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February 05, 2006

「Second Life」がフェローを募集している

Terra Novaに、「Second Life」のLinden Labがフェローを募集しているとの告知が出ている。以前から、このプラットフォームを教育の場として使おうという動きがあったが、その一環らしい。いろいろな意味で注目。

具体的には、「Fellowship in the Visual and Performing Arts」という。金額は4,000ドル。「Second Life」のプラットフォームを使って芸術的な表現活動を行おうとする学部生、大学院生が対象。応募の締め切りは3月15日。1セメスターないし夏休みの間に作品を仕上げて「Second Life」内で公開することが条件。

「Second Life」を教育に生かす試みはこれがはじめてではない。そのへんの情報はここにまとまっている。会員向けなので一般からは見えないが。だいぶ前のWired Newsに、「Second Life」内で大学の授業をやるというニュースが出ていたが、それがこの「Second Life Education」に関する話だ。それに、今回の話は、ビジュアルアートのプラットフォームとしてのゲームの可能性を探る意味でも意味があるといえる。ビジュアルアートといえば、「Second Life」内の成人向け雑誌に関するニュースもあったな。このあたりまでは、シリアスゲームの一環としての意味。

ゲーム産業としては、商品開発において外部の力を生かすアプローチのあらわれといえる。なんと呼ぶかは別として、開発ツールを公開して、ユーザーの自由な創造性を発揮させることによってゲーム自体の魅力を高めていこうというもので、今ふうのアプローチだ。「Second Life」の場合は、デザインなど見てくれだけでなく、実際にゲーム内で「動く」芸術作品を作ることも可能だ。私は専門外なので知らないが、こういうのはゲーム運営上そう簡単にできるものではないらしい。

ゲーム内経済学的な視点でいえば、通貨の価値はそれで買えるものによって決まるわけで、このような活動によって、「Second Life」内により魅力的なアイテムが導入されることは、ゲーム内通貨であるLinden$と現実通貨に対する「為替レート」の下落を防ぐないし緩和させる効果が期待される。つまり、今回の試みは「政府」であるLinden Labによる一種の「産業振興政策」、「景気刺激策」ないし「為替政策」であるともいえる。これだけでは「焼け石に水」かもしれないが。

というわけで何かと話題の多い「Second Life」。今後も要注目、ということで。

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Comments

やまぐちひろしさん、こんにちは、

あれ、なんでしたっけ、たしか「ダイアスパー」とか、芸術は全てヴァーチャルになっている時代をあつかったSFがあったような気がします。

http://www5d.biglobe.ne.jp/~rosier/ange2001/nws-tosi.html

例によって、外部に対して閉じているか、開いているかがこういった芸術がネット空間上で成長していくかのひとつの指標になるような気がします。

Posted by: ひでき | February 05, 2006 11:00 AM

ひできさん、コメントありがとうございます。
芸術はすべからくなんらかのプラットフォームに載っています。絵画は紙なりキャンバスに、彫刻は金属や石膏の塊に、映画はフィルムに、いわゆるメディアアートはビデオテープなどに。ゲームは、そのリストに加わった新しい表現媒体であるだけ、なのではないでしょうか。おっしゃる通り、これがアートの新しい形態になるかどうかは、ゲームという表現形式が「ゲーム」という枠を超えていくかどうかによるように思います。

Posted by: 山口 浩 | February 05, 2006 11:21 AM

技術やプラットフォームはあくまで「道具」に過ぎないという主張をずっとしてきている私としては、しかし、こういう動きは大歓迎ですね。
「道具」の新しい使い方が生み出されるのはエキサイティングです。

Posted by: McDMaster(マナル店長) | February 07, 2006 12:35 PM

McDMasterさん、コメントありがとうございます。
メディアがコンテンツになり、コンテンツがメディアになり、といった具合で、なかなか面白い今日このごろです。

Posted by: 山口 浩 | February 08, 2006 01:16 AM

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