なんだから、隠さなきゃならない発言とか態度なんてないはず、だよね?各議員がどんなヤジを飛ばしてるかも、チェックしてみたら面白いかもしれない。できれば、個々の議員の発言にタグ付けしてコメントとかトラックバックとかつけられるようにしたらもっといいのに。当該議員が発言し始めたらアラートがくるしくみとかも。あるいは、議事の中継の横に掲示板画面を出してリアルタイムでつっこみを入れるなんてのも(これは「攻殻SAC」のまね)。
それからOCW。スタンフォードが最近はじめたiTunesのpodcastについて、イベントでは「これで授業が受けられる」とか「学位がとれるのか」とか言っていたが、それはない。もともとOCWは単位をとれる類のものではない。彼らは、学校の価値は教材そのものより教員による直接指導とかTAのサポートとか、そういったサービス総体の中にあるという信念の下に公開しているのだ。実際、教材だけみてもどう使ってよいのやら、というものが多い。だからOCWは、むしろ学生よりは他大学の教員にとって、一流大学での教材内容を知ることができるという意味で有益なのだと思う。スタンフォードのiTunesも、リストをみればわかるが、ふつうの科目の講義ではなく、講演の類だ。たしか成績をつけるための科目の講義は含まれない旨どこかに説明があったと思う。学生にとっても、自分のしたしょーもない質問が全世界に配信されたらと思うと質問なんかできなくなるし、教員にしたって、これからやる講義の内容をあらかじめ聞いてくる学生がいたらヤだろうしね。
とはいえ、これらのサービスが「!」付きで語るべき画期的なものであることには完全に同意。それにしてもこの世界、進むのが早いなぁ。ちょっとぼやぼやしてるとあっという間に取り残されちゃう。ああたいへん。
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Comments
やまぐちひろしさん、こんばんは、
ふと国会中継にCCをつけてもらって、二次利用可能にするとかなり面白いと思いました。
きっと、まじめな討論を集めた国会の実態があきらかになるような編集がいっぱい出てくると思います。ラップする国会議員とか...あ、いや、不謹慎でした。
例によってメールアドレスはダミーです。
Posted by: ひでき | February 02, 2006 06:08 PM
ひできさん、コメントありがとうございます。
いや本当にそうで、私などは議場をとびかうヤジもすべて個別に、誰が何を言ったかわかるようにしてもらいたいと思います。神聖なる議場、だそうですから、そこでまさか口汚く相手をののしるような言説などあろうはずがない。ならば、それをきちんと記録しておくのは当然、と思うのですが。
Posted by: 山口 浩 | February 03, 2006 02:52 AM