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March 02, 2006

衆議院TVのインターネット中継映像が1年で削除されてしまう件

3月1日の衆議院予算委員会第一分科会の審議をインターネット中継でながら見していて、驚愕すべき事実を知った。

衆議院TV」でインターネット中継されたストリーミング映像が、会期終了後1年間で削除されてしまう、というのだ。何だって!?というわけで、以下走り書き。

民主党の高山さとし議員の質問に対し、衆議院事務総長が答えたもの。曰く:

・会期終了後1年間で削除している。
・衆議院の正式な記録は議事録であり、映像はあくまで参考である。
・動画では、不規則発言に対する対応も充分にはできない。
・サーバの容量の問題もある。
・映像の取り扱いには議運で決まった方針に基づいて行っているので、改めて決めてくれれば対応する。

高山議員の質問内容によれば、衆議院ではいったんサーバ増設の予算申請をしながら、その後取り下げたらしい。つまり、保存期間を延長させまい、あるいは短縮しようという「誰か」の意向が働いたということだ。

「不規則発言」を後で修正するという点に関しては、正直言って削除したり修正したりする必要はないと思う。そもそも国民の代表として選挙で選ばれた代表が「神聖なる議場」において語ったことばだ。それが何であれ記録しておくべき重みのあることばだし、議場において記録すべきでないことばを語るような人は、そもそも議員としてふさわしくない。どうしてもというなら、速記係を減らしてビデオ編集者を雇い、民放でおなじみの「ピー」音でも入れておけばよい。速記係よりはるかに安い人件費でできるはずだし、民間委託したっていい。

サーバの増設・維持管理費用がどのくらいなのか詳しくは知らないが、衆議院の速記係を雇用し続けるための費用と充分比較検討に値する程度のコストであろうことは想像できる。そもそも、「正式な記録が議事録」であるのは、そのルールが決められた当時の技術的制約によるものだ。今後もそうでなければならない必要性は必ずしもない。どうしてもコストを節約したければ、どちらが記録方法としてより適切かを真剣に検討したらいいと思う。少なくともいえるのは、サーバには公務員住宅も退職金も年金もいらないということだ。…まあそれは極論。そこまでやらなくても、議事録と映像記録を並存させればいいだけだ。

一国民としては、保存年限を決めた議員運営委員会のメンバーや、サーバ増設予算を取り下げた経緯について知りたい。自分たちの代表である国会議員がどんな仕事をしているかを知るためには、議事録という方法はきわめて不充分なものだ。映像を見れば、議事録ではわからなかったその場の雰囲気や議論の流れ、当事者の態度などきわめて多くのことを知ることができる。どこから「保存しなくていい」なんて議論が出てくるのか。誰がそんなこと決めたんだ?映像を残されちゃ困るのか?そんなに後ろめたいことをやってるのか?

メモリのコストはどんどん下がっている。ぜひ映像に関しては議事録と同様、無期限の保存をお願いしたい。さらにいえば、映像利用を一般に開放するぐらいまでやってもらいたい。NPOでアーカイブ化することだって考えられるし。せっかく乗りかかった船なので、高山議員には今後この問題への注力を期待したい。というか、超党派でやってもらいたいところだ。

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Comments

『ネットはいつ「リアル」の仲間入りするのだろうか』エントリの時にも思いましたが、こういう足の速さも「リアル」の人が受け入れない理由のひとつじゃないかと。鶏と卵な話ではありますが。
ディスクに焼いて国会図書館に収蔵、ウェブでのリクエスト次第で、告知の上、一定期間サーバーで提供、ぐらいはあっていいし。放送各局(NHK?)がアーカイブしているかもしれませんが、それにしても「消去」することはないと思います。
やはり、サーバーやシステムとかの「箱モノ」が資産で、コンテンツはその場限りの徒花という考えなんでしょうか。

Posted by: stanaka_r | March 03, 2006 03:42 AM

stanaka_rさん、コメントありがとうございます。
ご指摘の通りですね。時代の変わり目というのはそういうものだろうと思います。時代の先端に立つインセンティブは、彼らにはありませんからね。その意味で、言うべき立場の人がきちんと言い続けていないといけないのでしょう。

Posted by: 山口 浩 | March 04, 2006 01:01 AM

http://bee.cocolog-nifty.com/sunday/2004/10/041013_tv.html
に真相がありますね。
前は過去のものがずっと見られましたから、サーバの容量は問題にはず。むしろ保存期限が一年に短縮されてしまって、空き放題(=税金の無駄遣い)なのではないでしょうか。

Posted by: nanashi | March 04, 2006 01:42 AM

nanashiさん、コメントありがとうございます。
なるほど。いやここで納得していてはいけません。衆議院事務総長は、議運が方針を変えれば従うといってます。つまり、公開を政治家に働きかけるべきだ、ということです。考えなくちゃ。

Posted by: 山口 浩 | March 04, 2006 11:36 PM

私も仕事の関係で昔の国会答弁の内容を調べていてある代議士さんのHPから張ってあるリンクをたどって唖然としました。いやぁ、これはひどいです。

Posted by: ひでき | February 04, 2007 05:32 PM

ひできさん、コメントありがとうございます。
もったいないですよね。全部後世に残したらいいのに、と本気で思います。

Posted by: 山口 浩 | February 05, 2007 01:29 AM

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Tracked on March 06, 2006 08:33 AM

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